第63話 稀子にプレゼント その2

 俺が鈴音さんに返信を送る前に、鈴音さんから更にメッセージが届く。


『比叡さんが選んだ時計は、私の中でも良いと感じます♪』

『しかし……稀子さんの場合は、もう少し、遊び心を入れた時計が良いと思います』


「遊び心!?」


 俺は思わず声を出してしまう。

 腕時計に遊び心なんて……アニメのキャラクターが入った、腕時計をプレゼントする訳には行かないし……


「鈴音さんの感じた事は分かります!」

「俺でも…、稀子には似合わないと感じました…。でも、遊び心の入った腕時計とは?」


 俺がそう返信すると、既読マークは付いたが鈴音さんからの返信は来ない。

 俺も『腕時計遊び心』でWeb検索してみるが……、男性物が中心で、稀子が付けたがる腕時計では無い様な気がする。


(いっそ……何処かのテーマパークキャラクターが入った、腕時計でもプレゼントするか!?)


 俺がそう考えていると、鈴音さんから返信が来た。


『比叡さん』

『私なりに稀子さんが好きそうな、腕時計を探してみました』

『これ何かどうですか?』


 鈴音さんから送られてきたメッセージの後に画像が表示される。

『カツオ』のSshockだが、白を基調にしたデザインに、緑系の水色で文字盤が形成されており、如何にも稀子が好きそうなデザインだった!


「これなら……稀子は喜びそう!」


「鈴音さん!」

「これなら良いですね!!」

「『カツオ』のSshockにしたいと思っています!」


『私的も良いと思いますが、お値段が1万円以上しますので、比叡さんが大変では有りませんか?』


「元々、最初の腕時計が2万円位する腕時計でしたので、それと比べれば安いです」


『私が見つけた、Webアドレスを書き込みます』

『最終的な判断は、比叡さんがお願いします』


 鈴音さんから『カツオ』Sshockの紹介先が、テキスト文で送られてくる。


(これなら、稀子は喜ぶはずだ!)


「鈴音さん! 相談に乗ってくれてありがとうございます!!」

「御陰で助かりました!!」


『いえ、いえ、比叡さんのお役に立てて幸いです』

『きっと、稀子さん大喜びしますよ♪』


『では、お休みなさい。比叡さん』

『また、明日zzz』


「鈴音さんもお休みなさい!」

「また、明日!」


 鈴音さんとのRailを終える。


(早速、注文して……クレジットカードは無いから代引きか…)

(プレゼント包装も有料だが出来るのか?)

(代引きだと手数料が掛かるが、稀子のプレゼントだから仕方無い)


 腕時計本体の料金、包装料、送料、代引き手数料と、時計自体の値段は安く抑えられたが、他の料金で結局、高く付いてしまった。


(大きな都市だと、直接買いに行けるのが魅力だよな)


 名美崎なみさき市まで赴けば、大抵買える品で有ったが、プレゼントだから秘密にしたい!

 実際に買いに行こうとしたら、絶対に稀子が『私も行きたい!!』と言い出すし、今の環境で秘密裏に買いに行くのも難しい……

 出来ない事は無いが稀子の性格だ。絶対に根掘り葉掘り聞いてくる!


(通販だから、後は荷物が到着するのを待つだけだ!)

(今の宅配便は時間指定も出来るし、便利な時代だ!)


 受取時間も指定して、ネットショッピングを終える。

 俺は稀子の喜ぶ姿を思い描きながら、その日は眠りに就いた……


 ☆


 無事に『カツオ』Ssockが届いたので、その日はワザと上着を着て、上着のポケットにプレゼントを隠して山本さんの家に行く。

 その日は少し、肌寒い日で有って、何も疑われずにプレゼントを持ち込める。

 誕生日プレゼントでは無いので、みんなの前では渡さずに、俺がアパートに戻る直前に稀子に渡すつもりだ。


 ……


 その日も晩ご飯と後片付けも終えて、稀子や鈴音さん。山本さん親子と少し談笑をしてから、アパートに戻る時……


「……稀子」

「ちょっと、良い?」


「んっ……比叡君から誘うとは珍しいね?」

「でも、もうすぐドラマが始まるから手短に!」


 まさかプレゼントが貰えるとは思ってないから、内緒話程度の気持ちで、稀子は付いてくる。

 人目の付きにくい廊下の場所で、稀子にプレゼントを渡す。


「稀子ちゃんにプレゼント!」


「えっ……?」


 稀子は大きな口を開けて驚く!?


「私……まだ、誕生日じゃ無いよ?」

「それに……私、比叡君に誕生日教えたっけ?」


 稀子は『比叡君呆けてる?』の表情をする。


「稀子とは親友に成って、大分時が経つからプレゼント!」


「そうなの!!」

「でっ、でも、急に貰う訳には行かないよ///」


(てっきり、素直に受け取るかと思ったが、意外に受け取らない!)

(珍しいな……。遠慮しているのか?)


 稀子も俺の経済状況を良く知っているので、無理難題は言って来ない。

 逆に言うと、稀子の子どもっぽい性格の御陰なのか、ファションやブランド物には興味をあまり示さないので、こちらも有る意味助かっている。逆にこれが裏目に出たか!?


「稀子ちゃん、腕時計持って無いでしょ!」

「あまり高価じゃ無いから貰って!!」


「知ってたんだ///」

「……比叡君がそこまで言うなら、ありがとう!」

「受け取るよ!!」


 稀子はようやく……恥ずかしそうにプレゼントを受け取る。


「ここで見ると……はしたない子に成るから、後で見るね///」


「うっ、うん……」


「じゃあ、ドラマの時間だから、バイバイ比叡君…」

「あぁ、お休み…。稀子」


 稀子はリビングに戻っていったが、足取りは何だか軽そうに見えた。

 言葉の割には、意外に喜んでいるのかも知れない……


 ……


 その後、稀子からお礼の電話が来て『私好みの時計。ありがとう~~。大好き、比叡君~~❤』と言ってくれた。

 内心……ドキドキしていたが、稀子に喜んで貰えて良かった……


 稀子は早速、明日からプレゼントした腕時計をして、学園に行くと言ってくれた。

 鈴音さんからもRailで『良かったですね★ 比叡さん!!』とお祝いのメッセージを貰えた。

 俺は稀子にプレゼントを贈って良かったと思いながら、少し興奮気味で、その日も眠りに就いた……

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