未来を考える。そして……。
一晩考え、より落ち着いた。
リディア様が司馬仲達だろうが何だろうが、特に何か出来はしないと気づいた。
今までだって誠実であるよう頑張ってきたのだ。
勿論足りない所は山ほどあっただろうが、自分の限界以上を望んでも仕方がない。
それに万が一彼女が司馬仲達と同じ人生を送るとすれば、かなーり不遇な日が続く事になる。
具体的には人生の四分の三は不遇だったような?
となれば、俺が貴重な友人になる可能性も高いって訳よ。
そう、本当に私の生活の面倒を見ても苦痛と感じないくらいにな。ゲヘヘヘヘヘヘ。
おっと……。
少なくとも今のところ関係は良好……だと思われる。
正直分からん。
十一歳の癖に腹芸はお手の物っぽいからな、あの子。
とにかく彼女と知り合えて損をする可能性よりも、良い関係を築く事を考えよう。
ポジティブなシンキングがインポータントっしょ。
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リディア様への授業と言うか雑談を終わらせた日の午後。
俺はバルカ家にある広い庭の内、出来るだけ人が来ない所に来ている。
先日ティトゥス様からザンザの妹が帝王の側室になるという話を聞いて、俺の知識が有用である可能性を感じた。
それで地面に覚えてる歴史を書き、そこから自分の今後を考える為にだ。
尚、日本語で書いてある。
誰かに見て覚えられては不味い情報ゆえの用心として。
思い出す順序が前後するし、地名があやふやなのばかりだが、出来るだけ詳しく書いていく。
それと同時に人名と、こっちの世界で同じ立場と思われる人がいれば付け加える。
曹操がイルヘルミ。董卓がカルマ。ジョイ・サポナが北の果て、東の方の領土で武闘派と聞いたから……公孫瓚かもしれない。
仲達がリディア、劉備、
だが、俺の知識は殆どが娯楽小説として書かれた演義の内容である。
当然信頼が持てないのに、加えて女性になってたり、耳が尖がってたりと山ほど違いがあるのだ。
それでも大よそ同じ歴史を辿ってる訳だが……。
価値観が地球人と同じ生き物が集まり地理が一緒である為に、同じ必然が起こるのだろうか。
三国建立、
今は多くの人材がまだ名を知られてないはず。
それらの人と親しくして、守って貰えそうな人と縁を繋げられたら素敵かもしんない。
リディア様に生活の保障をして頂いたとは言え、命綱は多ければ多い方が良いもんな。
だが何処にいるかはさっぱりレモン味。
名前からして完全に違うのにどうやって見つけるのか。
最終的に勝つと思われる曹操っぽいイルヘルミは……居場所も、有能であるとも判明しているが……。
性格がぶっ飛んでるみたいだし、あまり近づきたくない。
大体曹操だとしても、袁紹を相手にしたときにはかなりの幸運が無いと負けるはずだったと思っている。
これだけ変化があればあっさり負けかねない。
誰かの部下になるとしても、物理的に首が飛ばされそうなら直ぐに逃げられる土地で……。
となると、
あいつは土地を得るまでえらく苦労するし、国を作った後も立地的に海と曹操に挟まれて逃げようがない。
超重要人物なのに、ずっと居るか居ないかさえ分かりそうも無いのが
今現在母の為に茶を買おうとむしろを編んでいるのか、どっかの学校に行ってるのかは知らないが世に出てくるのは相当後になるだろう。
演義みたいに仁徳の人ならば、こいつの配下になって勝たせる手も……国が亡ぶ一因となった呉攻めが起こらないように、
……こっちに同じ人物が居るか全く分からない以上、全部妄想かもしれないんだよなぁ。
だが、無駄になるシミュレーションじゃない、と思う。
記憶をはっきりさせておけば、何か事件が起こった際に鍵となる情報が何かを考えやすい。
その手を使って、俺は妹が皇帝の側室となる前にザンザを見られた訳だし。
さて……妄想と言われてもしゃーない話は忘れて、実際に見聞きした事だけで考えてみようか。
帝王の無力、実際に政治を行う官僚の腐敗、貴族たちの武力増大とそれに伴う平民への負担増大。
やっぱり……これ、乱世来るんじゃね?
