第93話 第五話 その14 探せ!
「あ!」
「あ!」
俺達の脳裏に稲妻のごとく閃くものがあった!
(イズサン!)
(分かってる!裏を取るぞ!)
「隊長!ガレッタ隊長!」
「勇者様!なんですか!」
「貴方達がここにたどり着いた時!」
「ここで既に戦闘は行われていましたか!?」
「いえ!その時は夢中でここにたどり着きましたが、ここを防衛ラインと決め、戦い始めたのは我々が最初のはずです!」
「では、このグソクの死骸の大山は誰が作りましたか!?」
「山!?」
「いいえ!」
「我々もかなりの数を討ちましたが、死骸の山は既に存在しておりました。他の残存部隊が戦っていたのかと!」
間違いない!
考えてみればこの混乱の中、倒したグソクを呑気にうず高く積み上げる奴なんか居ない!
あの死骸の山の頂点に陣取って登って来るグソクを迎え撃ってればああなるかもしれないが、そんな不安定な足場で槍ならともかく、リーチのない剣を振り回そうなんて考えもしないはずだ!
そしてあの少女が言っていた様にこの街では、剣の使い手は居ても槍使いはそう居ないはずなのだ!
「隊長!死骸の山を調べます!援護を!」
「山を!?死骸を!?何故!?」
「とんでもない奴が隠れてるかもしれないからです!」
「勇者様!気はお確かですか?死骸ですぞ!」
「これは間違いないお!イズサン!皆が必要無いって思ってる!とんだ盲点だお!」
「ああ!」
「どこぞの社長も、幹部連中皆が反対する事業は必ず成功するっていっとるお!」
「ああ!でも今あんまそれ、関係なくない?」
俺達は急いで死骸の山に駆け寄った。ガレッタは怪訝そうな顔をしたが勇者様のお考えがある事なら!と援護を引き受けてくれた。
死骸の山は3m程…
「この死骸の山は大きいけどあの影が入る様な大きさでは無いなお…」
「大きい奴とか固定観念があると見逃すかもしれん!とにかく探すぞ!」
言うと俺はグソクの死骸を1体ずつ慎重に取り除いていく。
しかし!
一体全体何百匹居るのか…
1匹、また1匹。
「死骸は気持ち悪いなお!イズサン…」
「いきなりなんか飛び出してくるかもしれんお!気を付けるお!」
「ああ!分かってる!」
「たしかエイリアンは幼体が飛び出してきて口ん中に入って卵産みつけたお!」
「怖い事を言うな!ビビらせるんじゃないよ!」
「へいへい!イズサン!ビビってるビビってるうw!」
「び、ビビってねーし!余裕だし!」
と強がって見せたが…
一応、口は閉じておこう…
ビビってないぞ!一応だからな!一応!
1体、また1体
1匹、また1匹
1体、また1体
1匹、また1匹
鬼が出るか蛇が出るか?想像もできない…正直、恐怖で身体が委縮しそうだったが今はここに賭けるしかなかった!
慎重に慎重に…注意を払って取り除いていく作業は想像以上に神経がすり減っていく。
今にも手にしている死骸が動き出して襲い掛かってきたら?とんでもない恐ろしい個体が隠れていたら?悪い状況ばかりが思い浮かびぐるぐると頭の中を駆け巡る。
(くそ!腰が引けやがる、焦るな!ビビるな!)
「ワッ!!!!!!」
「わあああああああああああああああ~!!!!!!!!!!!!」
突然ちゅん助が上げた大声にびっくりしてしまい、手に持った死骸を落とす…
「わはははは、ビビったビビったw!」
ゴチン!
「スマンだお…」
「次は槍の尖った方で殴るからな!」
「斬れてしまうお…」
全く!
こんな時にとんでもない奴だ!しかし怒りのあまり緊張は少しほぐれた気がする。
「安心しろお!イズサン!」
「いきなり飛びかかってくる奴が居たら!わしが絶界弧闘で仕留めたるお!」
「頼むぞ!」
「おうだお!」
「迎撃パトリオットちゅん助と呼んでくれだお!」
「心強い!」
「わしのまっはぱんちは厚さ0.1㎜の発砲スチロール板を楽々ブチ抜くお!」
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「前言撤回!」
「そしてここでお知らせだお!」
「なんだ!?」
「本日の絶界弧闘は終了しましたお、またのご利用をお待ちしとるお!」
「ズコオオオオオオー!」
「だったら迎撃とか言うんじゃないよ!」
と言うものの、ここまでの捜索でちゅん助に頼り過ぎた…
1体、また1体、そして1体。
「くっ!」
「ええ…」
第五話
その14 探せ!
終わり
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