第56話 アルタムさんに、セッケンを♡

「うぅぅ……アルタムさぁん」

「あー、仕方ないですよぉ」


 アルタムさんが案内してくれた【タワーシールド】は……

 どれもこれもぼくの背丈よりずっと大きかった。

 しかもメチャクチャ重くて、ぼくじゃぜんぜん持ち上がらないし!?


「そもそも、魔物の攻撃や体当たりを受けるような盾ですもの」

「そりゃあこのくらいの大きさと重さがないと」

「ですよねー」


 じゃあ、ぼくの背丈にちょうどいい大きさの盾で探すと……

 こんどは小さすぎて、とても【後衛を守る】なんて感じにならないっぽい。


「それにクリスくんは、軽剣士のスタイルじゃないですか?」

「やっぱり俊敏さを活かした、ヒットアンドアウェイ戦法で行くべきなのでは?」

「うーん」


 アルタムさんのいってることはごもっとも。

 というかぼくも、今まではそのスタイルだし?


「けどですね? この前すごく堅いやつと戦闘になったとき……」

「ぼくの剣だと、なかなかキメ手にならなくて~」

「あー、【攻撃力】が少ないうちは、どうしてもそうなりますねぇ」

「それにいまのぼくのパーティーだと、もうひとりの剣士が強すぎて……」

「本気になっちゃったらぼく、することがなくて~」

「あー、それは地味に辛いところですねぇ」

「アレですね? パーティーをクビになるやつですね? 最近流行りの」

「おぅふ」

「というか、はやってるの!? クビになるの!」


 ぼ、ぼくはクビにならないよね? ドキドキ!?


「というかぼくのパーティーは、全員で3人ですけど……」

「ふたりともぼくのママですから、それはないですよぉ」

「あはは、冗談ですよ♪」

「先日いらっしゃった、神官の女性ですよね? メガネをかけた」

「はい♪」

「で、もうひと方もママ、という方は?」

「あ、ぼく……ほんとうのママが亡くなっちゃったので……」

「もうひとりのママに、養子にしてもらったんです」

「まぁ……ごめんなさい」

「いーえ、ぼくが赤ちゃんのころのお話ですから~」


 悲しくないといえばウソになるけど……

 そのぶんぼくにはふたりのママがいてくれるし♪


「あっ そういえばアルタムさん、すごいですね!」

「はい? なにがでしょう?」

「ええと、軍隊にビキニアーマーをおさめてるって」

「あー、よくご存知で♪」

「いえ、『採算度外視でいいから【英雄級】レベルのを作れ』なんて注文で」

「思わずはりきっちゃいまして♪」

「おぉう」

「しかもその方は、まるで神殿にある女神像の様な女性なんですよ♪」


 よくしってます。

 ゆうべも【レッスン】してもらったし♡


「ええと、【ワンオフの超エアロモデル】でしたっけ?」

「ええ♪ ってクリスくん、よくご存知で」

「もしかしてクリスくんも、ルシア様をお見かけしたことがあるんですか?」

「あ、ぼくのママですから♪ ルシアママ」

「………え?」


 アルタムさん、なぜだか固まっちゃった。

 そして……


「も、もしかして……」

「最近、ルシア様とアイナ様がパーティーを組んでる【少年】って……」

「ぼくですけど?」

「クリスくんがあのっ【かわいい英雄】だったんですか!?」

「か、かわいいっていわないでぇ!?」


 なんてぼくがいってるのに──


「クリスくんっ ありがとうございますっ♡」

「うわっ」


 むぎゅぅぅ♡


 アルタムさんのおっぱいが、ぼくのカラダにおしつけられて……

 そのメっチャやわらかーい感触に、ぼくはうっとり──

 じゃなくて、ドキドキしちゃう!?


(と、というかアルタムさん、ぼくと背が同じくらいだから……)

(ハグされると、お顔がこんな近くに……はわわっ)


 それに……


(すっごいかわいい感じの童顔なのに!)

(れ、レイナちゃんとはぜんぜん違うボリューム感!?)

「クリスくんのおかげでっ ルシア様がビキニを装備してくれました!」

「あぁっ なんてお礼を言ったらいいかっ♪」

「い、いいですからっ お礼なんて~っ!?」


 けれどもそんなアルタムさんのハグは、もうしばらく続くのでした。


 ◇◆◆◇


(はぁはぁ……アルタムさん、やっぱりすっごいチカラもち)


 ぼくはがっちりロックされちゃって、ぜんぜん抜け出せなかったんだ。

 腕なんてまっしろでぷにぷになのに~


「なるほど、ルシア様が前に出られては……」

「確かに他の剣士の出番はありませんねぇ」

「ですよねー」


 ルシアママ、剣撃も防壁魔法も、ぜんぶ自分でやっちゃうし?

 だから剣ではりあっても、ぜったに勝てないよねぇ?


「それで【盾役タンク】ですか~、発想は正しいんですけどね」

「あう」


 問題は、ぼくの体格と防御力……だよね。

 装備出来ても小さな盾じゃ、意味ないし~


「魔剣ならぬ【魔盾】というのもるにはあるんですが……」

「えっ そんなのあるんですか!?」

「どちらかというと、盾に攻撃魔法の効果がある……という感じですので」

「クリスくんの目指す正当な盾役タンクではなく、魔法剣士っぽい用途ですねぇ」

「あぁ、なるほどぉ」


 なら、ステラママのあとを継ぐ感じで、魔法を覚えようにも……

 勇者時代と違って、いまのぼくにはMPが足りない。


(しかもぼくが覚えてる強力な攻撃魔法は、たったひとつだけ……

-------------------------------------

見敵殲滅アナイアレイト

 種別:勇者魔法

 状況:常時

 対象:術者

 効果:広範囲の敵の殲滅を目的とした戦術級広域攻性魔法。

 術者の視界内に入る全ての敵に、超高熱の連続爆裂攻性体を叩き付ける。

 相手は死ぬ。

 威力は常にMAXで調節不可。

-------------------------------------

 これも魔力消費多すぎで、ママたちのおかげでMPが増えた今でも全然ダメ。

 しかも威力は常にMAXで調節不可だし……

 そもそも戦術核クラスの破壊力の魔法とか、平時に使える訳がない。


(っていうか、コレが勇者の使える唯一の攻撃魔法とか……極端すぎるよぉ!?)


 そもそも強力すぎて、ダンジョンとか建物の中みたいな狭いところでもダメ。

 だから勇者時代でも、数えるほどしか使ったことがないんだ。


(というかぼくが使ったら、一発でママたちに【勇者魔法】ってバレる!?)


 やっぱりルシアママと被るのを覚悟で、魔法剣士を突き詰めるしかないのかなぁ

 そんなことを考えながら、ぼくはしょんぼりと盾役を諦めたのでした~


 ◇◆◆◇


「っと……忘れるところでした。これをどーぞ♪ アルタムさん」

「あら、これはなんでしょう?」

「ぼくのつくったいいにおいのセッケンです♪」

「せ……セッケン!?」

「ここ、これを私に!?」

「はい♪ アルタムさんに、ぜひつかってほしくって」


 とりあえず、仲良くなったアマーリエさん、レニーさん、アルタムさん。

 この3人には、定期的にセッケンをプレゼントすることにしたんだ♪


(すごくお世話になっているし?)

(それになにより、いつもキレイでいてほしいから♡)


 あ、ユカイさんとかの男の人は~

 いままでどおり、獣脂のセッケンか灰を使って下さい。

 え? 差別?

 だって~ なんだかずっごく雑に使っちゃいそうなんだもん。


「え、ええと……クリスくん? これ……本気、なんですか?」

「え? 本気……というか、お金なんていりませんよぉ?」

「え? いえ、そういうことじゃなくて……そのぉ」

「え? あ~、気にしなくてもいいですよぉ」

「コレをつかって、アルタムさんがもっとキレイになってくれれば♪」

「も、もぉ♡ クリスくんったら」

「わ、ワタシみたいな女、どこがイイんですかぁ♡」

「……え?」


 どこが、って言われれば……

 アルタムさん、ドワーフだから背はちっちゃめだけど?

 このお店の店長さんで、軍から依頼が来るくらいすっごく優秀だし?


(ぼくとしては、そのフッサフッサのおヒゲが気になるけど……)


 これはドワーフの文化で、おヒゲがないと……

 同業のドワーフさんたちに『半人前』って感じで舐められちゃうみたい。

 しかもアイナママに言わせれば、付けヒゲみたいだし?


