第39話 2人だけの会話と……

 俺はそれに付き合うために稀子に付いて行く。

 稀子はリビング向かいの部屋に入るので俺も入る。


 鈴音さん達は歓迎会の後片付けをしているため、その部屋には誰も居ない。

 部屋に入った稀子は『クルン』と俺に振り返る。


「比叡君。新しい人生の始まりだね!」

「私は比叡君のお手伝いが出来て嬉しいよ!!」

「私も勉強頑張って、福祉に有利な学校に進むから、比叡君も頑張るのだぞ!」


「稀子ちゃん……」

「俺も、今年の秋入学の保育士養成学校を目指して頑張るよ!」

「……後、新しい仕事も…」


「うん! その意気だよ比叡君!!」


 俺はそう言いながら、稀子にゆっくり近づく。


「稀子ちゃん」

「好きだよ…」


「私のこと好きなら本当に頑張ってね♪」


『チュッ!』


 稀子も俺に近づき、少し背伸びをしながら俺に唇にキスをする。

 稀子と久しぶりにするキスの味……同時にプリンの甘い匂いもした。

 やはりと言うか……今日も少し、ご飯の味がするキスだった。


「比叡君が頑張れば、頑張るほど、私は比叡君の事が好きなるから……ねっ!」


 稀子は悪戯っぽく笑う。

 俺はもう、衝動を抑えられなかった!


「稀子……少し、抱きしめても良い?」

「我慢出来ない……」


「……良いよ」


 俺は稀子からの了解を貰ってから稀子を抱きしめる。

 稀子から抱きつかれた事は有るが、俺から抱きしめるのは初めてだった。


「んっっ……」


 少し小柄な体型な稀子だからこそ、俺は優しく抱きしめる。

 それでも稀子は少し声を出す…。苦しいのだろうか…?


 小柄な稀子の所為で胸の感触が弱いため、稀子の胸付近だけは、俺の体を強く密着させて、稀子の胸の感触を確かめる……

 それだけで満足しなかった俺は、自分の体を上下に動かして、更に稀子の胸の感触を得て快楽を求めようとすると……


「……?」

「……比叡君。何で上下に動くの?」

「余り動かれると、下着がズレちゃう……?!」


 俺の行動が怪しいと感じたのだろう。稀子が俺の行動を制する様に言って来た。


(稀子の胸の感触も有る程度味わえたし、この辺でして置こう……)


 俺は上下運動を止めて、普通に抱きつく事にした。


(女の子の胸ってこんな感じなんだ……。張りが有って、弾力も有る)

(……でも、これだけでは分かりにくいな。本当はもっと触りたかった……)

(お互い服を着ているので感触が伝わりにくいが、裸同士だともっと気持ちいいのだよな……)


 本当は先に進みたくて仕方が無いが、向かいには山本さん達が居るので下手の事は出来ない……

 更に稀子の髪から良い匂いがして、俺のは大きな興奮を感じていた。

 俺は稀子を抱きしめながらキスをすると……


「んっ、はぁ…」


 稀子も感じているのだろうか?

 少し、息が荒くなっていて、表情も苦しそうな表情だ。


「稀子……」


「比叡君……、これ以上はダメ…」


「でっ、でも……」


「お願い……」


 俺はその言葉で、稀子を抱きしめていた腕を解くと稀子はゆっくりと離れた。


「……比叡君。やっぱり男なんだね…」

「これが比叡君のお家なら、比叡君は私の言う事聞いてくれなかったかもね…」


 稀子は何故か、少し寂しそうな表情で言う。


「……ごめん。稀子」

「自分自身でも、どうかしていた……」


「私は今まで、男の経験が無いから分からないけど、やっぱり恐いね…」


 稀子のさっき言った言葉で、稀子はまだ未経験だと俺は感じた。

 経験が無い子だから……怖いのは当然だ。


 えっ、俺の経験は……?

 その辺は割愛させてくれ///


「比叡君……。私も男女のこと、勉強してみるよ!」

「鈴ちゃんなら、色々知っているはずだし!」

「だから、今日はこれでお終い!!」


 俺がさっき……あんな行為をしたのに、稀子は怒らずに笑顔で許してくれる。

 こんな優しい子が、俺の本当の彼女に成ってくれるのだろうか?


「俺も……もっと、調べてみるよ…。稀子が怖がらずに行為が出来る事を…」


「比叡君!?」

「そっちより、先にやる事が有るでしょ///」

「私の関係も大事だけど、まずは比叡君自身の将来作りをして!!」


 稀子は驚きながら、頬を染めながら言う。


「俺、頑張るよ!」

「色々な意味で!!」


「うん…夢を叶えようね!」


「叶えるよ、稀子…」


 ……


「じゃあ、私も後片付け手伝わないと駄目だから……ここでバイバイするね!」

「比叡君の荷ほどきは明日、私と鈴ちゃんが手伝いに行くから安心してね♪」

「一応、10時位にそっちに行くからよろしくね!!」


 稀子は笑顔でそう言って、手を振りながら部屋から出てリビングに入っていた。

 俺にとって、今日から始まった新しい生活。


(さっきは言ったが、俺は本当に生まれ変われるのだろうか?)

(稀子を本当の恋人に出来るのだろうか?)

(そして、すべての夢を叶える事は出来るのか!?)


 唇に残る稀子の温もりを感じながら、俺は自問自答した。


「やっぱり、叶えるしか無いよね……そうしなければ、この町に来た意味が無くなる!」


 俺はそう呟き、将来の事を思い浮かべながらアパートに戻った。

 全ての想いと夢を叶えるために!!

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