第六章 死闘!時計塔広場攻防戦!
第113話 第六話 その1 乱入者
(ああ…)
ザク、ドサッ。
もはや立っている気力もなくし剣が地面に刺さり、膝が地に着いた。
(ここまでなのか…?)
その時だった!
「うわあああああああああああ!鳥さ~ん!!!」
ドカッ!
「ギッ!?」
パサッ!
魔王とちゅん助に思い切り体当たりをブチかました突然の乱入者があった。
視界外から完全に不意を突かれた形の魔王は思わずちゅん助の拘束を解き落としてしまう。
「鳥さん!しっかりして!」
突然の乱入者は道中で助けたあの少年であった。だがこの少年は弓の少女が教会へ届けたはずでは?
いいや、今は!今はどうでもいい!今すべきは!
「しょ!少年!ちゅん助を!ちゅん助を頼む!」
「は、ハイ!」
少年は地面に転がったちゅん助を拾い上げるが、魔王は再び捕らえようと動き出し始めていた。
好機!
勇気ある少年が作った絶好の反撃の機会なのだ、これを逃すわけにはいかん!
「させるか!おらああああああああああああ!」
ガチィー!
ガキーーーン!
「!」
突きからフォアハンドの斬撃!
例によって例のごとくあの魔法障壁に阻まれる!
しかし!
(圧せてる!?)
障壁には先程までの絶対的な防御力が感じられない!
魔法陣の形状は歪!
整然としていた数列式の様な模様もなにやら乱れを感じる!
なにより剣と激突した瞬間、弾かれる前、剣を握る手ごたえに押し込める感覚があった!
間違いない!
コイツも弱っているのだ!
勝機!
ガチーーーーン!
ガキーーーーン!
ガッキャーーーン!
俺が感じた通り!
魔王は防戦一方となった。脚を止め、俺の斬撃に対して障壁を展開させるだけがやっとであった!
ギィギィと耳障りな鳴き声を上げる暇すらないのが良い証拠だろう!?
ここは手数!
そしてスピードより威力!
突きから斬りに切り換え思い切り斬り付ける!
障壁の展開に余裕がない!俺の連続斬撃で押し込んだせいで障壁から魔王本体までの空間もどんどん狭くなっていき、ついには数mmまで迫っていた!
この際!ライジャー流だのどうでもいい!
両手だ!
俺は剣を両手で握り
叩きつける様に!大上段から!大根斬り!
振り回すように渾身のバットフルスイング!
フォームも基本も関係ない!
渾身の力で斬り付け!叩きつける!
(届く!あと少し!)
バッキヤアアアーーーン!
「割れたああアアア!」
遂に!
手応えあり!
遂に剣が忌々しい障壁を叩き割ったのだ!
「ギギッ!!!」
(次の一撃は貴様に!)
俺は剣を振りかぶりとどめの一撃を加えようとした。
「喰らえええええええええッ!!!!」
「わあああ~!」
突然の悲鳴!
視界の隅でちゅん助を抱えた少年がなんと青の個体達に囲まれているのが見えた。
なんてこった!
ここに来ての青!
魔王はちゅん助を人質とした時、俺が一切手を出せなかったのを理解して再び捕らえようとしているのだ!
「まずい!助けに行かなければ!」
「なんて!」
「言うとでも思ったか!」
ここに来て俺は冷静だった!
手下達を操っているのがコイツであることが明白な以上は、コイツさえ倒せば恐らく青の奴等も止まる!確信は無かったがそう信じて、いや!賭けてでもコイツを仕留めなければ!
ブン!
渾身の斬撃!
ザシュ!
「なに!?」
俺の剣は確かにグソクを捉えた。しかし、それは白ではなく青!土壇場で青が身を盾にして魔王を庇ったのだ!
「くそう!こっちにもかよ!」
気が付けば無数の青の個体が魔王の元に続々と集結し始めていた!
「くそくそくそっ!くそがっ!」
「あと少しだったのに!」
こうなるとちゅん助と少年がヤバい!俺は反転し彼らの援護に回った。
「おらああ!」
ズシュザシュズシュ!
青の個体がいかに速く動こうとも、俺は一度戦っているのだ!その速度は大体把握している。
そして何よりこの極限状態の連続が俺の精神を研ぎ澄ませ集中させていた。剣の走りは冴えている!
ちゅん助に茶化され邪魔されながらも、毎日の剣の鍛錬は一日すら怠ってない真面目マンなのだ!
青相手でもやれる!
俺は次々と少年達に襲い掛かる青を刺し、斬り捨てながらなんとか身柄を確保できる位置にたどり着いた。
「大丈夫か!」
「勇者様!大丈夫です、でも!でも!鳥さんが動かない!」
少年が悲壮な声を上げた。
俺はぐったりしているちゅん助を受け取ると体を確かめる。火傷の痕は酷いが魔王に噛まれた傷はそれほどでもない様に見えた。
奴が毒の類を持っていないとも限らないが、あくまで人質として捕らえられており、致命傷を与えってしまったらその役目を果たさない。奴ほどの知能があるのならそれ位は十分に分かっていたはずだった。つまりはまだちゅん助は生きている。
ぬいぐるみみたいな体が呼吸で上下し、まだ温かな体温があり毛並みにはまだツヤがある!絶対に生きている!生きているはずなのだ!いやそうでなくては困る!そうであってくれ!俺は強く願う様に念じると再び少年にちゅん助を託した。
「少年!頼む!こいつを安全な場所へ!」
「勇者様はどうするの!?」
安全な場所…自分で言ってはみたもののこの街にそんな場所があるのか…だが少年はそんな事は聞かず俺の事を気遣った。
あの少女が約束を守ったなら、この少年は教会からここまでの危険な道のりを乗り越え駆け付け、俺達の絶体絶命のピンチを救った事になる。
幼い見かけとは裏腹に肝が据わっているのだろうか。
「君が体当たりした白い奴は見たな!?あれがボスの可能性が高い!いや間違いなくそうだ!」
「アレを仕留めない限り街は全滅だ、何とかして奴を倒す!」
「ど、どうやって…?」
少年が不安そうに俺を見つめた。
俺は少年と彼が抱えるちゅん助を見て答えた。
「俺が知りたい…」
ちゅん助が気を失っている以上、もはや彼から戦いのヒントを得るのは無理だ。奴と戦いながらそれを見いだせと言うのか!それはとんでもなく不可能な事に思えた…
だが、残された者でやるしかないのだ…
「兎に角、障壁は一時的にでも砕けた、奴も無敵じゃない!」
「君はちゅん助を頼むぞ!」
「これは君にしか頼めない!頼むぞ!」
「分かったよ!勇者様!」
少年はこの状況において出来ないとは言わなかった。彼の言動と行動に少し勇気付けられたような気がした。
(頼むぞ!少年!)
第六話
その1 乱入者
終わり
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