第47話 べんりな収納魔法で生活向上♪

「──っていうわけで、ほら」

(【異空収納インベントリ】!)


 パッ!


 ぼくの左手に浮かび上がる【白い】魔法陣に、右手をさしこむと……

 そこからぼくの防具一式を詰めこんだ、バッグがでてきた。


「ほう」

「まぁ……」


 あくまでこれは、ステラママが遺してくれたマジックアイテム──

 というコトになってるけど……バレてないよね?


「さすがはステラ、これを実用化していたか」

「私も200年生きているが……これを見たのは5~6度というところだぞ?」


 そんなふうにルシアママがいう。

 よかった……やっぱり勇者だけじゃなかったんだ、収納魔法って。


「うんっ すごいよね、ステラママ♪」

「ああ、これがもっと普及すれば、冒険者はもっと楽になるんだがなぁ」

「だよねぇ」

「そもそも……冒険者は基本【根無し草】だ」

「きまった家をもたずに、いつも宿屋に泊まってるのが普通だからな」

「あー、レニーさんたちみたいなベテランパーティーでも、そうだったよ」

「レニー? ああ、この前の痩せぎみの神官だったか」

「ふむ、この前は悪いことをしたな……」

「ですよねー」


 レニーさんたち……トラウマになってなきゃいいけど?


「ぼくたちみたいに、じぶんのおうちから通う人って、やっぱり少ないの?」

「ん? そいつがその街から動かない様なパーティーに所属しているなら……」

「妻や恋人と一緒に暮らし、留守番をしてもらうというケースもあるな」

「なるほどー」

「ただ、やはり儲かるパーティーは、ダンジョンに潜っていることが多い」

「するとどうしても、家を留守にしがちだ」

「だよね」

「そして待たせすぎて【別れる】原因になったりする」

「おぅふ」

「だから……家族を持つと同時に、冒険者から足を洗うのが普通だな」

「そもそも妻も、そんな危ない仕事を長い事、夫にしてほしくないだろう」

「なっとく」


 でも……もうかる時はもうかっちゃうからなぁ、冒険者?


「なので冒険者は宿暮らし、家財もほぼ持てないのが普通だ」

「武器と防具、それとアイテムと金……」

「それ以外はとにかく最低限しか持たない」

「とにかく【持てるだけ】が冒険者の基本なのだ」

「だよねぇ」

「でも、【預かり所】みたいなところはないの?」

「あろぞ? だがけっこう高いし──」

「それに冒険者はいつ死ぬか、わからない商売だからな」

「おぉぅ」

「だから預かり所ではなく【質屋】のような店に預ける」

「しちやさん」

「そして預けて金を受け取り、冒険から帰ってきたら、その金で払い戻す」

「お金になるんだ?」

「ああ、そして戻せない者は……死んでいるということだな」

「おぅふ」

「そして一定期間待って戻らないなら、それは【商品】として他の者に売られる」

「せつないなぁ」


 ぼくなんか、おもいでがいっぱいで、捨てられないものもたくさんあるのに……


「だからそのアイテムがあれば、家財も入れ放題なのだがな」

「ですが……そのアイテム、どのくらい物が入るのかしら?」

「あー、まだ実験ちゅうだけど……けっこう入るみたい」

「さすがはステラママだよね♪」


 ホントは……ほぼ【無限】にはいるんだけどねー

 でも、ステラママの名前を出すと、アイナママたちもすぐ納得しちゃう。

 やっぱりステラママって、すごかったんだなぁ


「ええと……あと、入れると重さもなくなっちゃうから?」

「すごく大きな岩とか入れてみたんだ」

「ほう、どうなった?」

「うん、魔法陣を近づけたら、すぅっと入って……」

「半分くらい入れた所で消えちゃった」

「ほう、勇し──いや、知り合いのソレと同じタイプだな」

「さてはステラのやつ、アレを見て影響を受けたか?」

「ソ、ソウナンダー(棒)」


 ち、ちがうタイプとかあるんだ? 収納アイテム。


「出すときも、半分くらいまでは重さがないけど……」

「それ以上出したら急に重くなって……どすんっ! って」

「まぁっ くれぐれも扱いには気をつけてね? クリス」

「ありがとうアイナママ♪ 気をつけるね?」

「はは、さすがはクリス、素直でカワイイやつめ♡」

「かわいいっていわないでよぉ!?」


 ぼく、男のコなのに!?


「ええと、それから入れたものは、時間も止まるみたい」

「だから……はい、これ♪」


 ぼくがとりだしたのは……今朝アイナママが焼いたパン。

 実験で、いくつか小さめのを焼いてもらったんだ♪

 そしてそれは……今焼いたばかりのように、ほかほかと湯気をたてていた。


「ほう、これは便利だな!?」

「だからこれ、お肉やお魚とかを入れておけば、くさったりしないよね?」

「あら…そんなものも、入れられるの?」

「うんっ♪ とりあえず【生き物】じゃなければ、なんでも入るみたい」

「まぁ……」

「だからね? もうお肉やお魚を、塩漬けにしなくてもいいんだ♪」

「なるほど……そうなるか!」

「それに、アイナママがいっぱい作ったお料理とかも……」

「この中にしまっておけばダメにならないから、いつまでも取っておけるよね?」

「え、ええ……そうね」


 もちろんそれは……前世でぼくが勇者だった頃から気づいてたこと。

 けれど──


(あのときは、おせわ係の人がお料理を作ってくれたからなぁ)

(そしてその勇者の魔法を、【冷蔵庫】のかわりに使おうとは思わないよねぇ)


 だからあのころは結局、【異空収納インベントリ】にはぼくの私物しか入れなかった。

 そういう意味では、たいして役にたってなかったともいえる……かも?


「け、けれど……いいのかしら?」

「貴重なマジックアイテムを、その……食材の保管などに使ってしまって」

「もちろんだよっ アイナママ♪」

「前にもいったけど、ぼくがしたいのは冒険じゃなくて……」

「アイナママたち、ぼくの家族を、おてつだいすることだからね♪」

「あぁ……ありがとう、クリス……ちゅっ♡」

「えへへ♡」


 そんなぼくとアイナママのイチャイチャを……


「ぐぬぬ……私もするのだぁぁぁっ んちゅぅぅ♡」

「やぁん♡」


 ルシアママがガマンできるわけがないのでした♡


 ◇◆◆◇


「うんっ だから食材をいっぱいしまえるように……」

「深めなおさらとかが、いっぱいあればいいよね?」

「ああ、そうだな……では私が街で買ってくるとしよう♪」

「あ、それでぼくが運んであげるよ♪」

「ははっ さすがクリスだ! すぐに使いこなすとは」

「ええ……本当にクリスは聡い子ですね」

「えへへ♪」


 いえいえ、もっとアイデアありますよぉ?

 ぼくは家族のしあわせと、おいしいごはんのためなら、手段はえらばないのだー


「それにね? 保存を考えなくていいなら、固い黒パンじゃなくてもいいよね?」

「あっ!?」

「そ、そうね……たしかに」

「なんと……これで毎日、アイナの白パンが食べられるのか!?」

「だね♪ あぁ……ゆめのよう♡(うっとり)」

「もう、大げさですよ♪」


 アイナママのパンは、パン屋さんのよりずっとおいしいもんね♡

 ぼくは街で何度かパンを食べて、つくづく思い知りました!


(だから……)

「それに、ぼくが食材をいつも持ってくことになるわけだから……」

「お外でも、おうちとおなじごはんが食べられるよね?」

「たとえば……ダンジョンの中とか?」

「なるほど!【携帯食】がいらなくなるのか!?」

「だよねー♪」


 そもそも【お弁当】の文化って、前世の地球でもあんまり普及してないんだ。


(果物やパンなんかを持っては行くけれど)

(日本みたいに、調理したおかずとごはんを詰めてもってくのは……)

(世界的にも、珍しい文化なんだって)


 こっちの世界でも、外で食べるのはいわゆる【携帯食】で、

 かたく焼いたパンや干し肉、それに水で薄めたワインとかくらいしかない。


(あとは……行った先で獣が狩れれば、それを食べるけど……)

(とにかくお外でのごはんは、とにかくあじけないからなぁ)


 ちなみに……【エルフはベジタリアン】なんてことはなく~

 ルシアママもお肉は大好き♪

 だから街に出るとおみやげに、たくさんお肉を買ってきてくれる♪

 けど、ふつうの村の人は、そんなにお肉を食べる機会がないから、

 アイナママも『贅沢です』って、いちおう反対してるけど……


(でもお料理をたくさん食べてくれるから、なんだかうれしそうなんだ~♪)


 ともあれ……ぼくはアイナママに、

 【箱のカタチの器にお料理をつめる】という【お弁当スタイル】を提案して……

 そしていよいよ……


(知識チートの時間だぁぁぁぁ!!)


 ばぁぁぁん!!


 ◇◆◆◇


 といわけで……


「クリスと~」

「あ、アイナの?」

「「異世界クッキング~♪」」


「はい、そんなわけで今日はですね……異世界料理の定番!」

「【ハンバーグ】を作っていきます♪」

「く、クリス? 今日はどうしちゃったのかしら……?」


 なんでぼくが【異世界】とか、いっちゃってるかというと~

 まず、ハンバーグは前世のぼくが作れる、数少ないお料理のひとつだから。

 その理由は……前世日本のママ──『母さん』って呼んでたけど?


