第85話 アプリルさんの冒険

「ふうぅ……お疲れさまでしたっ クリスくん♪」

「はふぅ おつかれさまですー」


 朝ごはんの前……

 ぼくとアプリルさんは、日課の軽い鍛錬を済ませたところだった。

 レイナちゃんも途中までは参加してるけど……

 ジョギングはパスしてるから、先に上がっちゃってるんだ~


「ええと、じゃあアプリルさん? シャワー、お先にどうぞ」

「あ、ありがとうございます……でも」

「はい?」

「クリスくんをお待たせするのもなんですし……一緒に入りませんか?」

「だ、ダメですよぉ!? もうお互い、元にもどってるんですし」

「ですがそのぉ、お互いに……全部見ちゃってるじゃないですか(ぽっ」

「うぅ それは~そうですけど」

「それにクリスくん……私の身体で【レッスン】してたんですよね?」

「は、はいぃぃ」

「あっ そんな気にしないで下さいっ♪ 私もそのぉ……」

「クリスくんの身体で……しちゃってましたから♡(かぁぁぁぁ」

「で、ですよね」


 うぅ……お互いのカラダに【馴染む】ためとはいえ……

 ボクとアプリルさんは、カラダが入れ替わった状態で、

 アイナママたちと【レッスン】をしてたんだ。


(お、お互いに恥ずかしいから、そのことは話題にしなかったのに……なんで?)


 なんてぼくがドギマギしてると~


「そ、そのぉ……改めてこう言うのもヘンですけど……」

「あの【レッスン】のおかげで、男の子のことがよくわかったっていうか……」

「そ、そうなんです?」

「はい♡ そのぉ……自分の意志とは関係なく【おっき】しちゃったり♡」

「おぅふ」

「そうしたら【スッキリ】するまでは……」

「もう頭の中が【そういうこと】でいっぱいになっちゃうとか♡」

「あうあうああう」

「おかげで私、だいぶ男の人のことが理解できた気がして……」

「だから怖いのも、だいぶ平気になってきたんですっ」

「そ、そうなんです?」

「はいっ これもみんな……クリスくんのおかげです♪」

「いや、そんな~」


 でも、なんとなくわかる気がする……

 【怖いもの】って、【よくわからないもの】でもあるんだよねぇ

 そして怖いから更に距離をとっちゃって、もっとわからなくなる。

 そういう意味ではアプリルさん、いい勉強?になったのかなぁ


「く、クリスくんはどうでした? そのぉ……私の身体」

「そのぉ……女の子のカラダって、すごいなぁ……って」

「すごい? どんな風にですか?」

「そ、それは~」


 うぅっ アイナママやルシアママとの【レッスン】で……

 何度も何度も【びくびくっ♡】ってさせられて、スゴかったぁ♡

 なんていえないよぉ!?


「ええと……そのぉ あっ 魔力?」

「魔力がすごいけど、防御力はないから?」

「ビキニアーマーができるまで、ほんとたいへんだったんだなぁって!」

「あぁ、なるほど」


 ごまかせた!?


「そ、そういえばアプリルさんはふだん、ビキニは装備しないんですか?」

「え? ええ……私には【姫巫女の戦装束】がありますから」

「ですよねー」

「けど、街に行くと若い女性は、みんなビキニなんですよね」

「ですね」

「だからそのぉ 『なんであの子、ビキニじゃないの?』って感じで……」

「あー」

「エルフだからといっても、ルシアさまやミラさん、マハさんは装備してますし」

「だから私も装備しようかな? とは思ったこともあるんですけど……」

「あ、そうなんですか?」

「はい……そのぉ クリスくんはどう思いますか?」

「ええと……」


 アプリルさんの普段着は、白いブラウスにチェック柄のスカート。

 いわゆる日本の女子高生みたいな服だけど、人族の街ではすごい少数派なんだ。


(街の若い女のひとは、みんなビキニを装備しちゃってるからなぁ)


 それは冒険者じゃなくてもみんなそうで……

 もはや【若い女性ならビキニが当たり前】みたいな感じになってるんだ。


「ええと……アプリルさんとしては、やっぱりビキニは恥ずかしいです?」

「え、ええ……正直いうと」

「ですが、それが人族の街での【常識】なら、受け入れるべきなのかな……と」

「なるほどー」


 しかも最近は、レニーさんとかアイナママたちがビキニを装備してるから、

 【アラサー】の女性冒険者さんたちも感銘を受けて、ビキニになってるし?


