第3話 彼らどちらが嘘つきなのか~二つ目の相談~②
その日の放課後、月見は言った通り二人を連れてきた。月見と俺を合わせた四人で生徒会室のソファに座って話を聞く。
「誠先輩、こいつが
「分かったよ。まあ、こいつが嘘つきって分かるならありがたい」
矢作がそう答え、事情を説明し始める。
「俺と的場が好きになった子は、一年五組の
まあ、友達だし、フェアに勝負しようぜって言って、的場と、双田の好きなところを話し合ってたんですよ。で、俺は真面目に勉強してて、大人しそうなところが好きって言ったんですけど、的場は、運動神経が良くて、活発なところが好きって言ったんですよ。でも五組の奴に聞いたら双田は体育は苦手で、全然活発ってわけじゃないって教えてくれたんですよ。
だから的場はなぜか知らないけど、嘘ついて全然双田のこと知らないのに、双田を好きって言ってるんですよ」
「なんで的場は双田が、運動が得意で活発な奴って思ったんだ?」
「俺がよく行くバッティングセンターに双田もよく来てるんですよ。俺が双田を好きになったのもそこで見かけた時からです。女子なのに速い球をバンバン打っててかっこいいなって思ってたら、学校で見かけて、そしたらそいつが双田って分かったんです」
「というか、お前ら双田と話したことあるのか? 本人と接してるんだったらどっちが本当のことを言ってるかぐらいすぐ分かるだろ」
「いえ、双田とは友達とかそういうのじゃなくて、学校の顔見知り程度と言うか、あまり話しかけたことはないというか」
「全然接したことないのに好きってことね。まあ、それはいいとして、じゃあ矢作はなんで話したことがない双田を好きになったんだ?」
「俺が放課後によく行く図書館で双田もよく勉強しているんですよ」
あれ? さっきも的場が似たようなことを言っていたな。
「そこで一生懸命勉強してる姿が可愛くて好きになったんです。話したことはなくてもこの気持ちは嘘じゃないです!」
「でも、それなら別に矢作も的場も両方正しいってことじゃないのか? 図書館で勉強している双田、バッティングセンターで運動している双田、別にどっちも同じ双田夢という人物じゃないのか? 体育が苦手ってていうのも、野球だけは得意って考えれば何もおかしくはないし、誰も見ていない所で運動するときだけ活発になるっていうのも、あり得る話だろ?」
「いえ、俺もそう思ってはいたんですが、矢作が双田を図書館で見たという日と、俺がバッティングセンターで双田を見た日が一緒の時があったんです」
「別に図書館で勉強してから、バッティングセンターに行ったり、バッティングセンターで汗を流した後で図書館で勉強することもできるだろ?」
「いや、矢作の行く図書館と俺の行くバッティングセンターは学校からそれぞれ正反対の位置にあって、遠いんで、それを同じ日にはしごするっていうのは考えられないんです。それに、俺が双田を見た時間と、矢作が双田を見た時間はほとんど同じで、物理的に双田を俺ら二人ともが見るなんて不可能なんですよ」
取り敢えず今日のところは何もできることはないので、二人には帰ってもらった。
「今回も面白そうなことになってるようだね。一種のホラーみたいな話だ」
秋城がソファに座っている俺に話しかけている。自分の仕事をしながら、ちゃっかり話を聞いていたのか。
「ああ、そうだな。普通に考えればどっちかが嘘をついているってことになるが、その理由が全く分からない。そして俺はどうもあの二人が嘘をついているようには思えないな」
「そうなれば君は双田さんがなぜ同時に二か所にいられたのかということを解明しなくてはいけないね。片方は幽霊だったりして」
「ま、政宗さん! お、女の子を幽霊呼ばわりなんてしたらダメですよ」
春雨が秋城の発言を軽くとがめる。
「そうだね、失礼。まあ、誠がどちらが嘘つきなのか、またはそうではないのか真実を明かしてくれるだろう」
「そうだな、だったら俺は明日明後日生徒会を休むぞ。矢作と的場が言っていた図書館とバッティングセンターに行ってみる」
「ああ、誠の分の仕事は大地が代わりにやっておくから、気にせず君は君のやりたいようにしてくれて構わないよ」
「ええー! 俺が全部代わりにやるんですか⁉ まあ、俺が誠先輩に頼んだことだし仕方ないか。誠先輩、よろしくお願いします! 何かあったら俺も手伝いますんで!」
「ああ、その時は頼むよ」
俺は月見に返事をしながら今日の分の仕事に取り掛かった。
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