第122話 第六話 その10 爆人石でてこいや!

「現時点では…」

「何もできない」


「ぴゅう…」

「ぽう…」












「ちびちゃん!分かったぜ!ケツに火だな!」


 ふっ飛ばされたちゅん助を尻目に武器屋の親父が叫んだ!


「お前ら!火だ!奴のケツに火を付けてやるぞ!」


 おお!


 現場に意思統一がなされる、がその目論見はちゅん助の時点で魔王にはお見通しだった。


 松明を運ぶ人員に最優先でグソクの群れが襲い掛かる。

 広場に足を踏み入れた途端にやられる者

 目前までたどり着く者

 あと一歩まで迫る者


 しかし強力な青ムカデ達に阻まれどうしてもたどり着けない!


 だが!


 こんな極限状況下でも機転を利かす奴もいた!火矢によって青大将の尾を狙う!


 パシュッ!

 ズバッ!


「く!こいつら!ここまでして阻んでくるなんて!」


 放たれた火矢は正確に青大将に向かって飛翔したが、惜しくも直前で身を挺した青ムカデに阻まれてその体に刺さり、その犠牲を以って青大将への着火には至らなかった。


 もはや両陣営による総力、総消耗戦の様相を呈していた。


 直近で青大将の元へとたどり着けたのは、序盤の意表を突いたちゅん助の油投擲だけと言う結果だった。

 そのちゅん助ですら松明を持っていては目立ち簡単に阻まれ、ブッ飛ばされたのだ。

 人間が着火源を有していたら真っ先に狙いを付けられ襲われるのは当たり前だった。


 決死の覚悟で挑むが守りに徹したグソク側の防衛ラインは厚く激しい。


 あと一歩!あと一歩がどうしても通らない!!
















「ああん!もう!下手くそども!ナニやってんのよ!」


「あれだけデカい目標なら火ぐらい付けるっポ!ボクがあそこに居れば!」


「ワタシがいたら灰色の奴らは根こそぎ吹き飛ばすッピュ!」


「は?そもそも私が居ればそっこー仕留めてるわよ!」


「どうぞどうぞッポw!」

「どうぞどうぞッピュw!」


「居たらの話でしょうが!」

「だいたい火を付けるのが最終目標じゃないでしょう?それでやっつけられるの?」

「こんなところでモタモタしてるようじゃ絶望的よ!」















 ヨロヨロ~


「くっそ~わ、わしをボール扱いするとは!おにょれ~!」

「わしにとどめを刺さんかった事!後悔させたるお!」

「おう!わしはちゅん助!あきらめの悪い男!」

「とは言っても…此奴ら火元を見たら一斉に攻撃目標切り換えてやがるお…」

「まさか火矢を飛ばしても防がれとるとは…なんとか!なんとか火を放たないと!」


 コツン!


「ん?」


 ちゅん助の足に触れる物体があった


「これは!」


 それは爆人石弾地雷を爆発させたときに使用した愛用のパチンコであった。


「爆風に飛ばされた時失くしたと思ってたお…」

「爆人石弾は地雷群として全ツッパしてしまったお…弾が無ければ無用の長物…パチンコだけでは着火できん…」

「………」

「いや!」

「一発だけ!」

「ある!」


 どこだ!?どこだ!?


 ちゅん助は今なお両陣営による殺し合いの現場をすり抜け、駆け廻り目的の物を探した。


「た、たしかここら辺に捨てたはずだが…」

「!」

「あった!」

「あったお!」


 ちゅん助が探していた物とはイズサンがダイオウに爆・斬突を放った後、用済みとなって捨てた鞘であった。


「わしの改良によって二発分放てるようにしたんだお!」

「イズサンが使ったんは一回のみ!」

「つまり!」

「この鞘にはもう一発分の爆人石が入ってるんだお!」

「ここのネジを外して…と」

「こ、これで爆・斬突以下略!用の発射炸薬爆人石が取り出せるんだお!」


 ちゅん助は素早く作業を済ませると鞘を傾けた、しかし!


「く!でてこねー!」


 人の身体なら簡単に持ち上げ、傾けられる鞘もちゅん助にしてみればかなりの重量物だった。

 火事場の馬鹿力で油の小壺は持ち運んだが、剣の鞘となると形状が細長すぎて持ち上げ逆さまにすることはおろか片方を持ち上げて、爆人石が転がり出る角度にまで傾ける事すらままならない。


「うんう~ん!」


 ピョンピョーン!


 必死になって持ち上げ傾けるが、身長の低い彼ではそれすら高難度であった!


「くっそー爆人石の中の爆人石~!でーてこいや~!」


 なんとか先端を持って飛び跳ねても悲しいかな低身長、爆人石が転がり出る様子は全くなかった。


「あひいー!球形に加工せず原石の形そのままで調整したのが仇になったお~でてこねー」


「キー!」


「!」


 ちゅん助の奇妙な行動を何匹かのグソクが嗅ぎ付けた!即座に反応し襲い掛かって来る!


「ひえー!」

「わしは!」

「ぴょんぴょん運動!」

「しとるだけだお!」

「ちょっかい!」

「かけんで!」

「欲しいお!」


 ここで鞘を奪われるわけにはいかず!必死で飛び跳ねながらグソクの攻撃を何とか躱した!


「ふぁふぁーん!(←泣いている音)取り出しのあいだくらい、見逃してほしいおww」

「取り出しのあいだに攻撃するなどと!」

「巨大ロボの合体中に攻撃するくらいお約束違反だお~w」

「来るなお!」

「来るなお!」

「絶対来るなお!」

「って言ったらめちゃくちゃキタア!」

「そういうお約束だけは守るんじゃないお!」

「たーすけてー!」













「ああん!もう!イライラするわね!あんなんじゃイケないわ!」

「あのチビ!この期に及んで落っこちた鞘で遊び始めて!なにやってんのよ!?」


「意味不明だっポ!」

「もう完全に混乱してるっピュ?」


「なんで火の一つくらいさっさと放てないッポ?ボクが居たら丸ごと燃やすッポ!」


「わ、ワタシが居れば火災旋風ごと持ってきてやるッピュ!」


「は?そもそも私が居れば…」


「どうぞどうぞッポ!ってぽ?」

「どうぞどうぞッピュ!ってぴゅ?」


「二度も同じ手は喰わないわよ!?」


「ご主人サマ!お約束は守るッポ!」

「ご主人サマ!お約束は守るピュ!」


「……一体なんのお約束よ…」


 第六話

 その10 爆人石でてこいや!

 終わり

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