「そ、そのぉ~ ワタシ……すごく太ってるし、肌も生白いし?」

「えっ!?」

(太ってる? それで!?)


 アルタムさんは、確かにちょっと『ポチャっ♡』っとしてるけど……

 ぼくにしてみれば、太ってるだなんてぜんぜん見えない!?


(というか、そんなコトアイナママの前で言ったら……)

(ぜったいに【笑顔の威圧ゴゴゴゴゴ】を放たれちゃう!?)


 なんてぼくが内心、ドキドキしていると──


「そ、それに腹筋も割れてないし、顔だってすごく童顔だし?」

「えっ!?」

「そそ、それにオッパイも……すごく大きいし?」

「ええっ!?」


 そこまで聞いて、ぼくは気がついた!?

 もしかしたら……アルタムさんの言ってるソレって──


(【万物真理ステータス】!?)

(ドワーフ基準の【美人女性】って、どんななの!?


 パッ

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 ドワーフにおける一般的な美人女性の考察

 出典:万物真理事典『ステペディア(stapedia)』


 一般的なドワーフ女子における【美人の条件】は、主に以下が挙げられる。


・背が小さめであること(概ね120センチ程度が理想とされる)。

・中性的で堀の深い老成した顔(いわゆる【老け顔】)が好まれる。

・筋肉隆々で、体脂肪率が10%以下であることが望ましい。

 特にキレている腹筋や上腕二頭筋は、セックスアピールが高いとされる。

 (逆に豊満な乳房や臀部は、だらしない体型と批判される場合が多い)

・小麦色の褐色の肌が好まれる(油脂等を肌に塗り、筋肉を強調する文化)。

・体毛が濃く、剛毛なほどドワーフ男性に喜ばれる。

 特に髭が立派なほど、美人として見られる傾向が高い。

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(んなっ!?)


 つまり、ドワーフ業界の美人さんって──

 小柄で立派なおヒゲの生えてる……

 キレっキレのボディビルダーみたいな人ってコト!?


(と、いうことは……)

(アルタムさんって、ドワーフとしては残念な見た目なのぉ!?)


「ででっ でも! 人族──というかぼくにしてみればっ」

「アルタムさんはすごくキレイだし、可愛いです!」

「えっ!?」

「白くてポッチャリしたおハダも、ぼくにはすっごくキレイに見えますっ」

「ええっ!?」


 アルタムさんは、そんなぼくのセリフにワナワナと身をふるわせて──


「く、クリスくん……その若さで、そんな特殊な性癖なの!?」

「ちがいますっ!?」


 いきなりなんてコトいうの!?


「でもでもっ ワタシ……おハダは真っ白でモチモチしちゃってるし!」

「オッパイお尻もっ 大きすぎてムチムチしちゃってるし!」

「カラダの毛もぜんぜん生えなくて、腋も毛がなくてツルツルだしっ」

「おまたの毛もっ 土手にほんのちょっぴりしか生えてないんですよ!?」

「にゃーっ!?」


 お嫁いり前の女の人がっ そんなコト言っちゃらめぇぇっ!?


「そ、そんなのが好きだなんて……クリスくんってやっぱり特殊性癖──」

「違うけどっ!? 人族の女の人としては、すっごく理想的ですよっ それぇ!?」

「そ、そうなの? でも──」

「と・に・か・くっ」

「アルタムさんはぼくにとっては……すっごい美人さんですってば!」

「あわわわっ!?」


 なんだかお顔を真っ赤にして、あわあわしてるアルタムさん。

 でも、アルタムさんが人族基準ですごくキレイだって、判ってもらえたみたい。


「そそっ それでも……クリスくんにはまだ早いですよぉ!?」

「……え?」

「わわっ ワタシに……ケッコンを申し込むだなんてぇ!?」

「え……えぇぇぇっ!?」


 ◇◆◆◇


 その後……アルタムさんに聞いたところ、

 ドワーフの女性にセッケンを送るのは【プロポーズ】の意味があるそうです……

 なんでも『身綺麗にして、身体ひとつで嫁いでこい』そんな意味があるそうで。

 ぼくは必死に『たくさん作ったから、知り合いの女の人たちにあげてるだけ』

 そう説明しましたが──


「はぁん……クリスくぅん♡(キュン♡)」


 なんだかあれ以来、アルタムさんのぼくを見る目がウルウルしてるのは──

 ぼくの気のせいでしょうか?

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