第52話 精霊魔法のコツってなぁに?

「んふふ、しあわせ~♡」

「うんっ、おいしいね♪」

「うふふ♪ そういってもらえるとママ、嬉しいわ♪」


 今夜のごはんはハンバーグ♪

 レイナちゃんもぼくも、とっても大好きだ♡

 ぼくがステラママの蔵書からみつけた──ってことになってるレシピだけど……


「いや、やはりアイナの料理はすごいな」

「この料理も、出るたびに旨くなってゆく♡」

「ホントだよね~ アイナママ、すごいや♪」

「うふふ、ありがとう♪」


 あれから何度かアイナママが作っているうちに……

 すっかりハンバーグの作り方、マスターしちゃったみたい。

 すごいよねぇ♪


「でも……こんな料理法を思いつく異世界の人族って、ほんとうに凄いのねぇ」

「だねー」


 こっちのお肉は品種改良なんてされてないから、スジが多くてとってもかたい。

 しかもそれを塩漬けにして食べてたから……

 今を思えばあんまりおいしくなかったんだ。


(それでもぼくたちには、すっごいごちそうだったけどね~♪)


 でもハンバーグはお肉をミンチにしちゃうから……

 むしろちょっとくらい固くても、ちょうどいい歯ごたえになっちゃう♪


(そういえば前世日本のママも、ブタさんの【すね肉】とかよく使ってたなぁ)


 すね肉っていうと、ビーフシチューとかが有名だけど?

 それをひとくちサイズの大きさで食べるなら……

 お鍋でことこと、4~5時間は煮込まなきゃいけないんだ。


(こっちの世界は圧力鍋なんかないし?)

(煮込むのにもマキがいっぱいいるから、たいへんなんだよね~)


 その点! うちのカマド──あらため【魔石コンロ】なら、とってもらくちん♪

 しかも【給水器】と【冷凍・冷蔵庫】、それにオーブンまであるから……

 アイナママのお料理は、とってもバリエーションが増えました♪


(できればもっと、現代日本の料理を再現したいところだけど~)


 【万物真理ステータス】に教えてもらったら、手に入る食材もけっこうあるんだけど……

 でもお値段がとってもお高いから、あんまりムリできない。

 せいぜいこの前の、コショウやオリーブ油とかがせいいっぱい。


(あんまりお高いと、アイナママが心配しちゃうからね)

(でもなんとか、タマゴと揚げ油は……良いモノをお安く手に入れたいなぁ)

(んー、安く手にはいる産地まで、ルシアママにつれてってもらって……)

(【異空収納インベントリ】に入れておくのが正解かなぁ?)


 なんて、ぼくが考えこんでると~


「クリス? 昨日お話していた……精霊魔法、うまくいったのかしら?」

「うんっ ちゃんとできるようになったんだ、アイナママ♪」

「まぁ……さすがはクリスね♡」

「えへへ♪ ルシアママに教えてもらったおかげ」

「うふふ、だそうよ? 良かったわね、ルシア」

「ああ、私は良い息子と弟子に恵まれたようだ♡」

「まぁ、うふふ♪」


 そんなママたちがお話してるのは……ぼくの風精霊魔法の特訓。

 今日は1日、ルシアママの【風精霊魔法講座】を受けたんだけど……

 そこでわかったことが【ふたつ】、あったんだ。

 ひとつは──


(ルシアママ……【教えベタな天才】だったんだよね……」)

(いわゆる、『そこをグワーっとやって、ピャッっとするんだ』……みたいな?)


