第3話 彼らどちらが嘘つきなのか~二つ目の相談~⑤

 今日の分の仕事が終わり、生徒会室は俺と秋城の二人だけになった。


「秋城、双田望は季節高校の生徒会に入っているそうだ」

「それがどうかしたかい? 一年生がこの時期に生徒会に入っているのはうちの学校じゃイレギュラーだが、他の学校ではおかしくないだろう?」


「お前、この前何かの打ち合わせで季節高校の生徒会に顔を出しただろ。お前ほど記憶力が良い奴が他校とは言えど、密接な関係にある生徒会のメンバーを覚えていないはずがない。


 それに最初にこの相談を受けた時、お前は相談内容を全て聞いていた。優秀なお前ならその時点で、双田が双子である可能性を思いつき、次の日にはこの学校に通っている双田夢の顔を確認すれば、今回の真相に辿り着けたはずだ。秋城、なぜ黙っていた?」


「おいおい、あまり買いかぶってもらっちゃ困るよ。季節高校の生徒会の人と、相談に出てきた人の苗字が一緒でも、双子だなんて思いつきもしなかったよ」

 

 俺はリュックを背負いながら、秋城を真っ直ぐに見つめる。そして秋城はあきらめたように両手を挙げる。


「ああ、分かったよ。そうだ、君の言う通り、彼女たちは双子ではないかと思い、次の日に双田夢君の顔を見て確信したよ。まさか、本当にそうだとは思わなかったが」


「なんで、俺に言わなかったんだ?」

「それは君を試すためさ。君が生徒会の一員として、目安箱委員長として、どれくらい人と向き合ってくれるか、どれほど本気になってくれるか知りたかったんだ。君は期待以上の仕事をしてくれたよ」


「そうか。で、本当の目的は?」

「そんなものないよ。本当に君が目安箱委員長としての才があるかどうか知りたかっただけで、君はそれを証明した」


「なるほどな。まだ言うつもりはないか。まあいい、いつかお前のそのヘラヘラした笑いを引っぺがしてやるよ」

 

 俺は生徒会室を出て、家に帰った。




 一人になった生徒会室で秋城は呟いた。


「誠、君は嘘なく人と向き合える。そんな君なら、いつか僕の真実も暴いてくれるかな」

 不安と期待の両方を抱えながら、秋城は生徒会室の戸締りをして、帰路に着いた。

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