第18話
「いい覚悟だ。その度胸に免じて、子供の命は助けてやる。大人しくついて来い!」
「きゃあああっ⁉︎」
奥さんの左脇から乱暴に左腕を突っ込んで、上腕と二の腕で奥さんの身体とおっぱいを力強く拘束した。
「ママぁー⁉︎」
「抵抗すれば二度と息子には会えないと思えよ!」
ムニッムニッ♡ 左腕には潰されたおっぱいの柔らかい感触が伝わってくる。
もしかすると、悪者ダークエルフになった方が美味しい思いが出来るかもしれない。
「退け! この女が息子の目の前で死んでもいいのか!」
「くそ……道を開けるぞ」
どうせ頑張っても、この異世界ではダークエルフのイメージは最低最悪だ。
人間も魔物も僕に敵意を向けて襲い掛かって来る。
無駄な努力で頑張っても、人間と友好関係は結べない。
魔物とはスキルで友達になれる。人間とは恐怖で友達になればいいだけだ。
「さあ、こっちに来い!」
「あうっ、うぅ、ぁぁっ!」
グイグイと奥さんを引っ張って行く。
行き先変更だ。行き止まりの港に逃げるのはやめて、村の西側の出入り口から逃げる事にした。
お優しい転生者の勇者様ならば、人質がいれば、手出しは出来ないはずだ。
「くぅっっ! やはりダークエルフは伝説通り、人を襲い、若い女を連れ去る魔物か……」
「じゃあ、このままだとロレンナは、あのダークエルフに……」
ポモナ村のおじさん達や青年達が、何やら暗い顔で人質の未来を想像して悲しんでいる。
ご想像以上のエロい事を人質の奥さんに出来るか自信はありませんが、ご期待に添えるように善処します。
友達のサーディンやアクアに手伝ってもらえば、奥さんの身体を押さえつける事は楽に出来るはずだ。
ヤバイ、ヤバイ、股間の一部が、もっこりはんしてしまっている。
スゥーハァー、スゥーハァー、落ち着かなくては……。
「おい、そこ! 動くんじゃない! おい、そこのお前もだ!」
剣先で近づこうとする愚かな村人を牽制しつつ、前方からやって来た、サリオスとその仲間五人を睨んだ。
六人が人質を無視して、一斉にかかって来たら二十秒以内に僕のHPは0になる。
そうなれば、奥さんの前に、地獄の鬼達から僕がズッコンバッコンされる事になってしまう。
いざという時は人質を捨ててもいいから、逃げる事を優先しないといけない。
「退け! この女の首が、胴体からお別れする事になるぞ!」
「それは出来ない。その女性を離して、私と一対一で正々堂々と勝負しろ。もしも私が負けた場合は、この村をお前の好きにすればいい」
僕の脅しにまったく怯まず、サリオスは道を開けようとしない。
それどころか、左腰の剣帯にぶら下がっている鞘から剣を力強く引き抜くと、剣道の試合のように剣先を斜めに倒して、真剣勝負を要求してきた。
「……」
馬鹿正直に真剣勝負を受ける必要はない。けれども、断れる雰囲気でもない。
ダークエルフに連れ去られた女性は死んだも同然なんだろう。
明らかに『逃すつもりはない』という雰囲気が、村人からもサリオスからもヒシヒシと伝わってくる。
多分、連れ去られた女性がダークエルフの子供を妊娠して、世界の脅威を増やすと思っているのかもしれない。
異世界ファンタジーの設定では、連れ去られた女性がゴブリンの子供を数ヶ月で出産していた。
けれども、エルフと人間の間には子供が産まれにくいという設定もある。
そこら辺は連れ去ってみないと分からないけど、真剣勝負は僕にとっても都合がいい。
「フッ……分かった。勝負を受けてやる。フッフフフ、その前に保険をかけさせてもらう。サーディン、出ろ!」
『ギョギョ!』
足元の影に声をかけると、錆びた剣を持った魚人のサーディンが飛び出してきた。
