第54話 解読
「カインお帰り」
「チュール何も問題は無かったか?」
「あの…… ゴメン」
「どうした?」
「ヒュドラとか船とか見たの言っちゃった…… 駄目だったよね?」
「そっか。まぁこの連中を相手に隠し通せるもんでもないし、それはしょうがない」
「カイン様」
「ナディアも何かあったのか?」
「シュタットガルド様が、古代エルフ文字を読めるそうです」
「なんだって? じゃぁ態々
「はい。解読だけが目的であれば」
「他に、何か目的はあったのか?」
「フィル様が錬金術をお使いに成れるそうですので、エリクサーの素材を集める事も出来るかと思っておりました」
「エリクサーって作れるのか?」
「錬金術のランクが最上級まで上がれば作成可能になるかと」
「そうなんだ」
「フィルはどうした?」
「孤児院の子供達を連れて、メーガン様とカール村へ送って行かれました」
粗方の仲間内の会話が終わると、レオネアが話し掛けて来た。
「それで、ギース達はどうなったの?」
「見つからなかった。恐らくだがマグマの池に落ちて骨も残さず溶けてしまったのかもな」
「そうなんだ。あの聖剣と聖鎧だけは惜しかったね」
「本物であればじゃ、マグマの中でも溶ける事は無いと思うぞ?」
「本当か? 爺さん」
「わしの読んだ書物の中で、Sランクダンジョンに纏わる物があっての。その本も古代遺跡から発掘された物であったんじゃが、世界中の13のSランクとされるダンジョンではそれぞれ聖なる武器と防具が祀られているそうじゃ。その装備を手に入れればとてつもない力を手に入れるとも書いてあった。ギースの実力がどうであれ、あの装備を身につけている以上はわしらであっても簡単にどうにか出来る存在では無さそうなもんじゃがな」
「爺さんがそう言うと何だか生きていそうな気もしてきた。そう思えば少しは気が楽だしな」
「それはそうとじゃ。他の本はカインが持っておるのか? 後、方舟とヒュドラをわしらに見せれるか?」
「爺さん。気付いてるだろ? 帝国の兵8万をヒュドラを使って殺したのは俺だ。帝国に付きだすか?」
「何を言っておる。あ奴らは戦争をしに来た兵士じゃ。殺しに来て置いて殺されたからと言って文句を言うような事は、わしは聞く耳を持たん。それが一人であっても10万であっても同じ事じゃの。弱かった自分を恨むべきじゃ。殺されるのが嫌なら兵士にもならず、戦争に参加しなければ良いのじゃ」
「俺達も同じ意見だ。カインは当然の行動をしただけだ」
「ジュウベエ。意外にいい奴なのかお前?」
「強い奴と、未知の魔物に興味があるだけだ」
「メーガンの馬車が戻って来たよ」
レオネアの声に振り向くと、スレイプニルの二頭立ての馬車が戻って来るのが見えた。
「それじゃぁ今から船とヒュドラを出すからな。ちょっとでかいから下がってくれよ? 本を爺さんに見せれば使い方は解かるんだな?」
「大丈夫な筈じゃ」
俺は魔法の鞄からまず黄金のヒュドラを取り出す。
「すげぇなこいつは。今は動かないのか?」
「ああ。だがさっきこいつが元々あった場所にケーブルの様な物があったから、そこに繋げば再び動くんじゃないのかと思ってる」
「それは、カインの持っておる本を読んでからにした方が良いぞ? 無差別に攻撃されたらたまらんからの」
「材質は、どうやらオリハルコンとミスリルがメインで、アダマンタイトも使って有る様だな」
「僕は船が見たいよ。早く出してよ」
「おう。ちょっと待てよ」
そのタイミングで、メーガンとフィルも馬車から降りて来た。
「あなた達。私をのけ者にして話を進めないで欲しいわ」
「まだ、何も進んでおらん。今から船を出すところじゃよ」
全員揃ったところで船を取り出す。
「でかいな」
「でかいのぉ」
「おっきいね」
「凄いわね」
「ちょっとカイン? 君はどれだけの魔力持ってるのかな? シュタット爺ちゃん。この船を魔法の鞄に入れられる?」
「いや。わしでもそのヒュドラが精一杯じゃな」
「僕だと、ヒュドラも無理だよ。君は魔法使いじゃ無いんだよね?」
「ああ。魔法は生活魔法しか使えねぇ」
「それで、その魔力はおかしいよね?」
「ああ。それな。恐らく『絶望の谷』で出会った喋るトカゲを倒した時に貰ったギフト? とか言うやつの効果だ」
「なんだ。おかしいと思ったら、Sランクダンジョンを攻略したのは、ギースじゃ無くてカインなのかよ。それで納得だ。で、なんで聖剣はギースが持ってんだよ?」
「ラスボスと思って無くてさ、倒した後に出たクリスタル触ったら、一層に飛ばされちまって、結局俺抜きで突入したギース達がボスドロップとか入手して引き上げたんだよ」
「その時は、フィルの回復や支援が俺に届かなくなってた事が、ギース達の方がレベルが高いと思ったのもあって、言い出せなかったな」
「馬鹿じゃねぇのかお前」
「まぁそれは済んだことだ。それよりこの船の入り口が全くわかんないんだ。本を出せば解るか?」
そう言って残り12冊の本を、その場に取り出した。
「ふむ。一冊目はこれか。ちょっと待っておれ」
一人でぶつぶつ呟きながら本を読むシュタットガルドが10分ほどで、大事な部分を理解した様だ。
「カイン。船尾に魔法陣に囲まれた水晶がある筈じゃ。そこに魔力を流してみよ」
言われた通りに魔力を流すと、魔法陣が明滅して扉が現れた。
「中に入ってみようぜ」
「ああ」
「一応ヒュドラは、しまっておくぞ」
「みんなが入るなら、その方が良いじゃろうな」
全員で扉を開けて、方舟と呼ばれる船に入って行った。
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