第3話 知りたくはなかった真実
その原因は今となっては詳しく思い出す事は出来ない。
ただ覚えているのはそう12月に入って直ぐに発生したちょっとしたインシデント。
記憶に残っているものはDrと直接の上司となる看護部長への報告と、インシデントレポートの提出からのカンファレンスで再発防止の対策を講じればいいだけの、多分患者さんへの実害はなく報告レベルのものだったと思う。
「――――じゃあ先生へ報告をって普通に先生、聞こえていましたよね?」
「あ、うん聞こえていたよ」
「じゃあ改めての報告はどうしましょう」
「ああ、もう聞いたからいいよ」
えへへと私は愛想よく笑ってみせた。
そして今回インシデントの報告をしてくれたのはMEの三田村君。
彼は今透析センターで在席しているだろうMEの男の子達の中では一番の年長者且つ古株さんだ。
性格は大人しく……はっきり言えば陰キャラである。
でも普通に話せばきちんと答えてはくれるけれどもだ。
何処かその背負っている背景が何時も暗いのはきっと藤沢さんの所為でもあるのだろう。
藤沢さんにしてみればである。
私が赴任した頃より……きっとそれ以前だろう。
正看護師の古川さんとMEの三田村君の二人は何かにつけて彼女に弄られキャラとして扱われていたのだから……。
いや、弄りじゃあなくあれは普通に苛めである。
そして三田村君に至っては検査科長の土井さんからも弄られると言うよりもあの彼の、元々生まれ持つ眼光鋭い三白眼からの顔面凶器にしか見えない強面を全面に醸し出せばである。
ボスキャラオーラを纏っている武井さんが恐怖で動けない野兎キャラの三田村君を見つめる視線は冷たく見下していた。
最初の頃はどうしてそんな風に人を見つめるのかとよく不思議に思ったのである。
またその理由は程なくして分かったけれどもだ。
はっきり言えば仕事が出来ない……と決めつけ蔑むのは如何なものだろう。
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