第83話 冒険者ギルドの本気!

「………………」

「………………」


 そうしてぼくたちはアルタムさんのお店を出て、おかいものをしてるんだけど~

 さっきからアイナママたちの元気がない。

 あ……ちなみにルシアママは【悪霊】の対策のために、

 【カニンヒェン】の格好に変装してるけどね~


「もー、ママたち? げんきだして?」

「で、ですが……」

「クリスが……クリスがぁぁ……」

「もー」


 さっき、ぼくがソロ冒険者のクラウさんとお話してたのに?

 ママたちがソワソワするから、クラウさん……気を使っていなくなっちゃった。


(まぁ? ぼくがクラウさんの『ファンなんだ』っていったからかもだけど?)


 でもそれは【人助け】の依頼を、クラウさんが主に受けてるから。

 ふつう高レベルの冒険者は…

 お金と経験値の効率のいいダンジョンに、こもりっきりになっちゃうのがふつうだから。


(だけどクラウさんはそれをしたいから)

(パーティーからのお誘いも断って、ずっとソロで依頼をうけつづけてるんだ!)

(すごいなぁ♡)


 だからぼくは、そんなクラウさんのファンなのだ♪

 なのにママたちったら……


「ぼくがいったのは『女の人として好き』じゃなくて!」

「『冒険者として尊敬してる』って意味なんだよ?」

「は、はい……」

「反省……してますぅ」


 むーん、なんだかすっごくヘコんでるなぁ

 そりゃぁ、たしかに誤解されちゃったのは、ちょっと『むぅ』って思ったけど?

 ぼくはアイナママやルシアママが大好きだから、困らせたいわけじゃないんだ。

 だから──


「それにぼく……女の人として好きになるなら……」

「アイナママやルシアママよりも、ステキな人じゃないと……ね♡」

「く、クリス♡」

「あ、ああ……そうだな♡」


 ぼくはママたちの間にはいって、その手を両方ともつないだ。

 そしたらママたちも、ぎゅっ♪ てにぎってくれたんだ♪


「も、もう♡ クリスったら……そんなにママの事を……(ぽっ♡」

「んふふ♡ 本当に仕方のない……まだ母が恋しいとはな(ぽっ♡」

(えー)


 なんだかヘンなスイッチが入っちゃった?

 けど、こういう時はなにもいわない……ぼくは学んだのです!


(それに……クラウさんもママたちに負けないくらいステキだけど?)

(これもだまっておこうっと♪)


 ただ──


「ね……ねぇ見て!? アイナ様と──ん? あの黒髪の人……誰ぇ?」

「な、なんか仮面つけてるけど……すっごいプロポーションなんですけど!?」

「あっ あたし知ってる! 【カニンヒェン】っていって……」

「冒険者ギルドが呼んだ、他の大陸から来た冒険者なんだって!」

「あ……あの街を襲ったおっきな魔物を討伐したっていう?」

「そうそう! ルシアさまがどうしても動けなくて……それで呼んだんだって!」

(おぉう)


 なるほどー

 冒険者ギルドからも、そういうウワサを流してくれたってことかな?


「っていうか……アイナ様のビキニ、小さくなってない?」

「え? ホントだぁ!?」

「って……まさかアイナ様、レベルアップしたとか?」

「ウッソ!? 前のもあんなちっちゃかったのに……さらに小さくなってる!?」

(うわー)


 や、やっぱり女の人って……よく見てるんだなぁ

 おかげでアイナママが、お顔を真っ赤にしてぷるぷるしてる!?


「でも……さっすがアイナ様だわぁ♡ あぁん……憧れちゃう!」

「そうよね……この街を守るために、さすがだわぁ♪」

「決めた! あたしも次レベルアップしたら、どうしようかと思ってたけど……」

「アイナ様を見習って、やっぱりビキニアーマー……続ける事にした!」

「っていうか、あの仮面のヒトのビキニもけっこうスゴくない?」

「うぅ……あのビキニにまけないオッパイ……ワタシも欲しいぃぃっ!?」

「あきらメロン……アンタ手のひらサイズでしょ?」

「チクショーっ!?」

(おぉぉ)


 アルタムさんが言ってたの、ホントなんだなぁ

 アイナママたちが、ビキニの縮小化を恥ずかしがってる女性冒険者さんたちに、

 【希望】をあたえてるって……


「うぅ……そうでした」

「ああ……まさかビキニが、ここまで小さくなるとはぁ……」

「ま、ママたち?」


 せっかくなおったごきげんが、またどんよりしちゃった!?


「で、でも? アイナママたちのビキニが、みんなに勇気を──」

「だ、だが……はじゅかしいものは はじゅかしいのだっ」

「おぅふ!」

「あ、貴女はそうして顔を隠しているからまだマシですっ」

「わ、わたしなんて……顔もお尻も丸出しで──うぅっ」かぁぁぁっ……

「ですよねー」


 アイナママもルシアママも……ついにお尻の布は完全になくなって……

 もう【ヒモ】だけになっててるし?


「しかも、あの【前のビキニ】──」

「あー」


 あの【ヒュドラ】を討伐したそのとき……

 ママたちのビキニは【強制パージ】させられちゃって~

 あれからもう、装備しても【加護】が降りなくなっちゃったんだ。

 だから今日、あたらしいビキニを買いに来たんだけど?


「アイナ……ここはギルドを信じるしかあるまい」

「え、ええ……ですが……」

(う~ん……)


 そう……実はレベルアップで【前のビキニ】が装備できなくなったって、

 どこからかギルドが聞きつけたみたいで……


『街の復興と、これまでに掛かった経費に使いたいから寄付して欲しい』


 そういってきたんだ。


「ええと……ルシアママのビキニは、前に軍のえらいひとからもらったんだよね?」

「ああ、そうだな」

「じゃあ、おねだんとかわからない?」

「うむ、まぁ……アルタムに聞けば判るだろうが……」

「なら、アイナママのビキニは?」

「確か……銅貨30枚ほどだっかたと」

「それに【奉納】の儀式は、わたしが自分でやりましたので」

「ええと……」


 日本円にすると……3千円くらい?

 よくわからないけど、そんなもんかなぁ


「でも、そんなおねだんのものが寄付になるのかなぁ?」

「うむ……どうやらギルドは、私達のビキニをオークションにかけるらしくてな」

「おーくしょん!?」

「先程、ミラとマハにそれとなく聞いてみたのだが……」


『なんといっても、お二方は救国の英雄です!』

『そして美人で巨乳……男女共にお慕いする者は多くございます!』

『そのお二方のビキニアーマーが、オークションに出るとなれば……』

『それはもう、プレミア必至! というか私が欲しいです!!』


「……ということらしい」

「おぅふ」


 そういえば……前に【裏ギルド】にアイナママが狙われたのも……

 どこかの大商人がお金にモノをいわせてやらせたっていうし?


(これはもう、とんでもないお金になるんじゃ……)

(そりゃぁ街の復興に使うようなこと、いうはずだよね~)


「なんでも一月ほどの告知期間を取り、王都までその事を伝えるらしい」

「おうと!?」


 こ、これはギルド……本気でやる気だぁ!?


「ええ……ですからせめて、装備が可能な女性に売って欲しい……」

「そうお願いしたのですが……」

「ああ、怪しいものだな」

「ですよねー」


 とまぁ……ぼくたちがそんなお話をしていると──


「にゃーん」

「ん? あ……猫さんだー♪」


 まっ黒い猫さんが、ぼくの脚にスリスリしてたんだ。

 この街にはネズミさんとかもいるから?

 それを捕まえさせるために、けっこう猫さんがいたりする。

 ちなみにノラ犬さんもけっこういるけど?


