第57話 エルフの森からの、おきゃくさん

「あっ♪ アイナ様にルシア様だわっ」

「ホント!? あぁ……今日もお美しいわぁ♡」

(ですよねー♡)


 今日もぼくたちは3人で、冒険者ギルドの依頼をこなしてきました♪

 タフクの塔の攻略は、ほぼ見えてきたから……

 最近はまた【塩漬け依頼】の方をメインにするようにしたんだ。

 けれど……


「むぅぅ……なんとも地味な依頼だったなぁ」

「デスクロウの巣の駆除とは……」

「ですが、その近くの村に被害が出ていたのも事実です」

「それは判るが……」


 【デスクロウ】は、すごく大きくて凶暴なカラスの魔物で……

 それが集まって、森の木の上に巣をたくさん作ってたんだ。

 おかげで近くの村は、人や家畜が襲われて……かなりの被害が出てたみたい。


「そうだよ、ルシアママぁ」

「それにこのままにしてたら、もっとふえちゃうし?」


 しかも巣があるってことは、そこにタマゴがあるってこと。

 このまま放置したら、さらに魔物が増えちゃうんだ。


「ええ、それに討伐をしても、巣を残してしまっては……」

「また別の飛ぶ魔物が、住み着きかねませんし」


 なので今日はぼくたちで討伐して、さらに巣を落として焼きました。

 巣にはタマゴやヒナもいたけど……見逃せば、いずれ人を襲うから。

 魔物は人族を襲うことが本能に刻まれている。

 だから相容れないんだ。


「とはいえ、あんなやり甲斐のない安い依頼では……」

「で・す・か・らっ それはルシア、貴女基準での話です!」

「そ、そうなのか?」

「自在に空を飛び、遠距離から風の刃で魔物を両断できる冒険者……」

「それがどれだけ稀有なことか、理解してください」

「だ、だが飛ぶのはともかく、遠距離攻撃はできるだろう?」

「貴女の様に正確に、かつ強力な元素魔法使いなど、それこそ稀有です」

「それこそ【大陸最強の魔女】、ステラくらいなものですよ?」

「なんと……」


 やっぱりルシアママって、規格外なんだなぁ……

 しかも、いちばん付き合いが長い元素魔法使いが、ステラママだったから?

 なんだか基準が高くなりすぎちゃってるみたい~


「それにルシア? 軍籍にある貴女なら判るでしょう」

「前線で戦う兵士よりも……それを後方で支える人員の方が、何倍も多いのを」

「そ、それはそうだが……」

「でしたら、地味で安い依頼を受ける者がいかに大切か、お分かりですね?」

「むぅ」


 それでも、なんだか『納得できない』って感じのルシアママ。

 それを見て、アイナママがため息交じりにこう言ったんだ。


「そもそもこれらの依頼を受ける意味は、クリスの鍛錬だという事をお忘れなく」

「そしてわたしたちの仕事は……クリスを見守り、いざという時に助ける事」

「ですから貴女の【やり甲斐】云々は、この際どうでも良い事です」

「がーんっ」


 ショックを受けてるルシアママ。

 だけど……うん、アイナママのいうとおりだよね~


「ルシアママ? ぼく、巣を落とすのを手伝ってもらって……うれしかったよ?」

「く、クリスぅ」

「ぼくひとりだったらもっとたいへんだったし? だから元気だして?」

「あぁ……クリスっ ママはっ ママはぁぁ♡」

「むぎゅぅ!?」


 そしてぼくはルシアママにハグされて……

 布面積少なめのビキニおっぱいに、お顔をうずめたのでした。


 ◇◆◆◇


「え? エルフの森からお客さん、ですか?」


 いつものように冒険者ギルドに寄って、達成報告をしてたら……

 エルフの受付嬢、ミラさんとマハさんが、相談を持ちかけてきたんだ。


「左様にございます、御姫様おひいさま

「ひいてはルシア様に急ぎ、お願いの儀がございます」

「いやだからぼく、男のコですからね? 御姫様おひいさまじゃないですからね?」

「「えー」」

「はっはっはっ♪ クリスは可愛いから仕方ないな♡」

「「御意にございます♡」」

「えー」


 ってぼく、御姫様おひいさま呼びが確定なの!?


「では聞こうではないか。私に願いとは何なのだ?」

「はっ 恐れながら……」

「こちらマジックアイテムにより、エルフの森より届きし文にございます」

「ふむ……拝見しよう」


 おずおずと差し出されたそれは、ごく短い文章だった。


「むぅ……姫巫女、か」

「ひめみこ?」


 巫女って日本だと神社とかにいる、朱色の袴のお姉さんだけど……


「ああ、【巫女】とはエルフにおける【神官】の役割を持つ者だ」

「しんかん」

「そして【姫巫女】は、エルフの森の神殿の中でも最上位にある【神宮】」

「その【大宮司】──人族でいう【教皇】の氏族の娘を、そう呼ぶのだ」

「だいぐうじのむすめ」

「要はエルフの森の神事を取り仕切る、尊き血筋の娘だな」

「すごいっ」

「そしてこの文には、その姫巫女をこちらに送る──とある」


 前にルシアママに聞いたんだけど、エルフの森には王様がいなくて、

 いくつもの氏族が話し合って、森を維持してるんだって。

 いわゆる【議会制政治】ってヤツだね?


「僭越ながら、大宮司の氏族は神々の神託こそ授かり得ますが……」

「それは血筋の問題ではなく、あくまで職としてのこと」

「むしろ精霊の声を聞くことは出来ず、我らと何ら相違ありません」

「誠に尊きは、精霊の声を聞き、絶大なる魔法を操るルシア様」

「我らが祖、【アルフヘイムのアールヴ】の血を引かれし……」

「尊き氏族の御方にございます」

(おぉう)


 やっぱりエルフさんたちにとって……

 【ハイエルフ】であるルシアママは特別みたい。


「むぅ、またそれか」

「私の氏族こそ、今となっては政治的な貢献はしていないのだが……」

「そうなの? ルシアママ」

「ああ、今の状態になってからは、議会にも参加していないのだ」

「強いていえば、精霊との翻訳業のような仕事はしているが……」

「主な収入は森の外との商売だし、そちらは副業の様なものだな」

「そ、そうなんだ……」


 ルシアママ……じぶんの血筋については、なぜだか自己評価が低いんだよねぇ


「あ、人族の神殿はどうなの? アイナママ」

「教皇は世襲ではなく、教皇を補佐する枢機卿カーディナルの選挙で選ばれるのよ?」

「そして教皇の任期は死去するまで……ですね」

「なるほどー」


 そのあたり、やっぱりエルフさんは【氏族】を大事にしてるっぽい?


「がーん……ふ、副業……」

「ルシア様……それはあまりにもご無体な……」

「それにその、精霊の声が聞こえるが故に──」

「それこそ大宮司氏族が、ルシア様に御願い仕るつかまつる次第ではありませぬか」

「ああ、それはそうだが……」


 そういえばさっき、大宮司さんの氏族も……

 『精霊の声は聞こえない』っていってたっけ。


「ルシアママぁ なにをおねがいされてるの?」

「ん? あぁ、実はエルフの森の【神宮】には、とある封印具があってな?」

「ふういんぐ」

「その封印は、精霊の力で行われており……」

「故に精霊と意思疎通ができる我が氏族が、その保守管理を手伝うのだ」

「ほしゅかんり」

「それは20年に一度行うのだが、その役目をここしばらくは私がしていてなぁ」

「それって、たいへんなの?」

「いいや? 特にそんな苦労はしないぞ?」

「せいぜいその封印具を手に取って……」

『いつも苦労をかけるな、 今後もよろしく頼むぞ♡』

「と……微笑みながら労ってやるくらいだな」

「おぉう」


 な、なんだかイベントでファンサービスする、センターのアイドルみたい?

 となると──


「じゃあ、その姫巫女さんと……仲、わるいの?」

「ん? どうしてそうなるのだ?」

「だって……さっきルシアママ、姫巫女さんの名前を読んで、困ってたし?」

「あぁ……しまったな、顔に出てしまったか」

「やっぱりそうなんだ?」

「もしかして姫巫女さん……いじわるとかするの?」


 悪役令嬢、キタ━━━━(゚∀゚)━━━━━っ!?


