ラスティルとの相談2

「トーク閣下は突然心変わりなさいませんでしたか? 十中八九は私の文を受け取ったのが理由です。内容は……言えないのですが」


「下級官吏の文でというのは信じられぬが……、確かに突然であった。つい先日まで皆を励まし大宰相の務めを果たす強い意思を見せておられたのに、ある日病を得たと知らされそして帰参だ」


「ラスティルさんも病と。それは良かった。―――あー、一つ情報の追加がありました。オレステとウバルト両方が兵を集めているそうです。しかも想定より多いとか。かなり厳しい戦いが起こるんじゃないでしょうか。……それでも、残って一戦する気ですか? これはアイラ様もご存知ですから、良ければ後でお聞きください」


「逃げぬと言うに。……まぁ、不利な戦いを予想していても、考えていた以上となるのは困るが。しかしそう言うお主がまだ逃げていない理由があるのだろう。話を勿体ぶるのは悪い癖だぞ」


「はい、ごめんなさい。その理由は明日する予定の話し合いにありまして。

 私はトーク閣下へ、今後私にトーク領における互角以上の決定権を内々で認めると約束してくだされば、これから起こるであろう戦において勝ち目を作れると提案します。拒否されたのなら私は去ります。ほぼ確実に負けますから」


「は? 待て。―――まず、その勝ち目を作れるというのは……本当なのか?」


「はい。ああ、私だけの考えではありませんよ。賢い方にも保証を頂いています」


「賢い……? リディア・バルカ殿か! それに……もしや、アイラ殿もお主に同調しておるのか?!」


 当然バレるよね。他所へ持って行かれては困る情報だから知られたくはなかった。

 しかし私一人で考え準備しましたーとなれば、頭がおかしいほど自意識過剰な下級官吏の妄言にしか思えないだろう。

 それじゃあ話が続かないだろうしなぁ。説得は実に難しい。


「誰が協力してくれているかはお答えしません。先方にも迷惑が掛かりますから。ま、嘘だという可能性も在りますね」


「ぬぅ。お主意地が悪くはないか? ……いや当然の配慮か。それでは謀反だ。拙者は立場的にはダンと協力者を拘束し、カルマ殿の下へ連れて行かなければならん……さて、どうしたものか」


 業とらしく考えるポーズを取っておられる。冗談半分かもしれないが、深刻な冗談だ。わたしゃ真面目に答えさせて頂きます。


「でしょうね。でもお考えください。まずトーク閣下は詰んでいます。そして下級官吏である私が希望を作れるとしたら、閣下にとって望外の幸運と言うべきでしょう? 私が決定権を欲しいのは、今後トーク閣下が決定権を持っていると生き残るのが難しく思えたからです。

 今回の出来事で分かったと思いますが、閣下は誇りだの何だのに左右され前を見過ぎて足元を見るのに欠ける方。乱世の主君としては足りません。意地を張ったあの人をこちらに帰らせるのは非常に大変でした。今後もこの調子で決められていてはとても面倒を見切れないのです」


 あんな予言書二度と書けん。能力的にもまず無理と思うが、何より二度大予言をカマしたら言い訳が効かん。


「それは……お主のような人物から見ればそうであろう。しかしだな? 拙者はカルマ殿の判断がそれ程悪い物だったとは思えぬ。誇りに左右されるとお前は言ったが、人として当然の範囲だと今も思っている」


「あー……そうですね。そうなのでしょう。言いすぎました。ですが、結論は変わりません。私は彼女よりも乱世において信頼出来る人間を知っていますので、その方に此処の大方針を決めて欲しいんですよ。私は……まぁ添え物ですね」


 なので、私の全ての網を搔い潜って真田の所や他所へ行った場合は、私よりリディアを大きく伝えて欲しい所。


「リディア殿を言っているのなら―――経験を積めば確かにそうなるかもしれん。しかし、忠誠心は無いのかダン」


「はぁ……ついでですから言っておきます。そういう見た目の正しさを守る気はありません。より重要な物があると考えています。

 私としては、トーク閣下にランドで死んでもらっても特に問題はありませんでした。別の諸侯の下で下級官吏として働くだけですから。

 しかし自業自得の面もありますが、とある方が閣下達の命を守りたいと言ったから私は山ほどの面倒を背負っている。それでもラスティルさんは非難なさるのですか? 今まで私は与えられた俸給以上にトーク閣下へ益を与えて来ました。だというのにもっと与えろと?」


