第16話 勇者、接待する
マリーと勇者パーティの面々が再会してから5日後。
勇者パーティの賢者と聖女は魔王の城に招かれていた。
ただ、マリーは街で倒れた前後の事を覚えてはいなかった。そのため魔王の知人である人間が2人来るとしか聞いていない。
「どうぞお召し上がりくださいませ」
応接室で菓子が盛られた皿を並べ終えたマリーがぺこりと頭を下げる。
魔王はマリーの方を見て尋ねた。
「この菓子の中でマリーが作ったものはあるかの?」
「はい、クッキーは私が作りました。他はまだお客様に出すお許しが出てないんです」
「ははは、なかなか厳しい師匠のようだな」
先に魔王がクッキーを口にする。
「うむ、美味いな。お客人らもマリーの手作りの菓子を堪能するがよい」
聖女と賢者もクッキーに手を伸ばした。
「あら、美味しいわね」
さくさくした歯ごたえで程よい甘みのクッキーに聖女が思わず感想を声に出す。
「ありがとうございます!」
マリーはニッコリ笑った。
「ああ、そうだ。マリー、この間見せてくれたスケッチブックを持ってきてくれるかの?」
「はい」
いったん執務室から出て行ったマリーは、すぐにスケッチブックを手に戻ってきた。
魔王はポンポンと自分が座る隣を叩き、マリーに座るよう促す。察したマリーは魔王の隣にちょこんと座った。
「マリーは絵も上手くてな、庭の花木の管理台帳にも絵を描き入れてくれて、庭師達からもわかりやすくなったと大変評判がよい」
魔王がスケッチブックを賢者に手渡す。開いたスケッチブックを聖女も覗き込む。
「これはすごい」
「本当ね、綺麗だわ」
褒められたマリーが照れている。
「仕事も教えたことはすぐに覚えて間違えることがなく、作業も丁寧でいろんな部署から評判もよく、皆に可愛がられておる」
そう言いながらマリーの頭をなでる魔王。
「同じ年頃の下働きの子供と一緒に城の使用人達がいろいろと学んでおってな、菓子作りだけでなく読み書きや計算も上達した。最近では裁縫や刺繍も本格的に始めたのだったな?」
「はい」
マリーはエプロンのポケットから自分で刺繍したハンカチを取り出して見せる。
庭に咲いていた花をモチーフにしている。
「素敵な刺繍ね」
聖女に褒められたマリーはニッコリ笑った。
「さて、マリー。女の客人にこの城の庭を案内してやってくれるかの。我は男の客人と少々話があるのでな」
「はい、かしこまりました」
マリーは立ち上がり、聖女とともに応接室を後にした。
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