第33話 アイナママは、ぼくの先生なんだ♪

「え、ええと……それって──」

「クリス……今からママが話す事は、ぜったいに誰にもナイショ」

「誓えるかしら?」

「う、うん……だいじょうぶ! 神さまに……えと、ミヤビさまの名にかけて」

「あら? クリスはミヤビ様の信仰なの?」

「え? あー、最近なんというか……思うところがあって?」

「そう? ミヤビ様は女性冒険者に素晴らしい加護を下さるから……」

「ビキニアーマーの加護、クリスにも降りると良いわね?」

「ぼ、ぼく男のコだからいりませんのだ」

「というか、ミヤビさまのお話はいいから、ね?」

「あら、そうだったわね……こほん」

「あれは、その……」

「わたしが、レイナのお父様に【手ほどき】をして頂いた翌日のことだったの」


 アイナママのお顔が、きりっとまじめな感じになる。

 でも、ちょっとお顔が赤いけど?


「あの時はね……とても重大な討伐依頼を受けていてね?」

「命がけの日が何日も続いて……そのぉ」

「ママはね? レイナのお父様を……癒してあげたかったの、身も心も」

「うん……恋人、だったんだよね?」

「ええ、そうよ」

「とても……好きだったわ」


 そんなアイナママは、今は亡き勇者を想ってるみたいで……

 うれしそうな、それでいて悲しそうな表情をしたんだ。


「そうしてママが【手ほどき】を頂いて……その次の朝にね」

「増えていたの、【MP】マジックポイントが」

「その時の依頼はとても資金が豊富で、マジックアイテムもたくさんあってね」

「だからその時も、ギルドにあったようなアイテムを使ったのよ」

「そうなんだ」


 そりゃ、魔王討伐だからね~

 お金もマジックアイテムも使い放題だったなぁ


「そしてその結果、MPが1割近く増えていたわ」

「いちわり? すごい!」

「ええ、神官のMP量は、冒険者パーティーの命綱ですからね」

「こまめにステータスを調べるクセが付いていたの」

「なるほどー」

「とはいえ、レベルアップした形跡はないし、思い当たる事といえば……」

「ええと……てほどき?」

「ええ……それしか考えられないわね」

「けれど、あの時はもうそんなことを考える余裕はもう……なくてね」

「………………」

「それで、ママがMPについて思い出したのは……」

「その依頼が終わってから、しばらく後のこと」

「ママがとても尊敬している女性の司祭様にね、相談してみたの」

「しさいさま」

「ええ、ママの育ての親のような方よ♪」

「そして、その方がおっしゃるには……」

「互いに魔力を持つ男女がね? その、愛し合って……」

「き、きのう……クリスとしたようなことをするとね?」

「魔力の多い者に……少ない者の魔力が、近づこうとするらしいの」

「まりょくが……近づく?」

「ええ、司祭様がおっしゃるには……そうとしか考えられない、って」

「ただし、それにはいくつか条件があるの」

「じょうけん?」

「ひとつは、互いに魔力を持ち、そして普段から魔法を使っている者同士なこと」

「ふだんからまほうを……」

「けれど男性で魔法が使える人は、とても少ないわ」

「だから、ママやクリスが体験したようなことは、めったに起こらないの」

「なるほど……じゃあ」

「ええ……レイナのお父様はね、とてもMPが多い人だったわ」

「それこそ、ママとは比べられないくらい」

「そうなんだ」


 って……ママよりMPが多い男の人なんて……

 【召喚勇者】しかいないよね?

 まだ聞くときじゃないみたいだから、聞かないけど?


「そしてもうひとつが……その男女が【互いに愛し合っていること】」

「あ、あいしあう」

「ええ、その司祭様──というか、神殿の偉い人たちは……」

「それを何度か、試してみたことがあるらしいの」

「た、ためしたんだ」

「けれど……どのペアも失敗ばかり」

「しっぱい……」

「そんな中、とあるペアがね? そうやって何度か試すうちに……」

「お互いの事を……すごく好きになっちゃったの」

「ヒューヒューだね」

「そうしたら……MPが増えたそうなの」

「この場合は、MPが少なかった男性が、女性のMPに近づいていったそうよ」

「わぁお」

「その【MPの上昇】は、その後もしばらく続いてね?」

「ただ、近づくにつれ、増える量も少なくなって……」

「さほど違いがなくなってきた頃、それも止まったそうよ」

「そうなんだ……」


 な、なるほど……

 そういうことなら、ぼくのMPが増えるのも、ありえるのかな?

 というか、ぼくとアイナママは相思相愛だし……ね♡


「けれど……この件は、広められることがなかったの」

「え? そうなの……?」

「ええ、だって……考えてみて?」

「まず、ママの場合は限りなく例外」

「だって、女性よりMPが多い男性なんて、ほぼいないもの」

「あ、そっか……」


 それこそ、召喚勇者くらいしかいないよねぇ。


「そうなると、男性のMPを上げることを考えるけれど……」

「そうだよね?」

「昔ならともかくね……今はそんなに意味がなくなってしまったのよ」

「え? どうして──あ」

「そう、ビキニアーマーがあるから」

「男性騎士の【盾役】クラスの防御力があるとされる、ビキニアーマーのほうが」

「同じ魔法使いなら、女性の方がずっと強くなっちゃったのよ」

「そ、そっか……」

「それにMPはあっても【魔法スキル】は男性には覚えにくいみたいなの」

「だから下手に広めて混乱を起こすよりは……と、神殿は考えたのね」

「な、なるほど……」


 それこそ昔なら……魔法を使える男性冒険者は、すごく欲しかったと思う。

 けど今は、女性冒険者にビキニアーマーを装備させたほうがカンタンだし?


(となると……レニーさんのパーティーの、魔法使いのおじいさん)

(レベル30超えのすごい魔法使いだけど……)

(今だとビキニアーマーを装備できないぶん、女性にくらべて不利なんだ)

(……ん?)


 けど、今でも男性冒険者に、まったく意味がないわけじゃない。

 その人が【魔法は使えるけど非力】っていう男性なら……すごくありがたい。


(それって、ぼくのことだけどね~)


 そう、ぼくの欠点は、レベルが高すぎてなかなかレベルアップしないこと。

 なのに、なぜかMPが少なくて、ほとんど魔法を使えないこと。


(だからMPさえ増えれば……勇者魔法がつかえる!)

(そして勇者魔法さえつかえれば!?)


「アイナママ! ぼく……MPを増やしたい!」

「え? ええ……そうよね」

「この前のイノシシも、剣に風精霊をまとわせて切れ味を良くしたんだけどね?」

「まぁ……そうだったのね」

「あれ、けっこうMPを使うから、いちどしか使えないんだ」

「そうなの?」

「だけど……今ならたぶん2回使ってもだいじょうぶ!」

「そしてもっとMPが増えれば、村の人やアイナママたち家族を……」

「ボクが守ることができるかも!」

「まぁ……クリス」

「だからアイナママ……協力して?」

「ぼくのMPを増やすためにも、もっと【てほどき】をしてほしいんだ!」

「そ、それは、その……」


 とっても恥ずかしそうに、目をそらすアイナママ。

 真っ赤になってもじもじとしてて…

 とってもかわいい♡

 というか……ここで引いたら男のコじゃないよね?


「ねぇ……アイナママ? そもそも【てほどき】って、いちどだけなの?」

「えっ?」

「だったらぼく……きのうのは、あんまりうれしくて」

「よくおぼえてないんだ……よね?」

「そ、そうなの……?」

「だって~ あんなとつぜんだったし?」

「それに、アイナママがぼくのはじめてのお相手だって思ったら……」

「嬉しくって、つい夢中になっちゃって……えへへ♡」

「く、クリスったら……(きゅん♡)」

「それにぼく……やっぱりぼくの先生は、アイナママがいいんだ♡」

「クリス……♡」


 アイナママの目が、うっとりとうるんでる。

 もちろんぼくの言ったことは、ぜんぶホントだし!


「その……いいんですか? ママで?」

「もちろん!」

「だって、ぼくがいちばんステキだと思う人は……アイナママだから」

「ほ、ほんとうに?」

「ほんとだよ!」

「……アマーリエさんや、レニーさんよりも?」

「も、もちろん!」

「今……一瞬迷いませんでしたか?」

「気のせいだよぉ!?」

「ほんとうに……?」

「も、もしかしたら……ちょっとだけ?」

「もう……クリスったら♡」

「えへへ♡」

「こんな年増がいいだなんて……♡」

「クリスはほんとうに困った子ですね♪」

「えー」

「では、クリスが年増のわたしに飽きて」

「もっと若くて可愛いお嫁さんが欲しくなるまで……」

「ママが【レッスン】してあげます♡」

「やったぁ♪」


 アイナママに飽きるなんて、一生ないと思うけどね♪


「そのかわり!」

「はひっ」

「このことは……誰にもナイショ、ですからね?」

「わかりました!」

「それから……レッスンは夜、レイナが寝た後です」

「ですよねー」

「あと、お手伝いにお勉強、そして剣の練習も忘れないこと」

「も、もちろんです!」

「あと……」

「その日はママにいっぱい甘えること♡」

「はぁい♡」


 そういって……両手をひろげるアイナママに、ぼくは抱きついた♪

 そのままぎゅぅ~って♡ 抱きしめあって──


 ガチャ!