「いや? そんなことはないぞ?」

「むしろ好かれている……そう言って間違いないだろうな」

「そうなんだ?」


 すると、エルフの双子さんたちが……


「僭越ながら……大宮司氏族の【姫巫女】ですが」

「名は【アプリル・インゼルドルフ】、御歳17にございます」

「あ、10代なんですね」


 この世界のエルフさんは、20歳くらいまでは人族と同じ速度で成長するんだって

 20という年齢は、肉体的に最盛期だから。

 で、その後は老化がぐっと遅くなって……300歳くらいまで寿命があるんだ。

 ルシアママの氏族は、500歳くらいまであるみたいだけど~


「ルシア様の氏族には到底及ばないものの……」

「大宮司の氏族はそれに次ぐ豊富な魔力を持ち、その宗家長女にございます」

「おぉう」

「そして一昨年に【姫巫女】を襲名」

「もとより才能のある巫女ではありましたが……」

「さらに努力と研鑽を積み、歴代屈指の魔力と身体能力を持つに至った様です」

「すごい!」

「性格は明朗で努力家。常に笑顔で接し【慈悲と尊敬】を常としています」

「口癖は『がんばります』で、特技は舞と歌唱」

「被災地や戦地を積極的に慰問し、その舞と歌唱を披露していらっしゃいます」

「アイナ様の御前ではございますが、エルフの森では【聖女】に等しきお方かと」

「ふふ、お気になさらず」

「ですが今のわたしは、小さな村の神官に過ぎませんよ♪」


 アイナママ……じぶんはもう【聖女】じゃないって思ってるみたい。

 っていうか、アイナママの次の聖女さまって……いるのかなぁ?

 町の人たちも、いまだに【聖女さま】って呼んでるし?

 【聖女】は【勇者】と同じで、常に1人しか選ばれないから……

 ひょっとしたら、まだ聖女なんじゃないのかなぁ?


(っと、今は姫巫女さんのおはなしだよね?)

「じゃあルシアママ? なにがルシアママを困らせてるの?」

「むぅ……困るというか、なんというか……」


 なんだかすごく、話し辛そうなルシアママ。

 やっぱり姫巫女さんと、なにかあったのかなぁ?


「あー、つまるところだな?」

「近いうちにこの街まで姫巫女一行が、やってくる訳だ」

「うん、そうみたいだね」

「それを前もって知らせるのは、私にその姫巫女の世話をしろということだろう」

「そしておそらく……姫巫女は我が家での逗留を希望するだろう」

「え?」


 ルシアママはそういうけれど……なにが問題なのかわからないぼく。

 だって、お部屋はたくさん余ってるし?

 アイナママのお料理なら、姫巫女さんでもよろこんでもらえるだろうし♪


「いいんじゃないの? ね? アイナママ」

「ええ……ルシア、わたしは問題ありませんよ?」

「だがなぁ──ふむ、こうなっては仕方ない」

「この件はここだけの話として、他言無用にして欲しい」

「え? あ……うん」

「ええ……承知しました」

「「御意に」」


 すると……ルシアママは語り始はじめて……


「2年ほど前か……」

「件の【アプリル】が姫巫女を襲名した際に、私もその儀に呼ばれてな」

「襲名の儀の前後半月間ほどのあいだ、アプリルと寝食を共にしたのだ」

「しんしょくをともに」

「ああ……なんでも以前から、アプリルは私に逢いたがっていたようでな?」

「察するに、周囲が大げさに私の武勇伝などを聞かせたのだろう」

「まぁ年頃の娘が、物語の騎士に憧れるようなモノだな」

「ええと……」


 ルシアママ、救国の英雄だよね?

 物語の騎士そのまんまの活躍、してるよね?


「だが……逢ってみればアプリルは、実に明朗で人懐こく、好ましい人物でなぁ」

「聡明で剣の腕も素晴らしく、風の精霊使いとしてもかなりの腕前だった」

「すごい」

「そして私はアプリルに請われ、例の飛行魔法の鍛錬を施したのだが……」

「実直で努力家のアプリルは、その教えを見事に会得した」

「とまぁ、短い期間ではあったが、まるで師弟のような関係にあったのだ」

「おぉぉ」


 というか……いまだに何が問題なのか、わかりませんが?


「だが……そんなアプリルにも弱点があった」

「じゃくてん?」

「実はアプリルは……男が苦手なのだ」

「そうなの?」

「うむ、箱入りで育てられた弊害かもしれんな」

「とはいえ、必死の努力で顔にこそ出さないようにしているが……」

「それこそ息が届くほどの距離に近づかれたり、触れられたりしたら──」

「し、したら?」

「卒倒する程度には苦手だな、じっさいに私も何度か見た」

「おぉう」


 そ、それはまた……なにかと大変そうな──


「それ故に、女である私ならそれも平気なようでな?」

「おかげで滞在最後の晩には……アプリルに夜這いをかけられたからな」

「おぅふ」

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