第8話 くるくる

 学校が終わると、家のお仕事がたくさん待っている。

 洗濯・掃除・買い物・料理……。全てを毎日やっている訳では無いけど、殆どの仕事が規則正しく毎日やって来る。

 私はその家事を毎日こなしていく訳だが、最近は学校・スーパーの往復と家事ばかりの生活をしていた……


 ある日の夜。

 今日は音羽ちゃんと一緒に宿題をして居るが……ふっと口からこぼれ出してしまった。


「私、何やってんのかな~~」


「恵那ちゃん。また、悩み事…?」


「うん……」

「毎日、毎日、やっても、やっても、次の日に成ると、仕事(家事)が有るんだよ~~」


「仕事って、家の仕事?」


「うん。そだよ。……もうやだ~」


「……恵那ちゃんのお姉さんは、手伝ってくれないの?」


 音羽ちゃんは、そう聞いてくる


「全部が全部って訳じゃないけど……、私が7割位しているかな?」


「もっとやって貰えば良いのに……?」


「うん。そうなんだけど……」

「意外に生活費少ないの……。元々、私は連れて行く気だったから、お姉ちゃんの分しか計算に入れてなかった感じなの…」


 私がそう言うと、音羽ちゃんはびっくりしていた。


「じゃあ、お姉さんが生活費のために働いているの!?」


「ううん、違うよ…。お姉ちゃんが働かなくても生活は出来るよ」

「でも……お姉ちゃんが『少し余裕が有った方が恵那も楽でしょ』と言うから……」


「それで、家の仕事を殆どしないのはお姉さん、ちょっとずるいね」


 音羽ちゃんは、そう言ってきた。


「でも、少し生活費厳しいし…」


 お姉ちゃんのイメージが悪くなったと思い、私は慌ててフォローする。


「難しいね…。恵那ちゃん」


「仕方が無いのは分かって居るけど“くるくる”、“くるくる”毎日同じ繰り返し、もう嫌だ~」

「何か…、この、“くるくる”をなくす良い方法は無い。音羽ちゃん?」


「…無い!!」


 音羽ちゃんはきっぱり言った。……本当に友達?


「慣れるしか無いよ。恵那ちゃん…」


「そう…」


 その言葉で落ち込む私。


「恵那ちゃん、ごめんね。役に立てなくて」


「慣れるしか無いんだ、慣れるしか……」


 落ち込みモードになる私。

 その姿を見た音羽ちゃんは、慌てて私を慰めてくる。


「えっ、恵那ちゃん。買い物とかだったら付き合うよ!」


「うん…、ありがと」


「元気出して!」


「私は元気だよ。現実に疲れただけ!」


「それを元気出して、恵那ちゃん!!」


 音羽ちゃんはそう言ってくれるが、言葉だけで元気に成ったら苦労はしない。


「あっ、22時だ…。そろそろ帰るね」


 私は帰る準備をする。門限は22時。直ぐお向かいだけど……


「恵那ちゃん。本当に元気出してよね。慣れれば、何とか成るかも知れないし!」


「うん。頑張ってみる。慣れるまで……ばいばい。音羽ちゃん!」


「頑張ってね、恵那ちゃん。また明日!」


 挨拶をして音羽ちゃんの家から出る私。


「慣れるまでが大変なんだよ……音羽ちゃん。慣れるまでが……」


 そう呟く私だった。

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