(そのママに、なんども手伝わされてたからなんだけどね~)


 それに、いちおう聞いてみたの……

 【万物真理ステータス】さんに、ハンバーグの作りかた。

 そしたら……

 フツーにこの世界で手にはいる食材で、作れるレシピを教えてくれたうえに──


 パッ

-------------------------------------

 【ハンバーグ】に関する報告

 出典:万物真理【管理ログ】より


 特記:

 歴代の【召喚勇者】はかなりの確率で【ハンバーグ】を作成しており、

 そのレシピも希少ではあるが残っている模様。

 故に『歴代の勇者由来の異世界レシピ』と申告すれば、

 事情を知りえない家人に、その再現を行っても不自然ではないと考察される。

-------------------------------------


 ……って!


(歴代の召喚勇者っ ハンバーグ好きすぎ!?)

(それから【万物真理ステータス】さんっ 有能すぎぃぃ!?)


 とまぁそんなわけで……ぼくは、

 『ステラママの書庫にレシピがあった』ということにして、

 その再現を、アイナママといっしょにしています♪


「はい、まずはタマネギの皮をむいて……みじん切りにします」

「みじん切りね?」


 トトトトト……


「はやっ!? そ、そしたらそれを、さっと油で炒めます」

「炒めるのね?」


 ジャー


「次にウシさんとブタさんのお肉を同じ量、それと──」

「ブタさんの【背脂】を、そのお肉の【2割】くらいの量、用意します」

「そしてそれをぜんぶ……ナイフで叩いて、荒めのミンチにします」


 トントントン……


 この作業、前世のママによくやらされたんだよねぇ。

 理由は【売ってるひき肉より、お肉の食感が残って美味しいから】。

 でもフツーに疲れるしめんどくさい。


(だから息子である、前世のぼくのお仕事だったんだよ~)

(あ、そういやよく……ギョーザの皮とかも作らされたなぁ)

(今度つくってみよっと♪)


 あぁ……レシピがひろがってゆくぅ♡


「ふう、終わった♪」

「おつかれさま、クリス♪」

「えへへ♪ で、ぜんぶミンチになったらお塩を足して……まぜてよく練ります」


 ねりねり


「全体がピンク色になったら、カチカチパンをすりおろした【パン粉】と……」

「タマゴとコショウを混ぜて、さらにまぜます」

「ま、また混ぜるのね?」


 ねりねり♡


「で【ねばり】が出てきたら~ いったんまぁるくして……」

「それを左右の手で、なんどかキャッチボールします」

「きゃ、きゃっちぼーる?」

「こうやって……手でなんどか受けとめてるうちに、中の空気が抜けるんだ♪」

「なるほど……?」


 ぱんっ♡ ぱんっ♡ ぱんっ♡


「そしたら【だ円】のカタチに薄くして~ まんなかをちょっとだけヘコませます」

「どうしてかしら?」

「焼いてるうちにまわりが縮んできて、それでちょうど平らになるんだって♪」

「なるほど……さすがは異世界のお料理ね」


 ぷにぷに♪


「そしたらそれを、溶かした背脂をひいたお鍋で焼きまーす」

「焼くのね? ……あら、いい匂い♡」


 ジュー♪


「裏がえして、うすめたワインを入れて……フタをして蒸し焼きにしまーす」

「ん~♪ いい匂いね♡」

「そうだね♪ で、ワインがなくなったらできあがりでーす♪」

「さいごにいつもママがお肉の料理につかってるソースをかけて……完成♪」


 ちなみに【ガストリックソース】っていって……

 ハチミツとお酢、それとワインをトロみがつくまで煮詰めたソースなんだ♪


 ◇◆◆◇


「では実食でーす。白パン&赤ワインと一緒にどぉぞ♪」

「う、うむ……ではいただこう、あむ♪」


 アイナママとレイナちゃんも、おっかなびっくりおくちに運んでる。

 どきどき♡


「こ、これはっ!?」

「まぁ……」

「なにこれぇぇ!?」

「んふふ♪ どぉですか~?」


 ガタッ


「うまいっ うますぎる!?」

「え、ええ……とても香ばしくて柔らかく、肉汁があふれて……」

「お、おいしいっ! こんなお肉……はじめてぇ!?」

「えへへ、よろこんでもらえて、うれしい♪」

「じゃあぼくも……はむっ♪ んー♡」


 あぁ……おくちに広がるジューシな肉汁♡

 たまんなーい♡


(こっちのお肉はお高いのに、スジが多くてかたいからなぁ)


 だけどハンバーグにしちゃえば、すっごく食べやすくなっちゃう♪

 しかもブタさんの背脂で、めっちゃジューシーになるんだ♡


(ちなみに同じミンチ肉でギョーザとか作ると、とってもおいしいですよぉ?)


 そんなぼくの【知識チート】のお料理は、大成功♪


(でもなにより、みんなのよろこぶお顔が……)

(いちばんうれしいよねぇ♪ はむ♡)

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