第20話 これにて一件落着・・・・・・?
※大麓マオ視点。
「黒曜。いつも通りに」
【はい。了解しました】
相手は見た事がないテノヒラロボを使ってきたから、驚いた。
だからといって、私達の戦闘スタイルを変える必要はない。
たった一蹴りで此処まで来るとはね。
だけど。
「ユウマの方が速い」
大きな口を開ける隙を狙って、拳を叩き込む。
ユウマだったら、隙を一切作らず近づいて、あっという間に場外だ。
百ぐらい叩き込んだら、相手のロボはコロシアム場外へと飛ばされた。
黒曜の攻撃はスピード特化のせいか攻撃力は低いから百発叩き込んでも場外にはならないんだけど。
相手のロボはスピードを優先しすぎて防御が低すぎたのかしら。
なんにせよ、勝負は着いた。
黒曜に労いの言葉をかけてからダイブエリアを出たらユウマが駆け寄ってきた。
「ユウマ、居たの」
「居たのじゃないよ。全く、君は・・・・・・」
「ごめん。心配して来てくれたんでしょ?」
「解っているなら良いよ。だけど、無茶はしないでくれ」
「ふ・・・・・・ざけるな!!」
ユウマと話し込んでいたら、乱入者が叫びながら私達を睨付けている。
普通なら、怖いと思った方が良いのかもしれないけど、生憎、睨まれるのは慣れてしまったから、こういう時はどうすれば良いのか解らなくなってしまった。
「ふざけるな!! ふざけるな!! ふざけるな~~~~~~!!!!!!」
「何がふざけるなだい? マオが勝って、君は負けたのに」
私を庇うようにユウマは前に出て乱入者にワザと挑発的な言葉を放つ。
此処はユウマに任せた方が良いわね、ユウマだったら冷静に相手と会話することが出来る。私は荒事には慣れてない上に話していく内に頭に血が上ってしまうから更に騒ぎを大きくするだけだから・・・・・・。
「なんでなんだよ!! あのロボは他のロボとは違うって!! 只のオモチャじゃないって!! くそくそくそくそ!!!!!!」
乱入者はユウマの言葉が聞こえてないのか、その場で喚くと此方ではなく溫井さんをギラリと睨付ける。
その目は完全に怒る狂っていた、これはヤバい。
「溫井ホノオ!!!!!! 全部テメエのせいだ!!!!!! 俺が寧々子さんに相手にされないのも!!!!!! 負けたのもテメエのせいだ~~~~~~!!!!!!」
喚き散らしながら溫井さんに向かおうとするが、待機していたガーディアン部隊が取り押さえた。
暴れるが鍛えられたガーディアン部隊に敵うはずもなく引きずられるように連行される。
これでもう大丈夫だろうけど、溫井さんはどうかしら。気になって、溫井さんの方を見るとやはり怖かったのだろう、顔が強ばっていた。
「溫井さん、大丈夫?」
近寄って話しかけるとギギギと音が聞こえそうな感じで振り向かれ、無言ではあったがコクリと頷かれた。
・・・・・・本当に大丈夫なのかしら。
この後、江良博士がやってきて「後は私達、大人がやるから君達は控え室に」と言われ、大人しく控え室に向かう。
溫井さんはお迎えが来るまで休みなさいと駆け寄ってきた妹さんとお友達と一緒に医務室へ。
大丈夫と言っていたけど顔は青ざめているし、ゆっくりと休んでほしい。後で顔を見せに行こうかしらと言ったら、ユウマは怪訝そうな顔で私を見ていた。
「マオ、一つ質問良いかな? 溫井さんとは初対面だよね? どうして、其処まで気にかける?
確かに君は困ってる人を放っておけない性格なのはよ~く知ってるけど、どうしても不思議に思ってね」
「ああ、それは彼女が私と同じ前世の記憶持ちだと思ってるからよ」
そう言うとユウマの目つきが鋭いものになる。
ユウマは私が前世の記憶を持っている事を唯一知っている存在だ。
幼い頃、ユウマなら馬鹿にしないと思って話した、最初は驚いていたけど信じてくれたのは嬉しかった。
だけど、ある日を境に前世の記憶を持っているなんて絶対に言うなと強く言うようになった、何故なのか解らないが信じてくる人はほぼ居ないと思うし進んで話すような事ではないから話してはいない。
「・・・・・・どうしてそう思ったんだ?」
「彼女、溫井さんと目が合ったとき電流のようなものは体中を流れたの。それだけよ」
「そうか。彼女にはその事は?」
「話してないわ。だけど、もし、話せる機会があったら話してみようかなと思ってるの」
ユウマは私をただじっと見つめている。
何も言わないという事は話しても良いって事ね。余り他人を信用しないユウマが珍しいと思いつつも前世の記憶を思い出す。
私の前世の記憶。
そう言うと大層なものに聞こえるが実際は大層なものではないし良いものでもない。
覚えてるのは白い天井、白いベッド、白いカーテン、何もかも白い部屋で一人っきりでただ命が尽きるのを待つ日々。
それだけ。
溫井さんにこの事を話すのは共感してほしいってわけじゃない。
ただ、同じ前世の記憶を持つ者同士、困った事があったら助けになるんじゃないかなと思っている。
あと、仲良くしたいってのもあるけどね。
次に会える機会があったら、話もしたいけど戦いたいな。
――――――
「使えない!! 使えない!! 使えない!!!!!!」
ロボセンター付近の路地裏で桃色髪の少女がゴミ箱を何度も何度も蹴っている。
この付近に人が居たら警察を呼ばれかねないほど、少女は暴れていた。
「折角、貴重な違法ロボを渡してやったのに!! 無駄にしやがって~~~~~~!!!!!!」
もし、この場で誰か聞いていたら耳を疑いたくなるような事を少女は話す。
彼女こそ、阿久マサオの脱走に協力し、あのロボを渡した人物のようだ。
怒りからか周りに人が居ないのを知っているからか、彼女は暴れながら今までの事を暴露していく。
「ううう~、脅迫状を送っても勇気ユウマはあの偽物と関わるのを止めないし偽物も大麓マオのフリを止めない。
それにしても、あの溫井ホノオの偽物!! 雪野マフユに汚い手でベタベタ触りやがって!! 何様のつもりなの!? 雪野マフユは大麓マオの次に好きなあたしの推しなのに!! くそ!! くそ!! くそ~~~~~~!!!!!!」
一頻りに暴れ、ゼーハーと大きく息を吐きながら汚れるのを気にすることなくペタンと地面に座り込む。
「これからどうすれば・・・・・・」
――ピリリリリリ。
「電話? もしかして!!」
ポケットに入っていたスマホから着信が入り、電話相手を見て、彼女はニヤリと笑うと電話に出た。
「もしもし・・・・・・。それは本当ですか!? はい、はい。そうですか、解りました。いつもの場所で!!」
電話を終えると怒り狂っていたのが嘘のように機嫌が良くなった彼女は立ち上がると鼻歌を歌いながら歩き始める。
「ふんふんふ~ん♪ ようやく、あたしのロボが♪ ふふふ、これで偽物達をたっぷりと懲らしめる事が出来るわ♪」
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます