カイリの爽やかな朝&お着替え?

「ん〜……ん?」


何だか、柔らかくて暖かい。もしかして、先に眠ったルルが側に来てくれてるのかもぉ……しれないかなぁ〜……。


ルルの温もりを感じる為に、背中の方に手を回して背中を撫でてあげたが、ここで違和感を感じる。


……あれ? ルルの身体がスベスベしている様な気がするぅ。それに、これは狼の毛というよりも肌だよなぁ?


「ウニャァ〜……擽ったいニャァ〜」


ウニャァ〜? しかも、喋った! 一体どういうことなんだ?


目を開けて見てみると、人の肌が視界一杯に広がっていた!


「え? ……ファッ!?」


慌てて起きると、俺を抱き締めていた半裸の女性も身体を起こした。


「ン〜〜〜〜〜〜…………よく寝た。おはよう、カイリちゃん」


「あ、はい……おはようございます」


じゃなくてっ‼︎ よく寝たって何? それに誰この人はっ⁉︎


戸惑っている中、その女性は抱き付いてベッドに押し倒して来た。


「時間もあるから、もう一眠りしよぉ〜っと」


もう一眠りって、ちょっと! 俺も巻き込まないでくれよぉ‼︎


「ちょっ、退いて下さい! てか何処を触ってるんですかぁ!」


「カイリちゃん、小っちゃいね。でもハリがあるから、これはこれでぇ〜……」


「小っちゃくて悪かったなぁっ⁉︎ てか自己紹介もしてないのに、寝ないでくれよぉっ‼︎」


うおおおおおおっ⁉︎ 引き剥がそうとしているんだけど、ステータスの差のせいか全く離れる様子がねぇ!


しかも彼女は俺の様子を楽しんでいるのか、耳をピクピク動かしたり、尻尾をゆらゆら動かしてる。そんな中、ルルが起きてこっちを見つめて来た。


「……キャンッ!」


「ん。ああ……おはよう。ルル」


挨拶を聞いたルルは、そのまま俺の顔の側までやって来てペロペロと舐め始める。


「ワプッ⁉︎ 俺を助けるよりも、この状況に便乗するんかぁ!」


「キャンッ⁉︎」


……え? 何を楽しそうに混って二度寝しようとしているんだ? 早う助けいっ‼︎


そんな事を思っていたら、出入口のドアからガチャリと言った音が聴こえて来た。


「おはようございます。カイリ様、ルル様……それとマナ」


「お、おはようございます」


「おはよう、メイド長」


この人、マナって名前なんだ。てか、マナさんの名前呼ぶ時にドスが効いていた様な気がするのは、俺の気のせいか?


「マナ、淫らな格好していないでメイド服に着替えて来なさい」


「ええ〜……私昨日の事で疲れているから、もう少し寝たいなぁ〜……」


「何を仰っているのですか。庭の手入れはすぐに終わったのでしょ。なら、疲れてはいませんよね?」


「後処理の方に時間が掛かったの。ゴミを何処に捨てたらいいのかぁ〜。とかさぁ〜」


庭の手入れ? 確かに、庭の手入れは大変そうだけど、ゴミの処理とかはそんなに苦じゃないと思うぞ。だって捨てるのは枝と葉っぱぐらいだと思うし。


などと思っていたら、サシャさんの顔が怖くなったので、身体が震え上がって思考が止まってしまった。


「キュゥ〜ン……」


どうやらルルもサシャさんの顔に恐怖を感じたらしく、ベッドの向こう側へと隠れてしまった。


ホントに俺のことを助ける気がないねぇ、キミは!


「……そうですか。マナ、アナタは今日一日眠っても構いません」


「ホントッ⁉︎ やったぁ‼︎」


「ですが、カイリ様は起きるそうで、お着替えをしなくてはなりません。なので自室へ行って下さい」


「カイリのお着替え! 私も手伝うっ‼︎」


何ですか、その笑顔は? もしかして、俺に何かやろうとしてないよな?


「ダメです。その格好でカイリ様のお召し物を、お取り替えさせる訳にはいきません」


まぁ確かに。マナさんに俺の服を着替えさせるのと何を……って、ちょっと待って!