「えへへ、きみ……ひとなつっこいねー」

「にゃーん」

「やぁん♡ かわいい~」


 おもわず抱きしめて……頬ずりしちゃうぼく♪


「ぐふっ か、かわいいのは……クリス……」

「くぅぅっ♡ オマエの方だぁぁぁっ♡」

「え? ママたち……なにかいった?」

「「………………」」ふるふるっ


 なんだかぷるぷるしながら目をそらすママたち。

 どうしたんだろ?

 それに……まわりのお姉さんたちも?


「あぁっ あたしもネコになりたいぃぃ!?」

「ヤバっ クリスくんとぬこ……マジ癒やしぃぃぃ!?」

「尊い……尊いわぁぁぁ♡」

「あ、アンタら黙ってって! 今この目に焼き付けてるんだから!?」

「んっ♡ はぁぁん……はかどるわぁぁ♡」

(な、なにがはかどるのぉ!?)


 とはいえネコさんはガリガリで、お腹がへってそう?


「ねぇ アイナママぁ なにかあげちゃ……ダメぇ?」

「(クリスかわいいっ!?) だ、ダメです……」

「そんなぁ」

「いや、うかつにヒトからエサを貰うことを覚えさせるのは良くないぞ?」

「そうしたらもう、ネズミも捕らなくなるかもしれん」

「うぅ だよねぇ」


 かわいそうだけど……ルシアママのいうとおりだよね?

 中途半端な手助けは、この猫さんのためにもならないし……


「ん……じゃあまたね? 猫さん」

「にゃぁ」

「うふふ……ほんとかわいい♡」


 そうしてぼくは猫さんに、さよならしたんだけど……


 ◇◆◆◇


「もう……着いてきちゃダメだって~」

「にゃーん」

「もぉ♡」


 猫さん、ぼくのあとをずっと追いかけてきちゃって……

 ぼくがちょっとでも脚を止めると、すぐにスリスリしてきちゃうんだ♪


「ほらぁ、もうすぐ街の門についちゃうから……」

「キミはもといたところにおかえり?」

「にゃぁ」

「もぉ……しかたないにゃぁ♡」

「ぐふっ!?」

「ん? アイナママ……どうしたの?」

「な、なんでも……ありません」

「そぉ?」


 なんだかさっきから……アイナママがぷるぷるしっぱなし。

 それにしても……


「もう……なんで着いてきちゃうかなぁ」

「にゃー」

「えへへ、そんなスリスリしたら……くすぐったい~♪」

「そんなオナカへってるのかなぁ?」


 とりあえず、困った時は──


(【万物真理ステータス】、この子どんな感じ?)


 パッ!

-------------------------------------

・名 前:なし(猫)

・性 別:メス

・レベル:なし

・状 態:やや空腹

・H P:11/14

・M P:0/0

・スキル:【ネズミ捕り】

-------------------------------------


(おおぅ、【ネズミ捕り】ってスキルなんだ!?)

(でも? ちょっとオナカがへってるだけで、健康そうでよかった♪)

(それにこのコのぼくへの好感度、すっごく高いなぁ)


 なぜだかは知らないけど、どうりでなつかれちゃうはずだよねぇ

 でも、ここまでぼくのこと、好きでいてくれるなら……


「ねぇ? アイナママぁ このコ、おうちに連れて帰っちゃ……ダメぇ?」

「うぅ うちに……ですか?」

「うんっ ぼくが責任もってお世話するから!」

「あ、ネズミさんもちゃんと捕まえるように教えるし?」

「……どうしても、ですか?」

「うんっ どうしても!」

「ふう……なら仕方ありませんね?」

「えっ いいの!?」

「ええ、しつけは厳しくするんですよ?」

「はぁぃ♪ ありがとうアイナママ♪ えへへ、大好き♡」

「ぐふっ!?」

「ん? アイナママ……どうしたの?」

「な、なんでも……ありません」

「そぉ?」


 そうしてこの猫さんは、ぼくのおうちのコになったんだけど……

 なぜかぼくが猫さんとイチャイチャするたびに、

 アイナママがぷるぷるふるえてるんだよねぇ?


(うーん、せぬぅ)

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