「ただいま~ ああぁっ!?」


「またふたりだけでお茶飲んでる!?」

「も、もちろんレイナのお茶もあるわよぉ?」

「ぼぼ、ぼくのお菓子もあげるよぉ?」

「そ~お? えへへ、いただきま~す♪」

(……ほっ)

(すごい勢いで、自分の席にもどったぼくをほめてほしい)

(……って、よく考えたらアイナママのハグなんて、いつもの事だった!?)


 ともあれ、

 ぼくとアイナママの【てほどき】あらため【レッスン】は……

 こうして始まったのでした♡


 ◇◆◆◇


 同時刻──冒険者ギルド


「はぁ? 特務依頼とは穏やかじゃないね……アマーリエ?」

「ええ……ですが、その内容をお聞きになれば……」

「必ずお受け頂けると信じております♪ レニーさん」

「どうだかね。ま、聞くだけは聞いてやるさ」

「では改めて……その依頼内容は」

「【闇ギルド】への牽制と、武力的敵対です」


 ガタっ


「おっと……急用を思い出したんで、あたしはコレで──」

「ちょっ!? せめて最後まで聞いてくださいよぉ!?」

「ちっ……よりにもよって、闇ギルドとはね」

「まったく面倒事に巻き込みやがって……」

「し、仕方ないじゃないですか!?」

「それこそアイナ様とクリスくんに、懸賞がかかってるんですから!」

「……なんだって?」

「ええ、闇ギルド──というか……」

「それこそ【冒険者くずれ】達の互助会みたいな組織ですが」

「なんでも太い筋から多大な懸賞金がかけられた……と」

「ちっ……どうせどこかの大商家のヒヒオヤジか、クソ貴族だろ?」

「そのあたりは現在調査中ですが……おそらく」

「しかも条件は【傷つけずに捕らえよ】ですから、お察しですね」

「ちっ 救国の英雄の聖女様を愛人にしたいだぁ? 狂ってるとしか思えないね」

「ええ、ですが……約10年ぶりに街にいらっしゃるようになられた聖女様が…」

「ビキニアーマー姿に魔が差した…ってかい? 判りたくもないね!」

「もちろん相手は聖女様、道義的にもそんな事は許されないんですが……」

「もしも拐われた挙げ句、どこかに隠されてしまっては……」

「護衛は……付けてるんだろうね?」

「ええ、街の中はもちろん村との道中も、ギルドの腕利き諜報部員が」


 ガタっ


「諜報部員? それこそあたしらが護衛を──」

「アイナ様がいらっしゃる限り、人族相手なら負けはありませんよ」

「それに彼らには【転移】のマジックアイテムを持たせてありますから」

「なるほど、いざとなりゃそれで逃がすってワケだね」

「そしてアイナ様の村にも、すでに10年以上前から……」

「ギルドの息のかかった者が、何人か住んでますからね」

「こちらからも、定期的に連絡が入るようになっておりますので♪」

「なんとまぁ…… じゃあ、それであたしらに──」

「ええ、闇ギルドにそそのかされた連中を、叩きのめしてほしいんです」

「もちろん派手にやっていただいて構いません、むしろ──」

「そんな連中への、見せしめになる……か」

「さすがはレニーさん♪ 」

「一応聞いとくが、むこうが抜いてきたら……?」

「ええ、自衛のための【返り討ち】は、冒険者の権利ですから♪」

「尋問なども不要です。どうせ…闇ギルド経由なのは明白ですから」

「じゃあ遠慮なく殺らせてもらうよ」

「ええ、所詮【冒険者くずれ】、生きているだけでギルドの迷惑です♪」

「けどいいのかい? 貴族や大商人だかに、ケンカを売っちまって」

「いいもなにも、アイナ様やクリスくんになにかある方が──」

「その通りだ、聞くだけヤボだったね」

「ええ、アイナ様のご無事には変えられませんから」


 ギリっ…


「そしてクリスくんに手を出そうだなんて……」

「ああ……死に値するね」

「いえ、死ぬよりも辛い責め苦を味あわせるべきかと……」

「アマーリエ……さすがだね」

「いえいえ、レニーさんには敵いません♪」

「ふふふ……」

「んふふ……」

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