 と、いかん。

 少し興奮してしまった。

 落ち着け……。そもそもカルマに益を与えてきたのは自分の為。どんな要求をされようが、損より益が勝れば良い。他は雑念だ。


「そうは言わん。下級官吏ならば、主が滅びそうな時に逃げだすのも当然。謀反などしなければ、な。それで結局拙者にどうしろと言っているのだ? 謀反に協力しろとでも?」


「少し違います。分かりやすく極端に言えば私の配下になって欲しいのです。誇りや義は保証しませんが、命を守る事だけならば何処に居るよりもマシだと思います。

 それが無理ならば明日の朝には客将を辞めて出て行って頂きたい。私はトーク閣下が受け入れてくれれば五分五分くらいにはなると考えていますが、全てを振り絞っての戦いとなります。全てを見た後で貴方に他の所へ行かれて困るのは分かって頂けるでしょう」


「嫌だと言ったら?」


「トーク閣下には話し合いの場所にラスティルさんを参加させないようにお願いしてあります。もし彼女が私を受け入れたのならば無理にでも出て頂きます。トーク閣下が私の提案を拒否なさったのなら、お好きなように。まぁ、私はお願いをしているだけです。強制は不可能ですし」


 そしてこれが私に出来る最後の親切だ。

 此処を去るのならば、今後は他の人間と変わらない対応をする。


「大きく出おったな。とりあえず明日になれば分かる事の真偽は置いておこう。しかし、命だけを守るのならマシだと言ったな? 拙者に武を、史に名を遺すという志を捨てろと言っているのか? それはもうラスティル・ドレイクとは言えぬ」


「違います。ラスティルさんはこれからの世の中を甘く見ています。ビビアナ、マリオ、イルヘルミ、他にも居ますし、更に真田閣下みたいな立身出世を夢見る者までいる。酷い戦乱が起こりますよ。名のある者も殆どは一族ごと死ぬでしょう。その中で生き残るだけでも大量の武勲が必要となり、自然と史に名が遺るのは間違いありません。

 私の配下になるというのは、従えば命を失うと感じた時以外は指示を聞いて欲しいという意味です。ま、殆どは私ではなくもっと賢い方のですから安心して下さい。ただ、ラスティルさんのような方にとっては我慢するのが難しい方策も取ります。それでも私の考えでは真田陣営よりも人々の幸せに寄与しますし、命の危険も少ないでしょう。歴史に名を遺す機会を得るにはまず死なない事ではありませんか?」


「大した自信だ。しかし事の真偽が明らかになる前に臣下になるなどと言える訳があるまい? 下級官吏の臣下など聞いた事が無い」


 あ、それ私も同意見。リディアもそう言ってたね。

 その癖自分のもっともな発言を投げ捨てたあのお嬢さんは、本当どうなってんの?

 と、今関係無い事を考えては駄目だ。


「ごもっともです。そう、ですね。ラスティルさん、少なくともこれから起こるであろう戦いまでは此処を離れる気がないんですよね?」


「うむ」


「では、賭けをして頂けませんか? 明日の話し合いが終わるまでは中立としてどちらにも組まないでください。そしてトーク閣下が私を案を受け入れれば私の配下に、却下すれば、今私が持っている有り金全てをお渡しします」


 部屋の片隅に置いていた袋を机の上……上……片手じゃ持てない。

 ふぅ……。で、広げる。うん。銀が眩しい。


「今まで拙者を配下にしたいと言って出された中では、最も少ない対価だぞそれは」


 不満そうな言葉とは裏腹に随分楽しそうだ。

 ……良い手ごたえ。賭け事が好きなのかな?


