第54話 第四話 その15 開戦! 美少女 対 ちゅん助!

「そんじゃ行くわよ!」


「まつお!」


「なによッ!今さら命乞い!?」


「わしが勝ったらどうするかお!?」


「万が一にもあり得ないわ!」


「ふふふ、わしは、その万が一を100%掴める男だお!」


「ちゅん助クーン、ヤバいよヤバいよ!いい加減にしないと、ほんとに死ぬよ?」


「ああ、そう!もしアンタが勝ったなら何でも言う事聞いてあげるわ!」


「あ~w言っちゃったお♪言っちゃったお♪」

「貴様のその言葉、エ〇ゲで言うところの陥落フラグだお!」


「意味分かんないわ!もういい!死なす!」


 少女の雰囲気が完全に変わった。


 もの凄い怒気を含んでいたのに、さっと表情が冷めたものになり、氷の様な冷静さを醸し出していた。先程まで怒っていた時よりも逆に恐ろしい。完全に戦闘モードであることは明らかだった。


 少女とちゅん助が対峙する。少女のあの腕前ならば、一発でも放てばちゅん助など即死だろう。


(あわわわ!大変な事になった…)


 アホだアホだと思っていたが、奴の厨二病がここまで酷いとはさすがの俺も気付かなかった。どうしてこうなるまでほかっておいたのだ!こんな恐ろしい事になるなんて…だがちゅん助が一切態度を改めないどころかどんどん失礼を働き過ぎた今、もはや止める手立てが見つからない…


 少女はじっと冷静な視線でちゅん助を捉え続けていた。確実に仕留めるつもりだ。どう見ても本気だ!


 ジリジリ


 冷たい射抜くような視線、なのに、焼け付くような空気、息がつまる、苦しい程の緊張感!


 パシッ!


 突然ちゅん助の隣の地面に、数cmの穴が開いた。銃弾の様な威力!少女のマントが揺れたような気がした。


「!」


 間違いなく少女が何か放ったのだ!俺が見たマントの揺れは、既に何か発射された後の動作によるものか?


 信じられない。何をしたのか全く分からなかった。居合で抜く手も見せず、そんな表現があるが彼女の動作は居合なら納刀の動作すら見えなかった。それほど速かったのだ、肩に付いていた竪琴が弓型に展開していることから、辛うじて弓による攻撃を放ったのだと推測された。


 恐らく威嚇のため、あえて外してくれたのだろう。もし当てる気なら、ちゅん助は今頃昇天していたはずだった。


 だが!


「!?」

「どういうことッ!?」


「ふふふふふwお嬢ちゃん、いきなり外してどうかしたかお?あ〇日かおw?」


 青ざめてるかと思いきや、ちゅん助は余裕たっぷりの笑みを浮かべ下品な挑発をしていた。


 対して、少女は緊張感で張りつめた表情に変わり、やや動揺の色すら見えた。


(ウィンディ!何故!?まさか躱された!?そんなはず!)


(そんなはずないッピュ!ワタシがみのがすはずないッピュ!)


(ファイアン!アイツはあそこに居るわよね!幻覚!使ってない!?)


(あり得ないッポ!あいつはたしかにあそこに居るっポ!)

(炎のせいれいであるボクのかごを受けてるご主人サマをげんかくにひっかけさせるなんて真似させないッポ!)


(クソッ!ならいったいどうして…)


「むふふふふ、お嬢ちゃん顔色が悪いおw」

「圧倒的実力差を前に、震えとるかおw?」

「そのような緊張を優しく揉み解したるのも、わしの務めだおw!」


「クッ!結構よ!アンタだけはお断りするわ!」


「お~おっ♪おっ♪おっ♪おっ♪おっ♪アンタだけはお断りする!頂いたお!」

「その声でそのセリフ!わしにとってはご褒美だお!おっおっおっ!」


「変態め!」

「変態っポ!」

「変態ッピュ!」


 いやらしい表情を浮かべて、少女と対峙している最中だというのにちゅん助は地面に仰向けになって卑猥な痙攣を起こしていた。


 この凄腕の少女を前にして、まさに余裕!


(なんだ!?何が起こってる?)


 一転、険しい表情になった少女のうわずった声と、変態臭溢れるちゅん助の不遜な態度。


 たった一発の攻撃が繰り出されただけのやり取りであったが、事の優勢は俺の予想とは真逆にちゅん助の方にあるようだった。


信じられん…


(ウィンディ、ファイアン!次は連射で行くわ!絶対にアイツから目を離さないで!)


(ピュ!)

(ッポ!)


「死ね!変態エロピヨ!七星統一チートイツチートイツ!」


 バババババババシュッ!!!


