第4話 手平町民大会編④
入り口での騒動が一段落し大会が始まるまでの間、センターの中庭で寛いでいた。
雪野マフユは此処に来る途中、記者に掴まってしまい、此処に居るのはアタシとヒバナ、ハナちゃんとチヨちゃんしか居ない。
他愛もない話をしていると、遠くから男女の言い争いが聞こえてきた。
「なに? 喧嘩? 此処で?」
「うん? この声はもしかして・・・・・・」
そう言って、チヨちゃんが言い争いが聞こえる方へ言ってしまった。
真面目なチヨちゃんらしくない行動に驚きつつ、アタシ達はチヨちゃんの後を追って隠れるように言い争っている男女を見る。
眼鏡をかけた長身の男の人とやけに色っぽい服装をした女性が其処に居た。
「なんてことをしてくれたんだ! あの勇気ユウマのインタビューにやっとこじつけたのに! 君のせいで台無しだ!」
「私は何もおかしいことしてないですよ? 勇気ユウマのもう一つの顔、裏の顔を暴きたいと思いませんか?」
「思わない!! 僕達の雑誌はゴシップ雑誌じゃない! テノヒラロボを中心としたエンタメ情報誌だ! 勘違いするな!」
「エンタメだからこそですよ! 人の秘密こそが最大のエンタメじゃないですか!」
「はあ・・・・・・、君と話をしてると疲れるよ。人の秘密を暴くのがエンタメなんて君ぐらいだ。今回の事で編集長にもう君とは二度と組まないと伝えさせてもらうよ」
「そうですか! 私も無理解の先輩と今後一切組むつもりありませんから! それじゃあ、私は先に帰ります!」
女性はドスドスと男が聞こえそうな足取りで男に背中を向けると帰って行った、残された男は深い溜息を吐く。
溜息吐きたくなるよね、あの女の人、何が秘密を暴くことがエンタメだよ! 典型的なマスゴミじゃないか、あの桝ココミよりもヤバいな、いや、取材の為なら潜入するからどっちもどっちか。
そういや桝ココミは此処に居ないのかな? 原作では勇気ユウマに会うために来ていた筈なんだけど、見かけないな。雪野マフユとの出会い以降、話しかけられてないというか睨まれてる感じが・・・・・・。
「兄さん!」
桝ココミの事を思い出していたら、チヨちゃんが眼鏡の男性の話しかけた!
今、兄さんって言った?
「チヨ!? どうして・・・・・・、ああ、友達の応援に行くと言っていたね」
「聞き覚えのある声が聞こえて・・・・・・」
「そうか、嫌な所を見せちまったな。ごめんな」
チヨちゃんに申し訳なさそうに謝るこの人、ようやく思い出した。漫画版のオリジナルキャラクター、影が薄い真面目な記者、
勇気ユウマの取材に来た際に将来性のあるバトラーを探していたら、主人公に逢い、彼のバトルに引き込まれて以降、主人公達、子供達を気にかける保護者枠だ。
漫画版ではすんごく影が薄い、名前すらないキャラだったけど、アニメで名前とアニメオリジナルヒロインであるチヨちゃんの10歳年の離れた兄という設定が追加された、けど影が薄いのは変わらないんだよね。
長太郎氏をマジマジと見ていると、アタシ達の存在に気がついたらしく、此方へとやってきた。
「君達がチヨの友達かな? 僕は入生田長太郎、チヨの10歳年の離れた兄だ、よろしくね」
「溫井ホノオです! よろしくお願いします」
「お姉ちゃん、溫井ホノオの妹のヒバナです!」
「・・・・・・・・・・・・・・・・・・」
「ハナちゃん?」
ハナちゃん、長太郎氏を見て、少し顔を赤らめているような・・・・・・。
アタシが声をかけてもボ~としてるから、今度は大きな声で呼びかけるとハッとして慌てて自己紹介をする。
「ゆ、雪野ハナです!!」
「ああ、君の事は知ってるよ。重量級アタッカーのユキウサギを操る子だよね?
重量級は重いからギリギリの戦いになると焦る子が出てくるけど、そんな状況でも冷静な試合運びが出来る子なんて君ぐらいしかいないと僕は思ってるよ」
「あ、ありがとうございます・・・・・・」
さすがテノヒラロボを中心に取材をしている人だ、ハナちゃんがどんなバトラーでどんな戦いをするか解ってらっしゃる。
それを聞いたハナちゃんはモジモジさせて顔を更に赤くする、可愛い、凄く可愛いけど、この反応を見る限り、ハナちゃん、もしかしてのもしかして。
――ピンポーン! 『これより開会式を開始しますので参加者は大ホールにお集まり下さい』
「そろそろ行かなきゃ! それじゃあ、皆、行ってくるね! ヒバナはちゃんとチヨちゃんとハナちゃんの傍を離れないでね」
「うん、大丈夫、解ってるよ。お姉ちゃん、頑張ってね!」
開会式のアナウンスが聞こえて、アタシは走って大ホールに向かう、ヒバナやチヨちゃん、ハナちゃんの声援を背に受けて。
さあ、アタシの戦いはこれからだ!!
――――――
「あの子、とても元気な子だね」
「うん、普段は大人しいけどテノヒラロボになると変わるというか豹変するというか・・・・・・」
「・・・・・・・・・・・・そうか」
「兄さん?」
「いや、どんな戦いをするんだろうと思ってね」
兄・長太郎のただならぬ雰囲気にチヨは不思議そうに兄を見る、其処には普段と変わらない穏やかな兄にしか見えなかったがチヨは兄が何かを隠していると心の何処かで勘づいていた。
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