 そう……エルフ──とくにハイエルフにとっての【精霊魔法】は、

 魔族にとっての魔法と同じく、【できてあたりまえ】のものなんだ。

 それは『呼吸ってどうしてできるの?』って聞くのと同じこと……

 だから人族であるぼくに、うまく説明できなかったんだ。


(けど、その必死な説明で、わかったことがもうひとつ……)

(それは、ルシアママがぼくに──)

(母が子に、愛情を注ぐのがあたりまえのように)

(精霊さんにも、感謝といたわりの気持ちが必要だったんだ)


 【元素魔法】は、自分の魔力を使って……

 大気中の元素に直接、働きかけて発動させる魔法だ。

 それはつまり、【自分でやる】ということ。


(だけど精霊魔法は……精霊さんに【お願いしてやってもらう】魔法なんだ)

(だから、精霊さんをそばに感じて、そして感謝しないとダメだったんだ)


 だけどぼくには、精霊さんの声が聞こえない。

 だから【お願いしてやってもらう】ということ自体は知っていても……

 それに感謝するということを、じっさいにはしていなかったんだ。


(だから、単に【呪文】として唱えるんじゃなくて……)

(【万物真理ステータス】に【お願い】するみたいにやってみたら……)

(精霊さんの嬉しそうなキモチが、ぼくに伝わってきた♪)


 その結果【ソニックブレード】の威力はもっとあがって……

 かたい岩まですっぱり斬れるようになったんだ!

 そして、風の防壁の魔法もすぐに覚えちゃって……


「ふむ……人族は【元素魔法】を使う者が多いからなぁ」

「それだけに、精霊を道具のように捉えてしまうのかもしれんな」

「どうぐ?」

「ああ、例えば……私がクリスになにかしら【お使い】を頼んだとする」

「おつかい」

「だがそれを、私は【やって当然】とは思わない……親と子であってもな」

「むしろ、それを達成した後は……私はクリスに感謝をする」

「『ありがとう』と言葉を伝え、ハグをしてキスをするくらいはフツーにする」

「ですよねー」

「そしてそれは、私達エルフににってはごく当り前のことなのだ」

「精霊への【感謝といたわり】の気持ちを持つことはな」


 ただ、ルシアマママの氏族以外のエルフさんは、その声が聞こえなくなってる。

 けど、見えなくても聞こえなくても、感謝はしてる。

 だから精霊魔法が発動するんだって。


(日本人が『すべてのものに神は宿る』って考えるのに近いかも?)


 あれは【自然や物を大切にする気持ち】を……

 【神さま】というわかりやすい存在に例えて教える、一種の社会教育。

 ふつうに学と常識のある人なら、最初から自然や物は大事にする。


(けど学のない人でも【神が宿る】といわれたら、そうそう雑には扱えないし?)


 そんなふうにぼくが、ココロのなかで納得していたら……


「しかもなぁ、クリスの感謝は精霊たちも、かなり嬉しいらしくてな」

「そうなの?」

「そうだな……私の場合、主人に対し【長年仕えた熟練の執事】の様な感覚だな」

「じゅくれんのしつじ」

「ああ、『アレはどうした?』だけで通じたり……」

「いつの間にか必要なものが揃っていたりする様な……そんな感じだな」

「すごい」

「それで私がいたわると……すっと腰を折って誇らしげに微笑む、そんな所か」


 『感謝の極み』ってやつですね?


「そしてクリスの場合は……ああ、それこそアレだ」

「あれ?」

「先日話した、あの精霊魔法を研究する連中が……」

「【紅一点の若い女】に、こぞって貢いでいる様でな」

「おぅふ」


 それ……【サークルの姫】ってやつだよね!?


「まぁ、なにはともあれ……」

「ともあれ?」

「クリスは可愛いからな♡ 精霊が喜んで貢ぐのも当然だろう」

「か、かわいいっていわないでよぉ?」


 ぼく、男のコなのにぃぃ!?


