第39話 お茶の誘い
-楓菜の方の部屋-
「失礼致します。楓菜の方様。今よろしいですか?」
湖紗若をあやしていた楓菜の方は。
「 ええ大丈夫よ」
障子戸の外から声を掛けて来た 、乳母の早月に答えると。
「凛実の方様付きの侍女のこずえが、お伝えしたき事があると参っております」
「こずえが? 分かりました。部屋に入ってもらってちょうだい」
楓菜の方は少し訝りながら、 返事を返した。
楓菜の方も、こずえの事は知っていて、庭師の基史の娘で。気立ても良いので。出来れば私付持女にしたかったくらいだわ。そう思い、残念がっているのであった。
緊張した面持ちで部屋に入り、障子戸の近くに座ったこずえに。
「 そんなに緊張しなくても良いのよ。こずえ? どうしました? の方に何かあったのですか?」
わざわざ、 自分の所来たのは……
( 凛実の方に何かあったんじゃ?)
そう考えるに至り、慌ててこずえに問い返すと。
「いえ。凛実のお方様におかれましては、体調崩されてるという事はございません。『湖紗若君様と共にお菓子など頂きながらお茶を致しましませんか? と お誘いしたい』と申されまして。楓菜のお方様の返事を。都合を聞きに参ったのでございます」
珍しい事があるものだ……と楓菜の方は正直思った。 正室である自分から、お茶の誘いをした事はあるが……凛実の方からは初めてだ。それに、湖紗若と一緒にと……
しかし、楓菜の方はすぐに思い直した。凛実の方。いつも自分の立場を誇示たりせず控えめなの方。 幼き頃からの関係せいの為であろうか? 時に爽に対して、遠慮なく物を言ってしまう自分。凛実の方の柔らかい雰囲気に、爽は癒されているのではないか? と思うのだ。
(そうね。ゆっくり 話をしてみたいわ)
楓菜の方は、そう思い至ると。
「 こずえ、支度が出来次第、凛実の方様の部屋に参りますのでと。先に戻ってお伝えてして下さい」
「かしこまりました」
こずえはそう返事をすると部屋を出て行った。
「 楓菜の方様、 大丈夫でしょうか? 私も付いて参ります」
警戒心をにじませている早月。
少し、顔色も悪い。けど……
「早月。悪いけど、剣術の稽古に出掛けてしまって帰ってくる気配のない楓禾姫を、ここで待っていてちょうだい。帰って来たら『次はお花の稽古です』と。 逃がさないでね(笑)」
「ほほほ。 かしこまりました。楓菜の方様。(笑)」
途端に表情を崩して笑った早月に、 ホっとし。後を託すと。
楓菜の方は凛実の方の部屋に、湖紗若と共にむかった。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます