第78話 こいつもやっぱり性悪だった!?
パッ!
-------------------------------------
【キマイラ】
出典:万物真理事典『ステペディア(stapedia)』
かつて邪悪な魔導士により生み出された合成の魔物。
獅子の上半身に山羊の下半身、そして背中にはドラゴンの羽、尻尾にはヘビ。
さらに獅子の頭の左右には、山羊とドラゴンの頭が生えた三つ頭となる。
獅子の様なしなやかさと瞬発力、ドラゴンの様な怪力と頑強さを持ち、
そして山羊の頭は悪名高き悪魔【バフォメット】のごとく魔術を操り
尻尾のヘビを含むすべての口から、属性の違うブレスを吐き出すという。
そのドラゴンの翼は天に届く様な山々を軽く飛び越え、
魔術により深き海の底まで潜ると言われている。
-------------------------------------
すでになにも聞かなくても、魔物の詳細を教えてくれる【
けど……読めば読むほど、絶望しかないその強さを感じる!?
「先手必勝ですわっ 焼き尽くせっ 【
ボヒュっ!!
まるで噴火のように吹き出した一面の炎が、キマイラを包み込む!
だけど……
(くっ 炎が効いてない!?)
キマイラは特になにをするでもなく、ただうっとしげに苛立つだけ。
そしてドラゴンの顔がぐるりとうごくと──
ボヒュゥゥゥ!!
「なっ アイスブレス!?」
その真っ白なブレスは一気に炎を消し止め……
さらに仕返しとばかりにこちらを向いて、その勢いを増した!?
「ま、守れ【炎防壁】!?」
ジュバァァァっ!
氷点下のアイスブレスを、アマーリエさんの炎が防ぐ!
けど……その威力は拮抗してて、一進一退状態!?
「ま、負けませんわぁぁぁっ!?」
ボウッ!!
アマーリエさんの気合で、一気に炎防壁が威力を上げる!
その勢いにキマイラはアイスブレスを止め、同時に炎防壁も霧散した!?
(くっ これ……引き分けってワケじゃないよね……)
すでに息が上がっているアマーリエさんに対し、キマイラは微動だにしない。
むしろ余裕のある態度で、こっちを見下ろしてるみたいだ……
パッ
-------------------------------------
【キマイラ】の戦闘時における攻撃の考察報告
出典:万物真理【管理ログ】より
キマイラは【狩り】をする際に、常に【楽に狩れる】方法を考え、
自らに対しあまりに脆弱な相手が、恐れ苦しむさ様子を大いに喜ぶ傾向がある。
故に獲物を弄び、中途で攻撃の手を止め、手負いのまま震えあがらせた上で、
改めてその止めを刺す……その様な狩りを好むと言われている。
-------------------------------------
(んなっ! 性格悪っ!?)
高位の魔物だけに、頭がいいのは予想してたけど……
ここまで性悪だったなんて!?
「じゃあワタシがその余計な首っ 落としてあげます!」
「両断せよっ【
アルタムさんが指差した先に、一筋の水がレーザーのごとく吹き出した!
そしてそのドラゴンの首に襲いかかり──
ガギン!?
「くぅ!? か、堅いぃぃ!?」
「は、はね返した!?」
あのカルキノスの堅い大鋏を切断した、アルタムさんの魔法【
何の抵抗もなくはじき返された!?
「じゃあ……
「だ、ダメですよぉ!? そんな重いものを落としたら……」
「この【タフクの塔】ごと崩れちゃいますよね!?」
「あぁっ そうでしたぁ!?」
あの【カルキノス】を踏みつぶした時も、すっごい地鳴りがしたんだよね……
日本と違ってこっちには【地震】なんてほとんどないから、
街のひとがパニックになりかけたんだ。
「こ、これは……相当の難敵なようですね……」
「ルシ──カニンヒェンさんたちを呼びます!」
「例のマジックアイテムですね? ですが……間に合ってくれるでしょうか?」
アイナママのいうとおり、ぼくの作ったマジックアイテム【方位人針】なら……
ぼくたちのピンチは使えることができる……けど、
このアイテムが示すのは【方向】だけで【高さ】までは教えてくれない。
(だから、最初から【屋上】とわかってるならともかく……
(ルシアママは、1階から順にぼくたちを探さなきゃいけないんだ)
そう考えると、やっぱりぼくらだけでカタを付けないといけない!