「う~ん、だったら街に行くときだけ、ビキニを体験してみたらどうかなぁ?」

「や、やっぱり……クリスくんもそう思います?」

「はいー」

「あ……ちなみにエルフの森だと、ビキニアーマーってどうなんです?」

「ええ、やはり魔法の力が上がりますし、若い女性は装備してますね」

「やっぱり若い女の人だけ?」

「その……エルフは寿命が300歳ほどですから」

「120歳くらいまでは【若い女性】と言っていい年齢なんです」

「あ、そっか~」

「ですが、エルフの歳はわかりにくいですから、わりとそれ以上のお歳でも……」

「あー」


 ともあれ、エルフの森でもビキニはふつう……と。


「じゃあアプリルさんは?」

「私はその……【姫巫女の戦装束】を装備することがみんなに知られてますし」

「ですから普段は装備してないんです」

「そのぉ 儀式の時や今回みたいな緊急時、それから自己鍛錬の時以外は……」

「あ……」


 ということは……アプリルさん、あんまりビキニ姿を見せるにの慣れてない?


「だったら──」

「ですがっ クリスくんもああ言ってくれましたし……」

「私、勇気を出してみようかって!」

「おぉう」

「そ、それにそのぉ……クリスくんっ」

「は、はい?」

「私が街でビキニ、装備してたら……クリスくんは嬉しいですか!?」

「え?」

「う、嬉しくないですよね……私なんて──」

「すっごくうれしいです!」

「ホントに?」

「もちろん!」

「そ、そうですか~ えへへ♡」


 そりゃまぁ……たしかに?

 最初はぼくもアイナママがビキニで街を歩くのが、ちょっとヤだった。

 そもそもアイナママ自身が恥ずかしがってたし?

 ほかのひとたちにアイナママのビキニ姿を見られるのも、やっぱりヤだから。


(けど……)


 この世界じゃ、女性がビキニなのはあたりまえ。

 そもそも命を守る装備だし、恥ずかしいモノなんかじゃないんだ。

 それにアイナママが恥ずかしがってたのも……

 自分で【いい歳をして】って思ってたからだし?


「うん……だったら私、街ではビキニ装備しちゃいます!」

「おぉう」

「で、ですからそのぉ、クリスくん?」

「あ、はい」

「一緒に私のビキニ、選んでもらえませんか?」

「え? ぼくが!?」

「はいっ く、クリスくんが選んでくれたら私……頑張れると思いますし!」

「そうなの!?」

「ダメ……ですかぁ?」

「そ、ソンナコトナイデスヨ?」

「よかったぁ♪ えへへ……断られたらどうしようかと思っちゃいました~」

「そ、そうなんだ……」


 って、どうしてぼくなの!?

 ぼく、男のコなのに!


「あ、じゃあお礼に背中を流しますね♪」

「え? ちょ──」

「ですからぁ、クリスくんにはもうこの身体、全部見られちゃってますし♡」

「は、恥ずかしいけど……今更ですもんね♪」

「えっ? えっ!?」

「あ……急がないと朝食に間に合いませんよ? さぁ急ぎましょ♪」

「ちょ──」


 結局……ぼくはアプリルさんにお風呂に連れて行かれちゃって……

 背中どころか、いろんなところを洗われちゃって──


「もう♡ クリスくんったら……」

「あんなに見たくせに、まだ私の身体で【おっき】してくれるなんて……えへへ♡」

「い、いいから見ないでぇ!?」


 ◇◆◆◇


「えへへ♪ ふたりで一緒に飛ぶと、本当に早いですよねぇ」

「ですねぇ♪」


 もうすっかり慣れた風精霊魔法の【飛行魔法】。

 ぼくたちふたりががりで発動すれば、ひとりの時より速く飛べちゃうんだ。

 それには手をつないだり、カラダをくっつける必要があるんだけど……


(あ、アプリルさん……なんでまだ手を離さないんだろ?)


 街のそばに降りてから、ずっとつなぎっぱなし……なんですけど?

 いやまぁ? 見た目には【お姉さんに手を引かれる】なのはわかってるけど~


(でもアプリルさんが楽しそうだから……いっか♪)


 そのままぼくらは、アルタムさんのお店へ向かったんだけど~

 確かにアプリルさんを……


『なんでビキニじゃないの?』

『エルフだから?』


 って感じで見てるひとは多かったんだ。

 特に女の人。


(やっぱり女の人って、同じ女の人の服装とかのチェック、厳しいんだなぁ)


 そう思うと……アプリルさんもやっぱり女のコだし?

 やっぱり回りから『ダサい』って感じで見られるのはヤだったのかも?

 そう考えれば……さっきぼくに聞いたのも【背中を押してほしい】って感じ?


(うん、きっとそうだよねぇ)


 なーんてことを考えながら、ぼくたちは街を歩くのでした~


 ◇◆◆◇


「アルタムさんは、ビキニショーツを重ね穿きしてるんですね?」

「あ、そうなんですよー」

「だってこの【変身ヒモパン】? 脱いだらダメなんですよねぇ」

「え、ええ……でもそれ【姫巫女の戦装束】で、そんな名前じゃあ──」

「ですけど、さすがに普段からコレだけで外を歩くのは勇気がいりますからね~」

「ですからこうして……変身ヒモパンの上からいつものを重ね穿きしてるんです」

「アルタムさん? それってビキニアーマーの【加護】はおりるんですか?」

「あー、大丈夫ですよ? クリスくん♡」

「今もちゃんと加護、降りてますから♪」

「そうなんだ~」


 そういえば前世でも……

 ビーチとかでビキニのショーツを、重ねてはいてる女の人を見たことがある。

 アレは……そういうファッションだったのかなぁ?


「ちなみに……アマーリエさんのショーツは、ギルドの制服ですから?」

「いつものショーツの下に、変身ヒモパンをキッチリ隠して重ねてますね」

「な、なるほど?」

「そしてレニーさんなんかは……」

「ヒモパンの上から、黒いレースのショーツを重ねてます」

「あっ それって……」

「ええ、あえてスケスケのレースを重ねて……」

「あえてヒモパンの布をうっすらと、見せてるんです」

「やられました……メッチャオシャレですよねぇ」

「レニーさん……すごいですっ!」

(そうなの!?)


 お、女の人のオシャレって、よくわからないなぁ……


「で、姫巫女様はついにビキニを普段から装備することにしたんですね♪」

「あ、はいっ その……今更ではありますが~」

「いえいえ♪ じゃあレベル20代のというと──」


 ちなみに……ぼくとアプリルさんのカラダが戻ってから……

 アルタムさんたち【姫巫女の従者】の3人は、ちょっと変わった気がする。

 なんというか……ぼくがアプリルさんだったときはベッタリだったけど?

 今はふつうに【女友達】みたいな感じ?


(やっぱりこれって、ぼくがアルタムさんたちを従者にしたってことなのかなぁ)

(う~ん、これもミヤビさまにきかないと、わかんないなぁ)


 なーんてぼくが考えてると~


「お、おまたせしました」

「あ♪ アプリルさん、どんなのにした──ぎょっ!?」

「ど、どうですか?」

「どど、どぉって……」


 そのアプリルさんのビキニは……

 首廻りと腕は、ふだん着てる白いブラウスとリボン。

 だけどギルドの受付嬢さんみたいに、おっぱい丸出し状態にバッサリカット!?

 そしてショーツは例の【変身ヒモパン】に……

 すっごいローライズ──股上の浅いビキニショーツを重ね穿きしてる。

 だからあの【姫巫女の戦装束】のスカートみたいに……


「ひ、ヒモパンの上の方が見えちゃってますけど?」

「ちょっと冒険してみました!」

「冒険!?」


 それに、ブラも白いおとなしめの三角ビキニなんだけど?

 なぜか極小のマイクロビキニを重ねてるから……

 ぱっと見、そっちしか付けてないみたいに見える!?


「そそ、それって……」

「どうですかクリスくん♪ コレっ絶対流行はやりますよ!」

「アルタムさん……って、そうなの!?」

「いやぁ レニーさんにはやられましたが、こっちはブラも重ねてますし♪」

「しかも装備してるのが、超絶美少女の姫巫女様ですからね!」

「断言します! ひと月後にはみんなこの着こなしになってますよ♪」

「えぇぇぇ……」


「クリスくん……どうでしょう?」

「ええと……」


 そう……女のコにこう聞かれて、ぼくがいえるコトバなんて──


「す、すっごくかわいいです、アプリルさん」

「ほ、本当ですか!? えへへ……嬉しい♡」


 そんなふうに照れながら笑うアプリルさんは……


(ほんとうにかわいい♡)


 ◇◆◆◇


 そしてひと月後──

 アルタムさんのいうとおり……

 街の女の人のビキニは、【重ね】が大ブームになってましたとさ。

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