第4話

 その叫び声を聞いた者は発狂するという。

 それは、人の姿に似た根をしている。

 それは、無罪の罪で処刑された男の精液から生えると云われている。

 かつて犬を用いて採集していたその植物の名は、マンドラゴラという。

 マンドラゴラの逸話は、震災の被害にあったこの街で再現された。最も暗い、夜明け前のことである。


******


「待ってろ!今、助けてやる!」

 外へと出てきた人々は救助活動を始めていた。

「こんな、瓦礫ごときに押し潰されるか!」

「こっちに埋もれている人がいる。誰か来てくれ!」

 自分の身も鑑みずに人を助ける彼らの先には、叫び続けるマンドラゴラが走っていた。

「だずげで!くだざい!!」

 マンドラゴラは叫び続けた。その声を聞いた人々は、自身の負傷を気にもせず人を助け始めた。


 夜が明けて朝陽が射し込む頃、街の人々は疲れて倒れ込む。マンドラゴラもまた力尽きていた。

「この、マンドラゴラがよ…」

 マンドラゴラの側に立っていた男はそう呟いた。育て親と言っても良い、彼の元に戻ったマンドラゴラはその場で息を引き取った。そして、マンドラゴラが連れてきたとしか思えない人々に、彼は助けられて事なきを得たのだ。


 マグニチュード9の大地震に見舞われたこの街の死傷者は、奇跡的にゼロであった。街の人々による救助活動は大きく取り上げられ、テレビや新聞を賑やかした。

 復興を遂げていく最中、街中で青い釣鐘状の花をつける植物が植えられた。その植物の名はマンドラゴラ。この街を救った英雄の名前である。

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そして、マンドラゴラは走り出した あきかん @Gomibako

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