第27話
「お邪魔しまーす」
「…はぁ」
結局。
押しに弱い俺は、真山を家の中へ入れてしまった。
真山は俺の自宅にある異世界の入り口を見るまでは絶対に帰らないと行って聞かなかった。
俺は自分から言い出した手前、今更全部嘘でしたともいえず、結局真山を家にあげてしまった。
「わぁ…外見もそうでしたけど…ずいぶん古風な家なんですね…」
古い内装を見た真山がそんなことを言う。
「ご両親はどうされたんですか?」
「あー、親ならいないぞ。10年以上も前に死んでる」
俺は真山に、幼い頃に両親を亡くして、遺産とこの屋敷を継いだことを話した。
「あ…その、ごめんなさい先輩。私、すごく不躾でした」
「いーよ別に。それより、ほら、異世界の入り口を見たいんだろ?」
「はい!!」
途端に明るい表情になる真山。
早く見たくてたまらないと言った感じだ。
「お前すごいな」
俺は改めてそう言った。
「え、なんでですか?」
「いや、だって普通、家に異世界への入り口があるとか言っても信じないだろ」
「あー。そゆことですか」
真山がふむふむと頷いた。
「実は私、こう見えて結構サブカルに詳しいんですよ?」
「えっ、そうなのか?」
意外だった。
真山は、その外見と見に纏う雰囲気から、どちらかというと俺のような日陰者とは正反対にいる人間かと思っていたのだ。
いやまぁ、必ずしもサブカルに詳しいから日陰者、と言うことではないのだが。
「漫画とかアニメとか大好きですし、たまにですけどラノベとかネット小説とかも読んだりします」
「へぇ」
「ほら、ネット小説って今、異世界ものが主流じゃないですか?だから、先輩の話もすんなり理解できたというか」
「なるほどな」
ようやく納得が行った。
異世界やモンスターやステータスやスキルってのは、真山にとっては目新しい概念でもなかったわけだ。
「それより先輩!早く見せてくださいよ異世界の入り口!」
「はいはい」
俺は焦る真山をダイニングへと連れていく。
初めて発見した時のように、テーブルをどかして絨毯を捲った。
その下に隠された、異世界への入り口が現れる。
「この下だ」
言いながら、俺は鉄の蓋を持ち上げて異世界への入り口を開いた。
「す、すごい…」
真山がごくりと唾を飲んだ。
大きく見開かれた目で、地下道へと続く階段を見つめている。
「転ばないように気をつけろ」
俺は真山を先導して、地下通路へと降りた。
「この先に異世界がある」
「…っ」
真山がきゅっと俺の袖を握ってくる。
未知のことで、少し不安なのだろう。
「大丈夫か?」
「は、はい…行きましょう」
俺が尋ねると、なんとか頷いていた。
俺は彼女のペースに合わせながら、地下通路を歩いていく。
やがて、俺たちの目の前に、見渡す限りの草原が現れた。
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