「ちゅん助ッ!」


 少女は矢継ぎ早に、いや目には一回の動作にしか見えないような早業で、何発かの虚空の矢を放ったようだった。


 恐るべき連射。弓なのにマシンガン並みか!


 ちゅん助の居た地面を中心に、北斗七星を象った穴が一瞬にして穿たれた、が!明らかに威力を持った虚空の矢は本当に虚空であるかのようにちゅん助をすり抜けた様に見え、ちゅん助の体には傷一つ付けず、背後の地面に穴を開けただけとなった。


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「クッ!」

「ポッ!?」

「ピュッ!?」


「遅い!おまえの動きは止まって見えるお!」


(なぜ!何故なのッ!?私の射撃は正確なはずよ、それをことごとく外すとは…)


(おかしいッポ!アイツは確かにあそこに居るっポ!間違いないッポ!)

(動いてないッピュ!動いてないはずッピュ!まさかワタシが捉えられないっぴゅ…?)


「ふふふのふwお嬢ちゃんと屁の風ぴゅと燃焼メタンガスっぽよ、どうかしたかお?」


「ううっ!」

「屁じゃないっピュ!」

「ガスなんか燃やしてないッポ!」


「ま~さか!私の射撃は正確なはず!」

「それをことごとく外すとは…なーんて思ってないだろうなお?」


「どうしてそれを!」


「外すとか躱した、なーんて思ってる時点でわしの真の実力の一端も見えていない証拠だお!」


「なんですってえ?!」


「こういう事だお!」


 パチン!

 パラッ…

 パサ


「え?」


 ちゅん助がパチンと指を鳴らすと、なんと少女が胸に付けていた胸当てが外れパサリと音を立てて地面に落ちた。


 少女の楕円の胸当ては、左右が紐で編む様に結ばれていたはずだ。


 紐を切るか解かない限り、胸当ては落ちない。地面に落ちた胸当ては紐が解かれていた…


 少女の衣装は胸の真ん中がやはり紐で結ばれており、網の先端は蝶々結びとなっていたが、衣装の上端で少女の可憐な控えめな膨らみの始まりと網目の奥には辛うじて寄せたであろう胸の谷間が見えた。


「な!?やあッ!」


 少女は慌てて露わになった胸の谷間を右腕で隠すと、高い声で短いながら悲鳴をあげた。


「ふふふだおwケツのスリットといい胸当てに隠されていた寄せ乳谷間見せといい」

「露出狂の気があるのかおwけしからん!まったくけしからん女メスだお!」


「クッ言わせておけば!」


(でも!どうやって!?ファイアン!分身の可能性は!?)


(アイツの反応は1体だけだったっポ!分身はしてないッポ!)


(ウィンディ!あいつ!リープしてない!?)


(りーぷならその瞬間だけでも捉えられなくなるはずッピュ!アイツはずっとあそこに居たっピュ!)


(なんてこと!この私が…いえ私達が捉えられないなんて!)


「ふふふふ!お嬢ちゃん!そろそろ決着をつけるお!」

「出し惜しみしとるんじゃないお!」

「わしの様な超格上の存在と戦うなら!」

「いきなり最強の必殺技をぶちかますのがセオリーだお!」

「隠してないでさっさと使うお!」

「ビラン!ドカブレイクで来い!と言う奴だお!」


 ちゅん助が、ムカつく満面の笑顔で煽り立てた。


「アンタ…ほんっとに!死にたい様ね!」

「お望みならやったるわよ!後悔しないわね!」


「フム、心ゆくまで使うがいいお?」

「だが!俺とキミの戦力差はそれ以上だお!」


「言ったわね…」


「言ったお!」


「ウィンディ!ファイアン!殺るわ!」


「ご、ご主人サマ~!あれはまずいポ~!流石にヤバいッポ!」

「せ、精霊石無しでは負担が大きいッピュ!危険ッピュ!」


「そのためのアンタらでしょうがッ!これ以上舐めさせないわ!殺る!」


「ふふふだお、ようやくその気になったかお?では、こちらも最大奥義でお相手するお!」


「はあ?あんた如きが最大奥義?何様!」


「こちらも最後通告だお!素直に謝って頭を下げるのなら、仲間にしてやるだけで勘弁したるお!w」


「ふざけんじゃないわよ!誰がアンタの仲間になんかなるもんですか!」


「従わずにあくまで続けるというなら!」

「貴様が必殺技を放った瞬間!」

「我が最大奥義が炸裂すると知って欲しいお!」


「脅したって無駄よ!死ぬのはそっちよ!」


 第四話 

 その15 開戦! 美少女 対 ちゅん助!

 終わり

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