「ではアプリルさん! さっきの【合体魔法】を!」
「はいっ クリスくん!」
ふたり並んで魔力を練りはじめる!
そしてキマイラを睨みつけながら──
「囲みこめっ【
「削り取れ!【
ギュオォォォ!!
アプリルさんの召喚した砂──硅砂がぼくの竜巻に混じってうなりを上げる!
そしてキマイラを巻き込んで──
「ぐっ アイツ……まるで動かない!?」
「え、ええ……おそらく、何かで防がれていますね……防壁でしょうか?」
「ま……魔物が防壁!?」
とはいえ……さっきの【
【山羊の頭が魔法を使う】と書いてあった。
そして竜巻が弱まってゆくと……
「メェェェ!」
「うぅ……やっぱり」
そのヤギの目が赤く光り……なんかしらの魔法を使っているのがわかる。
というかコイツも、ネメアンライオンみたいに【物理攻撃無効】があるとか!?
「なら……また【アスガルド】で囲いますか?」
「あっ あの窒息させるアレですよね!」
「で、ですが……アイツは水の中でも魔法で呼吸ができるそうです……」
「ええっ じゃあ……あの手も──」
「窒息は……しないでしょうね」
「そ、そんなぁ!?」
だけど……ぼくたちのお話もここまで。
キマイラが……高くまいあがって、急降下してきたから!?
「くっ……【ミズガルズ】!」」
アイナママが掲げる杖から、円を描く光の奔流が放たれた!
そしてそれは間一髪──
ゴガァァァァ!!
キマイラの【炎】のブレスを食い止めた!
けれど……それだけじゃなくて──
ボヒュゥゥゥ!!
ドォォォォン!!
「なっ!? アイスブレスに、サンダーブレス!?」
ドラゴンがまた冷気を、そしてヤギが雷のブレスを吐いた!?
さらに……
「し、尻尾のペビまで……なにか黒い煙を吐いてますよぉ!?」
「あれは……?」
(【
パッ
-------------------------------------
毒のブレスと考察される。
なお、この毒に犯され【毒状態】となると、
1秒毎に50の
-------------------------------------
(なにその猛毒! そ、そんなの死んじゃうよぉ!?)
でも……アイナママの聖防壁【ミズガルズ】も、毒までは防いでくれない!
それに──
「くぅ……」
「あ、アイナさんっ」
アイナママが言葉を話すのも惜しんで、聖防壁に魔力を注いでる!?
(こ、このままじゃ保たない!?)
(どうする……考えろ考えろ考えろぉぉぉ!?)
使えるのはぼくの【風】と、アイナママの聖防壁……
そして浄化魔法の【キリエレイソン】だけど……魔法で対処される可能性が高い。
あとはアルタムさんの【水】、アマーリエさんの【火】、アプリルさんの【土】
(そして単発でぶつけるのはダメだ! そんなの何度も対策してるはずだし──)
(やっぱり……これしかないかも!)
そしてぼくは、みんなに作戦を伝える。
いけるかどうかは判らない……けど、やるしかないんだ!
「じゃあ数え3つで行きます!」
「さんっ」
「にっ」
「いちっ」
「いまっ!!」
フッ
アイナママの聖防壁が消失すると同時に──
「跳ね返せ!【水鏡】!」
かなり大きなアルタムさんの【水防壁】が、
キマイラの吐き出す3種のブレスを受け止める!
(けど、これは長くは保たないっ だから──)
「巻き上げろっ【
ゴォォォッ!!
【
さらに強力なウズとなって、キマイラを取り囲む!
けど──
(やっぱりキマイラのヤツ、ただの風魔法だと思って油断してる!)
そう、この【
そして迫りくる毒のブレスを霧散させるのが狙い!
そうして動きを止められたキマイラは──
「来たれっ 神々の塞壁!【アスガルド】!」
ネメアンライオンの時と同じく、アイナママの最強の聖防壁に捕らえられた!
「アイナさんっ 今回はそう時間はかかりませんっ」
「けど、できるだけ衝撃に対して強いものに……」
「そして合図とともに、その上側を開放してください!!」
「わかりました!」
閉じ込められたキマイラは、そのライオンの爪で防壁を壊そうとするけれど……
もちろん防壁は傷ひとつ付くことなく──
「アプリルさんっ」
「了解です! 叩きつけろっ【
ドォォォォ……
アルタムさんの召喚した水が、まさに滝のようにキマイラにむかって落ちてゆく!
アイナママの制御で【アスガルド】の上面をすり抜けたそれは……
本来なら、かなりの衝撃がキマイラを襲うはずだけれど──
(く……やっぱりぜんぜん効いてない)
そしてその水はあっという間にキマイラの背丈を超えるほどに溜まるけど……
やはり水中でも呼吸ができるらしく、小馬鹿にした態度でこっちを見ている!?
(や、やっぱり性格悪っ!?)
(けど……コレならどうだ!!)
「アプリルさんっ」
「はいっ 来たれ……【黒砂】っ」
ブワッ!!
「アマーリエさんっ」
「承りました! 焼き尽くせ──【
ヒュボォォォ!!
アスガルドの上方に発生したアプリルさんの黒い砂が……
アマーリエさんの最高位の火魔法【
そしてそれは徐々に赤く光を放ち……ドロリと溶けて──溶岩になった!
(溶岩の温度は約1千度!)
(この巨大なマグマのカタマリも……もしかしたら、お前は防ぐのかもね)
じっさい、マグマの中を泳ぐ火竜もいるらしいし……
そうであっても驚かないよ?
けど──
「これは防げるかな!?」
「クリスくん、いまっ!!」
「はいっ」
ぼくの合図で真っ赤に溶けた溶岩が、キマイラのいる聖防壁の中に落ちてゆく。
そしてそれは、アスガルドという【密閉空間】のなかにある水の中に落ちて──
ドゴォォォンっ!!
大規模な【水蒸気爆発】を発生させた!
「アイナさんっ」
「はいっ」
僕の合図で【アスガルド】の上方が開き……
とんでもない勢いの噴煙が吹き出した!
パッ
-------------------------------------
【水蒸気爆発(すいじょうきばくはつ)】
出典:万物真理事典『ステペディア(stapedia)』
水蒸気爆発とは、水が非常に温度の高い物質と接触することにより発生する、
一種の【爆発現象】である。
地殻内などの【密閉空間】において、大量の水源があった場合、
そこへマグマが流れ込むことで、急激に大量の水蒸気が発生する。
水の蒸発により体積は約1700倍程度となり、それが【爆発】となるのである。
-------------------------------------
(うん、【
このマグマを伴う【水蒸気爆発】はたいへん強力な爆発で……
山が噴火でマグマが吹き出たときに大量の水があると【山体崩壊】っていって、
その山のカタチが変わっちゃうほどの、激しい爆発が起きるんだ……
「アイナさん? もういいですよ」
「……え? あ、はい」
アイナママもほかのみんなも……あまりの爆発に、あっけにとられてる。
そして【アスガルド】が霧散すると同時に──
「からめ取れ!【
ビュゥ!
その風が噴煙を吹き飛ばし、一瞬だけ見えたそれは……
全身がバラバラになった、キマイラのパーツだったんだ。
そしてそのパーツは、放たれた風が取り巻かれて──
コロン……
あっけなく小さな球になって、地面に落ちた。
「【キマイラ】……封印しました♪」
きゅぴーん☆
「あっ お空に舞い上がった煙と灰も、あつめとかないと♪」
ぼくの風魔法で、その噴煙もつつがなく集められ──
キマイラ封印は無事に終了した……けど。
アイナママたちにはショックが大きかったみたいで……
しばらく言葉もでないみたいだったんだ~
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます