第78話 瑠璃ノ島

 お父上様に。


『船で、一日半掛かる、稜禾詠ノ国の所有する島だ』


『稜禾詠ノ国との関わりを全て絶つ事は、承知しかねる』


『互いに、近況を知らせ合う事』


 他。いくつかの約束事を守る事を条件に、稜禾詠ノ国を離れる事を許して頂いた、私と湖紗若様。


『外喜の処分が済み次第。様子を見に来るから』


(もう、そろそろ来られるかしら……)


 そんな事を思いながら、湖紗若様と綺麗な海を見つめていた。


 島という言葉から、勝手にもっと。小さな島を想像していたけれど。とんでもない。


 島中がとても綺麗に整備されていて驚いたの。


『領地内にて、ここ数年、所有する島を開拓していたんだ』



 お父上様に対して、幼心にもっと稜禾詠ノ国に、目を向けて下されば良いのに……と思った事もあった。時に、領地を出てどこかに出掛けていたのは……


(その為だったのですね)



 ふと、湖紗若様に目を向けると。 9日程前に初めて会った時と同じ。今日も砂浜に敷物を敷いて座り、刺し子をしている女性の近くに座り、綺麗な大きな瞳を輝かせて見つめ。時に、女性の顔を見つめたりしてる。


 傍近くに控えてた女性が。


『 病気療養の為に、こちらの島に来られたのでございます』


 そう教えてくれて。



 湖紗若様は、ご自分の中で状況を理解して、特に女性に話し掛けるでもなく、寄り添い交流を深めている感じだった。


 -ジャリジャリ -


 私も、女性を真ん中に、湖紗若様とは、反対の場所へ腰掛けて海を見つめていると。後ろから白い砂浜をジャリジャリ音をさせて近付いて来る足音が聞こえて来て。


 振り返ると。


「ふうか様! みさ様!」


瑠璃るりちゃま!」


 この島に住む、とても可愛らしい六歳の女の子の瑠璃ちゃまで。


 私と湖紗若様は、お父上様がお作りになった、この島に来た時に常宿にしている、平屋建ての大きな家に住み始めたのだけれど。


 島民の皆さんは皆、優しく、とても良くしてくれて。瑠璃ちゃまのご家族は、この島の長をしているとの事で。特にお世話になっているの。


 ちなみに……湖紗若様は、今まで、自分と同年代の子供と接した事がない為か。少し時間が経てば、話をしたり遊び始めるのだけれど……


 瑠璃ちゃまに対しては、人見知りさんを発動している様子。


「瑠璃ちゃま、今日も海が綺麗ね。瑠璃ちゃまの名前と同じ瑠璃色で」

 


この島の名前を。


『るりのしま (瑠璃ノ島)よ。そう さまが つけたの』



お父上様が、名付けられのだと教えてくれた瑠璃ちゃま。


「きょうは そうさまが くるかもだわ」


 そんな事を言った瑠璃ちゃま。


 するとその言葉に女性が反応したの。


 そんな話をしてた時に。


「ふねが むかってきています フウひめさま!」


「本当だわ……」


 湖紗若様が沖の方を指差して。


 9日程前に私と湖紗若様が乗って来た『湖楓鈴 丸』

(嘘みたい ……)


 そう思ってたら。


 島に着いて、上陸して来たのは……



「お父上様、鈴兄上様、稜弥様、詠史殿、なずな……」


 それに。 おばば様に、おじじ様。凛実の方様も……


「おちちうえさま!」


 無邪気にお父上様に抱き付かれた湖紗若様。


「楓禾姫様!」


「楓禾姫!」


(稜弥様……詠史殿……)


 私は、なずなと抱き合って。




 そして……岸辺に船付き場に、女性とお付きの女性も着いて来ていたのだけど。




「ただいま。楓菜姫様 」



 お父上様がそう言われたの……

















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