第8話

代々木みどり公園は幸子の専門学校にほど近い所で、よく利用させてもらっていた。「挑戦だったんじゃないかな」鷹志は云った。万引を目撃して鷹志と幸子に話した一週間程前、月曜日のことである。「挑戦?」「そりゃあ、見せしめのための万引という程はあるとしても、実は目的は違うことにあった。それは、受験に対するアンチテーゼだったんじゃないか」コーヒを手にしたが空けることはしなかった。ただ缶をくゆらせながら続ける。「確信犯だと云いってもいいと思う。本来小説は一本読み切って改めてテーマを語るものであり、文節では何ら語るものではないと俺は思っている。仕方ないと割り切っている受験生は多数だろう。でも、文学を好きすぎて、尚且いじめという高校生の内的要因が重なり、小説を一冊盗まないとしたら、果たして? 俺はそこが要因だと思っている」それは独白でもあった。それを聞いて幸子が云った。「もう腹はきまっているんでしょう?」と。

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