「服を着替えさせるって、俺の服をですか⁉︎」


「はい。その通りですが。何か問題でも?」


私、変なことを言ってますか? って顔で見つめんなよ! おかしいことだらけなんだからさぁっ‼︎


「服を持って来てくれれば、俺の方でやりますから!」


「もう持って来ておりますよ」


「……へ?」


よく見ると、サシャさんの後ろに居たメイド達が、何種類かの服を持っていた。


「それと、服と靴と下着のサイズはカイリ様に合わせえているので、安心して下さい。」


服と靴と下着のサイズって……オイオイオイオイッ⁉︎


「何でサイズが合ったのを用意出来るの?」


「カイリ様が眠っておられる間に、サイズを測らせて頂きました」


「服自体は商会で取り扱ってるものだから、そこからカイリに合いそうなものを選んで持って来たんだと思う」


ああ〜なるほどぉ〜。俺が眠っている間にそんなことをしてたんですかぁ〜……へぇ〜…………。


「と言う訳で、時間も勿体ないので、お着替えを致しましょう」


サシャさんが指をパチンッ⁉︎ と鳴らした瞬間、後ろにいたメイド達が俺を取り囲んだ。


「えっ⁉︎ ちょっとぉ‼︎」


メイド達の目が怪しく輝いて怖いんですけどぉ! しかも、半裸姿のマナさんにホールドされているから、逃げようにも逃げられないっ‼︎


「さぁ皆さん、カイリ様のお着替えをしてあげて下さい。無論ご主人様達が食堂で待っているので、手短に選んで下さい」


「「「「「畏まりました」」」」」


「ちょっ、まっ‼︎ ギァアアアアアアアアアアアアッ!⁉︎」


メイド達に襲われような形で服を着替えることになった。ルルはと言うと、俺がプチファッションショーをしている間、サシャさんの部下に抱き上げられて撫でられていた……裏切り者めぇ‼︎


「これ……いいかも」


15着ほど着させられて、俺が気に入った服は白がメインカラーの魔道士みたいな感じだけれども、所々軽戦士っぽさがある半袖の服で何故か下がミニスカートのもの。それと皮のブーツ。


「魔道剣士の服ですか」


「魔道剣士? 何ですか、その職業は?」


「魔道剣士は、自身の武器や防具に属性付与を施して戦うのが基本的な戦術で、普通の属性付与よりも強い属性付与能力を兼ねそろえています。その代わり、魔法による遠距離攻撃が出来ないのが難点になります」


完全近距離特化の戦士ってことか。


「服も決まった事だから、ご主人様の元へ行こう!」


「そうですね。と言いたいところですが。マナ、アナタは服を着替えて来なさい」


「わ、分かった! 分かったから、そんな目をしないでよぉ!」


「じゃあ……早く着替えて来て下さいね」


「うん!」


うん! って、それはメイドが言う返事じゃないよな。


俺がそう思っている中、マナさんは逃げる様にして部屋を出て行ってしまった。


「……さて、我々も食堂へ向かいましょう」


「え、あ……はい」


何か言いたげな顔だけど、気にしないでおこう。それとルル、サシャさんの腕の中で助けて欲しそうな顔をしているけど、俺は助けないからね。


「キュゥ〜ン」


そんな鳴き方したってダメ! え? 何でかって? それはルルが先に、俺のことを見捨てたからに決まってるじゃないか!


その後も、「キュゥ〜ン……キュゥ〜ン……」と鳴くルルサシャさんの腕の中で鳴くルルと共に、食堂へと向かった。


「おお、ようやく来たか」


「あらぁ〜! とても素敵な姿になったじゃないの!」


「あ、はい。この服、本当に貰っても大丈夫なんですか?」


今更、着たんだから金を払え! とか言って詐欺まがいなことをしないよな?


「安心してちょうだい。これもお礼の一つなんだから」


「そうさ。ミレイの言う通り、キミの為に用意した服なのだから、遠慮なく着てくれ」


「はぁ……ありがとうございます」


俺の言葉にバルグさんは喜んだ顔で頷いた。


「ところで、このポーションについて聞きたいことがあるんだが……食事をしながら話そうじゃないか」


そう言った後、テーブルの上に昨日の夜に作ったポーションを置いた。


「あ、はい」


何だろう……嫌な予感がする。


そう思いつつも、席に座る俺であった。

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