「あーあ、いいなぁ……わたしも早くお誕生日が来ないかしら?」

「うふふ、もう少しのガマンね、レイナ♪」

「むうぅ……クリスぅ? ちょっとお誕生日が早いからって、ずるいわ」

「えへへ♪」

「あ、あんまりわたしをおいて、先に行かないでよね?」

「レイナちゃん♡」


 すると、ルシアママがニヤリと笑いながら……


「ほう? レイナは【共に進みたい】という考えなのか」

「え? それはそのぉ……(ぽっ♡)」

「うふふ、でもレイナ?【守ってもらいたい】という女性も多いわよ?」

「はっ その手が──」

「あ、ぼくはどっちでもいいと思うよ?」

「えっ!?」

「どっちにしても、ぼくはレイナちゃんとずっといっしょだからね♪」

「く、クリスぅ♡」


 お顔を真っ赤にしてあわあわしてるレイナちゃん♡

 それを楽しげに見てるママたち♡

 そんな楽しい家族のだんらんが、ぼくは大好きだ♪

 そして……


 コトリ


 アイナママが食器だなに、今夜もまたヒミツのサイン──

 ちいさな赤いツボをおいてくれた♡


 ◇◆◆◇


「はふぅ♡」

「うふふ、おつかれさま♡」


 今夜もアイナママのお部屋で、いつもの【レッスン】。

 おかげでMPもだいぶ上がってきた♪

 それに現代日本でいっぱい見た、【動画】のおかげで……

 だいぶ上手に、なったと思う……うん、思いたいなぁ。


(けど、この【密談の小箱】を使うようになったら──)


 パッ!

-------------------------------------

【密談の小箱】

種 別:マジックアイテム

制 限:無制限

価 値:金貨11枚

性 能:この小箱の蓋を開けておくことで、

    室外に音声が漏れないようにすることができるマジックアイテム。

    だがその効果は音声のみで、物音などは聞こえてしまうので注意が必要。

    逆に室外からの音声は、室内に聞こえるままとなる。

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 いままでは、アイナママ。

 指を軽く噛んで、声を出さないようにしてたけど……

 今はいっぱい声を出してくれるんだ♡


(うぅ、アイナママはずるいっ)

(こんなにキレイでやさしくて、おっぱいもおおきいのに)

(あんなかわいい声、出されちゃったらぼく……止まらなくなっちゃうよぉ♡)


 さすがに【レッスン】に使える【勇者魔法】やスキルなんてないから?

 ぼくはレベル1相当の体力で、いっぱいがんばってるんだ。

 だけど……


「うふふ、汗をいっぱいかいちゃったわね?」


 アイナママはそういうと、ぼくの髪をやさしく整えてくれる。

 ぼくを上に乗せたまま、優しい目で微笑みながら♡


「でも、アイナママは……とってもいいにおい♡」

「もう……恥ずかしいわ♡ そんな匂い、嗅いじゃダメよ?」


 アイナママはそういうけど、ヘンなにおいなんてぜんぜんしない。

 セッケンを使うようになってから、アイナママはもっとキレイになってるし♡


「ううん、このにおい……ぼく、だいすき♡」

「だからもっと、ぎゅっ♡ ってしちゃう♡」

「もう……クリスったら、ちゅっ♡」

「ん♡ アイナママぁ♡」


 【レッスン】のときだけは、キスはほっぺじゃなくて……

 だからぼくたちは、おしゃべりできなくなっちゃったのでした♡


 ◇◆◆◇


「ん♡ もう……さっきあんなにママに出したのに、こんなに♡」

「だ、だってぇ~♡」


 いつもなら……アイナママのお部屋で、カラダを拭いてもらっておしまい。

 でも今日は、こっそりお風呂にはいってるんだ♪

 そして最初は、ぼくがアイナママのお背中を洗ってあげてたんだけど……

 アイナママの真っ白なお背中と、うなじ♡


(それを見てたら……つい? えへへ♡)


 そしたらアイナママ、お湯に浸かったまま、その縁につかまって……

 ぼくにおしりを向けてくれたんだ♡

 だから──


「く、クリスぅ? ママはもう……♡」

「ぼ、ぼくもっ」


 いっしょに♡

 ぼくが最後のスパートをかけたとき──


 ガララっ


「クリス♡ やっぱりここに居た──んなぁぁっ!?」


 ルシアママが……入ってきちゃった!?


「る、ルシアっ!? んあぁぁぁっ♡」


 けど……ぼくもアイナママも、急には止められなくて……

 びくびくっ♡ ってしてるとこ、

 見られちゃいました。

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