第2話

 雨が降ってきた。窓越しにクラスメイト達が見える。

 今まさに同窓会場で話題となっている2人の内の一人、渡辺加代子が店の外で店内を窓越しに眺めながら戸惑っていた。

 どうしよう……来てみたもののやっぱり入れないな……

 そう思いつつ持ってきた傘をさした。

 招待状が届いてから随分悩んだ。高校生時代は目立たず影の薄い存在でクラスメイトから話しかけられたりすることもなく、3年間を過ごした。

 3年生になったときクラス替えかあり今、同窓会場にいるクラスメイト達と過ごしたのは実質1年間だ。

 中には1年生と2年生の時に同じクラスのメンバーもいるが。

 どうせ皆覚えていないだろうし……気まずい……

 そう思いつつも今日この同窓会に来たのは理由がある。

 加代子は現在大手食品会社の生産工場で働いている。

 事務職で無く現場作業を選んだのは、やはり他人とのコミュニケーションが苦手でライン作業を一人黙々と仕事をする方が向いていると思ったからだ。

 しかし職場でも他人と関わることを避け続けた結果孤立し、社内でも浮いた存在になってしまった。

 仕事自体はそつなくこなしているが、周りが加代子に積極的に話しかけることは無く昼食も一人で食べる毎日だ。

 別にこのままでも良いのだがせめてプライベート位普通に話せる友人が欲しかった。

 高校時代の同級生に仲の良かった者はいないが、この同窓会で少しでもかつてのクラスメイトと仲良くなれたらとの思いがあった。その為、参加を決意し返送葉書を送った。

 しかし、いざ会場に来てみてもやはり入店するのを躊躇ってしまう。

 もう会が始まって1時間は経つであろう。



 それにしても、

 入口のドアの反対側に立つ男が先程から気になる。

 傘で顔は見えないがかなり長身の男だ。スーツ姿でサラリーマン風である。

 その男も窓越しに店内の様子を覗っているのが判った。

 本日この同窓会が行われている店は相川高校同窓会貸し切りと言う訳ではない。当然他の団体客もいるはずだ。

 しかし、その男の視線の先には加代子が覗っている相川高校同窓会のメンバーがあるように思える。

 ひょっとしたら、彼もクラスメイトかも……

 加代子は思った。

 もしそうなら彼に声を掛けて一緒に入店して貰えば幾分気が楽だ。

 しかし男は様子を覗ったまま一向に入店する気配はない。


 そのまま10分程経過した時、ようやく傘の位置が変わり男の顔を覗うことが出来た。

 知らない男だ。

 勿論クラスメイト全員の顔を覚えているわけではない。

 しかし、1年間同じ教室で学んだ仲であれば多少なりとも見覚えがあるだろう。

 同窓会は午後7時から2時間の予定であったはずだ。

 もう半分以上経過してしまっている。

 やっぱり無理だな、このまま帰ろうかな……

 加代子の気持は撤退の方向に傾いていった。

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