「勿論足りないのは承知しています。ただ説得力に欠けるのを承知で私の目線で言いますと、私が明日影響力を得るのも、貴方を配下にするのも、ラスティルさんの命を守る事に繋がるのです。それに付け加えられる物はもう……美味しい料理位しかありません。

 ああ、もう一つありました。私が勝った場合、何でしたらトーク閣下の配下になるのも良いです。兎に角トークが滅ぶなりするまで、此処に居てくだされば。滅ぶ時には……ついてきて頂ければ嬉しいですね」


「……お主、変わったな。初めて会った時は何かに怯え、非常に弱弱しかったというのに今は自信を感じる」


「今のトーク閣下とラスティルさんがおこなおうとしている戦いが、余りにはっきりと絶望的なものですから……。マシに出来るのが私だけであろうという自信はあります。根拠は話せませんが」


 考え付く限りは言った。最後は気合で泣き落としという感じで情けないが、出来る事は全部するしかない。

 緊張からだろう。非常に喉が渇く。

 この返答次第では……嫌な事になる。


「……分かった。カルマ殿がそんな横紙破りを許すほどお主を認めれば、拙者の槍を捧げよう。其処までの人物なら先が見たい。この状況で一官吏が勝ち目を作るというのなら、その方策も非常に気になる」


 ―――ふぅう。

 溜息が、押えられない。

 良かった。これで、満足しよう。今のところは……。


「……そう、ですか。有難うございます。私が人物というよりは、状況が偶々そうなったというのが正しいのですが。何にせよ頑張ります」


 獣人と隣接する辺境を職場に選んだのは、こういった状況を推測してでもある。

 だから偶然とは言えない。教える意味が無いから話さないけども。


「何より下級官吏の俸禄でそれ程溜め込むような吝嗇けちなのに、全てを拙者につぎ込むという心意気が気に入った。以前の旅費の分もあるしな。考えようによっては領主が出す十倍の額よりも価値があろう」


「そう考えられるのは、ラスティルさんが優しいからですよ……。それと私はケチなのではありません。貧乏性なだけです」


「ふはっははっ。その違い拙者には分からぬぞ。さて、賭けはなった。是非面白い結果にして貰いたいなダン。それで、結局リディア殿とアイラ殿はお主の配下なのか? 非常に気になるぞ」


「あの、冷静に考えて下さい。二人が私の配下になるなんて奇妙極まりないと思いませんか?」


「おお、焦らしおる。しかし拙者が思うにせめてその二人の臣下というくらいにしっかりした協力無しであれば、カルマ殿は一旦受け入れ窮地を脱した後、お前を追い出すだけではないか」


 ……ごもっともです。自分で追い出されないよう色々考えてたのに、下手に秘密を作って突っ込み所満載になってしまった。

 加えて、

「話を纏めてくださった後で申し訳ないのですが……、普通に考えて明日すぐトーク閣下が結論を出すとは限らないんですよね。言われた通り戦いに勝った後、数か月後に追い出そうとしたりとかも。

 なので私の配下になってくださる詳しい条件を決めて頂けません?」


 わ。顔にデカデカ呆れたと書かれていく。


「お前……締まらん奴だな。それとも拙者の事だから先に承諾させておけば、甘い条件にするだろうと高をくくっているのか?」


「え。多分、そーいう思惑は無くて、単純に話が前後してしまっただけだと……どうでしょう。此処でいう事自体、甘えてる気もしますし……」


「……どうも世の中の一部の悪党は、拙者を都合の良い奴扱いするのだ。どうせ言葉ほど厳しい真似は出来まいとな。思い当たる所もある。が、そのような真似をした奴の中には、腹を貫かれ苦しみぬいて死んだ奴も居る。とだけは言っておこう」


 ん、ん、んー。精々『ケツから手を突っ込んで奥歯ガタガタ言わせたるぞ』くらいが限界の界隈で育った者としては、ほんのちょっとだけ心臓がキュッキュする。

 脅しじゃないだろうし。

 とりあえず両手を上げ……ちゃあかん。これは私の地元の仕草だ。真田も同じ真似をするかもしれない。まだこういう癖残ってるのか……中々消えんな。


「既に散々甘えた過去を持つ身としては、申し訳ないとしか。言えるのは、後で不満を感じられるのが一番困るという事です。なので、掛け値なしに良いように条件を決めて頂けますようお願いします」


「散々甘えた……。お主、もしかして人に借りを作るのを尋常ではなく嫌いなのか?」


「え? その、成人した者として、自分が責任を持てる以上はしないように……して行きたいとは思いますが」


 ……我ながらよく言った。この後の事があるってのに。私二枚舌の資質があるのかもしれん。


「……どうにも、騙されている気もする。が、お前の勝ちだ。大言壮語の内、どれだけが本当なのか気になって仕方がない。

 明日、カルマ殿の前で大言を吐き、それでも無事解放されたのなら十分だ。実際よほどの功でも無ければ牢屋行きであろうしな。

 拙者の前にその協力してくれる方とやらを連れて来い。その者が、真にカルマ殿より頼りになりそうなら臣下となろう。ああ、お前を追い出そうと拙者はカルマ殿と戦う。その場合は生き残れば。の話となるな。

 ただ、此処の領地でカルマ殿より頼りになりそうだと拙者が納得出来るのは、ただ一人だぞ」


「―――私の都合に良く決めてくださり、感謝します。協力してくださっている方が、ラスティルさんの考える方である事を祈りつつ今日は寝るとしますよ。

 ラスティルさん、今日は最後まで耳を傾けて下さり感謝します。夜道どうかお気をつけてお帰り下さい」


 門の所まで見送り、深呼吸。


 上手く行けばラスティルさんも配下になる、か。

 上手く行くかは……微妙だけども。

 カルマがどの程度客観的に物事を見る人物かにかかっている。しかし、以前送られて来た文は感情的だった。

 私に命令される立場になるなんて常識に無い屈辱を感じるのは間違いあるまい。

 さて、考えるより今は急ごう。待たせ過ぎると悪い。


 目立たない服に着替え、家の外へ。出来るだけ人通りの多い所を通り、オウランさんの商人と配下たちが待つ宿に。

 入口に……うん。お願いしてた通り見える場所に居るな。よし。気づいてくれた。


 気を付けてゆっくりと歩き、事前に目星を付けて置いた誰も住んでない家の塀の内側へ。誰も家の中には―――居ないな。と、足音だ。

 念のため塀の影に。明かりを持ってないので顔は判別出来ないが、尻尾がある。ならば大丈夫。


「お待たせしてすみません。交渉結果は悪くありませんでした。準備して頂いていた槍の始末はしなくても大丈夫そうです。使いそうな道まで調べて頂いたのにすみません」


「では、こちらに来させていた手練れたちはもう要らないという事で?」


「あー……いえ。留まっても大丈夫ならもう少し待ってくれませんか。まず無いと思いますが、こちらの長が私を受け入れた上での戦いの最中逃げる可能性もありますから。

 後は長が私を受け入れずに戦いが起きて、それでも槍が生き延びた時。私の所ではなく東へ向かうようなら始末を頼みたいのです。可能でしょうか」


「可能です。ただ……これは、元から槍を始末するとなれば言おうと思っていたのですが。槍は……親しい方なのですよね? 我らの所にも槍が良い方だという話と、貴方の紹介で来たという話は届いています」


「……はい。その通りです。それが?」


「ならば始末ではなく、抵抗出来なくした上で我らの土地の遠く離れた所に移住を願うのはどうでしょう。勿論、手加減しきれるか分かりませんが。我らの土地なら案内無しに此処に住む人間が帰れないほど遠い場所もあります。誰かと会わせたくないだけなら、この方が貴方様の意志に沿うかと思ったのです」


 ……。強い誘惑だ。確かに。生きていてくれてるなら嬉しい。彼女なら全くの異郷でもやがて受け入れられ、幸せになれるかもしれない。

 しかし、

「お言葉は……心より有難く思います。でも止めておきましょう。槍は手練れで、しかも旅慣れている。ただでさえ用心深く難しい相手です。手加減しようとすれば皆さんの被害がどうなるか」


「我らの事は考えないでください。副長より厳しく言われております。貴方の意志に出来る限り沿うように。何を使ってでも、と。それだけの恩があると」


「んー……。すみません。少々信じられません。貴方を始めこういった事を出来る方が長の方にとってどれだけ貴重かは、私如きでは分かると言うのも失礼でしょう。そのような方々を使い潰すのは……色んな意味で良くありません。私の感情的にも辛いですしね。

 それに……貴方は、世話が必要になった親の世話をした事が有りますか?」


「は? あ、いや。在りません。多分、子供の頃親が祖父の世話はしていたのでしょうが、覚えていません」


「んー、となると伝わるか自信が無いのですが、他人の尻を拭くのは嫌なものです。それが自分にとって恩がある大切な親であろうと、排泄された物の世話をするとなればせめて本人の『全力の協力』は当然である。と感じますよ。実際道理で言えば協力すべきだと私は思います。

 私は既に皆様に……益はあったと言い訳したくはありますが、私の尻にべったりこびり付いた失敗を拭うようにお願いしました。更に拭い方まで難しい方法をお願いして皆さまを余計に失うような事が有れば。長の方への不義理が言語道断となるように感じます。下手をすると貴方方の不満が長へ向く程に、です。

 なので、槍を始末する時は出来る限り多人数で不意を打ち。最初の一撃から畳みかけて始末を。言葉は……要りません。万が一の場合色々推測されるだけ損でしょう」


「―――承知、しました」


「有難うございます。さて、確か副長さんが来てくださるんですよね? 何時頃到着するか変更はありましたか?」


「いいえ。予定通りかの方はそちらの長の帰還に合わせて此処から二日の所で雑事をしておられます。早馬を使えば三日後には到着なさるでしょう。それで……その、こちらを預かっています。忠告頂いたモノを隠していた奴が更に一人居たのです。よく謝罪するよう副長からも文で。……お許しください」


 あ、やはり刺繍入りのカッチョイイ絹だ。月明りだけでも出来の良さが良く分かる。お金持ちは違うね。


「とんでもない。いやはや、流石ビビ様ですよ。これで四氏族か。手が広く速い。良い提案があったんでしょうねぇ。

 そのー、副長さんもどっちが得かで悩んでおられると思うので、よろしければ向こうの提案と、私の考えの益の差について話し合う機会を作った方が良いかな、と思うのですが。

 本当に、私の得だけじゃなく皆様に得とな」「いいえ! それは、結構です」


 うお。突然力の入った声を。


「え、でも。副長さんには疑問があるでしょうし、説得が難しい方々も」

「貴方様はそちらの長がここを出た時には失敗を予想されていました。先を考える力に疑問はありません。説得は殺し終わっております。あ、そうです。丁度良かったのです。信頼を置けるように出来た。と、副長様も言っていました。ですからご信頼ください」


 そうか、殺したんだ。勿体ない気もするけど、仕方ないのだろうな。遊牧民は独立の気性がド級に強いのが居るもんだ。

 早口なのが気になるけど……いいか。予定通りしてくれると言うのに他に求めてはいかん。


「分かりました。なら……後は明日ですね。話し合いは朝です。私が無事なら正午までには今日と同じように店の前へ行きます。来なければ穏便に牢へ入れられたと見てください。予想外に私に危険が起これば笛を吹きます。その時は副長さんに連絡を。あの方が良いようにするでしょう。出来れば自由になるよう交渉してくれると嬉しいです。よろしくお願いします」


「お任せください」


 これで、人事は尽くしたか。でも穴が幾つもある気がするなぁ。

 何もかもが足りてない気がして仕方がない。何時か、対処しようの無い失敗をするような。何より真田が誰も勝てないような勢力となる可能性が恐ろしい。

 

 その時は……東アジアから逃げるか。何とも残念だが……仕方ないな。

 そう考えていれば何が起こっても冷静でありやすかろう。

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