「きゃああぁぁぁ⁉︎ 魔物よ!」
「あのダークエルフ、魔物を召喚する事が出来るのかよ!」
魔物の出現によって、村人達の表情が一気に混乱と恐怖に塗り潰されていく。
まさかとは思うけど、サリオスが俺様を倒せると期待していたのなら、それは大間違いだ。
この勝負は最初から勝者が決まっている。
俺様が勝ち、お前達は地べたに這いつくばって、俺様に許しを乞うだけの存在だ。
やれやれ。どうやら今頃になって、とんでもない化け物に手を出していた事に、気づいてしまったようだ。
「この女が逃げたり、真剣勝負の途中で村人が俺様の邪魔をしたり、人質を助けようとしたら容赦なく、その女を殺せ」
『ギョギョギョーーー‼︎』
さて、勝利の時間だ。人質の奥さんをサーディンに預けると、俺様はゆっくりとサリオスに近づいていく。
真剣勝負? はぁ? 馬鹿馬鹿しい。
アクアの水魔法を足元から連続発射させれば、油断しているサリオスは問題なく倒せる。
そして、サリオスを倒せば目的達成だ。
その後に村人達が全員で襲い掛かってきたとしても、時すでに遅しだ。
サーディンと俺様の剣技で村人を薙ぎ払いつつ、アクアの連続水魔法で六十人ぐらいの村人は瞬殺できる。
まさに完璧だ! アッハハハハハハ、絶対勝利だ! 村から楽勝で逃げられる。
「戦う前に良い事を教えてやるよ。あの魔物は俺様のスキルで操っている。俺様が死んだら、きっと大暴れだろうな」
「何が言いたい?」
「別にぃ~……ただ俺様を間違って殺してしまったら、危ないなぁ~って、教えて上げただけさ。さあ、やろうか」
「……」
これで不用意に俺様を殺す事も出来なくなった。
こっちは一切手加減はしない。
周りの村人達から、「卑怯者」「屑野朗」「ぶっ殺してやる」とお褒めの言葉が飛んでくる。
脅して何が悪い? 一人のダークエルフを村人総出で取り囲んでおいて、正義面しやがって。
そっちが殺すつもりなんだから、こっちも殺すつもりで行くのは当然だ。
「ふっ。そうか、君が想像以上の屑野朗で助かったよ。行け! ハムザ、エイダン、クレイグ! ダークエルフを殺せ!」
「「「オラアアァァァァーーーッ‼︎」」」
サリオスが不敵な笑みを浮かべたと思ったら、いきなり仲間の名前を呼んで、僕に三人を突撃させてきた。
「なっ⁉︎ ひ、人質いるよ⁉︎」
「「「オラアアァァァァーーーッ‼︎」」」
どう考えても、人質の奥さんを完全に無視している。
けれども、それを非難している時間はない。
まずは人質を殺すか迷っているサーディンを急いで止めて、僕の援護をしてもらわないと困る。
人質の奥さんを殺すつもりはないし、殺すならば襲って来る人達だけだ。
『ギョギョ⁉︎ ギョ!』
「サーディン、人質はいい! 急いで加勢しろ! アクア、向かって来る相手に連続水魔法だ!」
『キュン⁉︎ ♪キュゥキュルルゥ♪ キュン‼︎』
集団戦は得意じゃないけど、三対一の戦いは魔物戦で慣れている。
影から青色の花を突き出したアクアが、剣を振り上げて向かって来る敵三人の一人に、丸太のような水の塊を発射させた。
「ぐわああっ⁉︎」
バシャーン‼︎ 水魔法が直撃した一人が三、四メートル後方に吹き飛ばされた。
けれども、すぐに立ち上がる。
アクアの魔法攻撃によるHPダメージは616だ。
サリオスの仲間のレベル10だとしても、HPは1000前後しかない。
一撃で倒す事が出来なくても、三撃あれば、防具があったとしても確実に倒せるはずだ。
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