将来が知識通りになる云々の前に、現状を見るだけで国が崩壊し、貴族達が殺しあって勝者による新しい国が産まれる一歩手前にしか見えない。
躁鬱病の超カリスマ英雄、足利の尊氏さんが出る前もこんな感じだったと思う。
ふむ……この世界で生きる誰よりも人類史を知ってる事によって、世の動きのパターンが掴み易いのは俺の強みだな。
考えずに居られないのはリディア様の事だ。
この一年で親近感は当然沸いている。
親切にして貰い、多大な恩を受けた。
俺の知識が予言出来る程の力を持つなら、傍から見てても分かる優秀が故の苦労を幾らかでも減らしてやりたい……。
本当に勝ち残るとしても、耐えがたきを耐えるハメになるだろうしなぁ。
俺のお陰で成長したという話だが、それも良いのかどうか。返って彼女の人生に悪影響を与えた可能性もある。
有能であればある程良いって訳でもあるまい。
いや、勝ち残る?
三国志ではどうなった? 魏が残り、そして……。
「クヒャッ」
……。
「ク、クフッ。クハッ。フヒュックヒュフフフフフ」
大きな声で笑うんじゃない。
誰が聞いてるか分からないだろうが。
しかし、在りえるのか?
俺は正気なのか?
こんなのは子供の妄想だ。
とはいえ俺の状況は妄想その物、そして……。
「出来る……出来るぞ……簡単に、確実に! 悪い影響は、まず在り得ない……。俺でも、俺がどんなに無能だとしても!」
乱世が、このケイ帝国に戦乱が来るとすれば……。
見つけた。
俺は見つけたぞ。
自分の命を掛けるに値する目的を!!
その上、この不確定な世界で俺の命を守るのにも適している!
俺が生き抜くには、自分の成長が必須だろうが……。
それがどうした。
例え死んでも、俺の目的が成就する可能性は高い。
……いや、死にたくはないな。
確実に、絶対に達成させるためにはやはり生きた方が良い。
何が必要だ?
どんな準備が。
必要要素、不安要素、本当に可能かどうか調べるべき情報は何だ?
つい先ほどまでは、何時かティトゥス様にこのバルカ家の下働きとしてでも雇って貰えないか頼もうと考えていた。
しかし中止だ。
全部全部全部全部変更だ!
この目的の為だけを考えて、計画を作らなければ!
三国志の知識で、未来が読めれば? そう思っていたよな?
は、はは、ははははははははは!! 笑えて仕方がない。俺は何て視野の狭い愚か者だったのだ。
こんな世界に来たのを恨んだ日もあった。
劣化した生活環境を苦しく思いもした。
俺の考えでは神は居る。
少なくとも、偶然によって異世界に来るよりは神によって異世界に来たと考える方が俺には理性的だと思える。
しかし、その神は今までは恨むべき存在だった。
何という勘違い。
ああ、今ならここに、この世界に来られた事を感謝出来る。
神が送ってくれたのならば、その名を教えてほしい。
俺は決して感謝の祈りを欠かさないだろう。
恐ろしい時代が来るから怖くてストレスを感じる?
馬鹿が。『来てくれてこそ』じゃないか。
まさか、まさかまさかこんな夢を果たせる機会が来るとは。
……人によっては気が狂ってると言うのも間違いない、か。
あの頃の地球に住んでる人ならそれなりに同じ考えを持っている人も居たとは思うが、実行となると妄想が極まっているとは自分自身でも思うのだから。
だが他人なんかどうでも良い。
俺は、俺だけを頼りにこの目的を達成しよう。
自分を研磨し、全ての問題を解決して見せる。
俺の人生を使い切っても、何を犠牲にしてでも。
全てを変えてやろう。
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