客がきたみなみ

喫茶店のマスターは思い悩んでいた。豚客を見てどうしたんだぶひっと声を掛けた。

「いえ、俺が豚人間であることがとても嬉しいなって日々の幸せをかみしめているんです」

「そうか。だからコーヒーを注文したのか」

 マスターには店に入った瞬間に言った「コーヒー」の言葉が届いていたようだ。蚊の鳴くような、ウィスパーヴォイスで注文していたことが。

「いや、聞こえなかったよ」

 マスターは言った。君の心の声を読んだんだ。

「ここはマジック喫茶でもあるんですか」

「いや、超能力豚喫茶さ」

「なるほど」

 客はそう言い、それ以上追及して来なかった。どれが本当でどれが真実か。豚マスターは本当に超能力者なのか。こうご期待である。誰も期待していないだろうけれども。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る