第30話 愚かな親心 2
稜禾詠ノ国 ……否、日の本の国全体で、男から女性に婚姻の申し込みをするものである……
その価値観に縛られて、楓希姫自ら……後悔の念を抱いたはずなのに。
楓菜姫の想いを叶えてやりたい……親の我が儘から。これも根強い価値観。相手の出自を気にして、先回りして楓菜姫に確認を取ったり……
相手が爽である……兄の幸の息子。陽からしたら、甥である。と安堵して……
身勝手な親だ。と思いつつ、 爽に楓菜姫の想いを伝えて……
楓菜姫を幸せにしてあげて欲しい……生涯守り抜く覚悟をして欲しい。
少しでも早く知らせたなら、楓菜姫と婚姻するのだ。と覚悟を深めてくれるのではないか……
愚かなる親の暴走を、はるかに爽は越えて来てくれたのである。
婚姻の申し込みを、楓菜姫より先に……
陽が古きしがらみに縛られたり、勇気が出ずに。"諦めた"事を……
陽は、 爽が羨ましかった。
楓希の方と、二人。楓菜姫は爽と共に幸せになれると安堵していたのに……
「『私』より『公』。楓菜姫の覚悟が痛い程分かるから辛うございます。私も跡継ぎが出来なかったら……どうすべきか考えましたから……領主として、稜禾詠ノ国を優先なさい。より、 愚かな親の……せめて側室より先に子供を授かりますように…… そう祈る事をお許し下さい」
「楓希姫、私も同じ想いゆえ……愚かな親でございます。楓菜姫の決断を見守りましょう……」
さめざめと泣く楓希の方を、抱きしめ、慰めながら。 その言葉しか言えない。己……
(楓菜姫……)
陽は歯がゆくて、情けなくて……仕方なかった。
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