第11話 それぞれの想い4(詠史)

詠史side


楓禾姫を見つめていた。


湖紗若の目線の高さに身を屈め、湖紗若に微笑みながら話掛けたり、頬を摘まんでみたり。撫でて差し上げたりしておられる。


 まるで美しき絵を見ている様な……


 多少、趣味程度に絵を描く私は、楓禾姫と湖紗若を描いてみたいと思いつつ……なぜだか、冷静ではいられなくて…


 その時だった。フイに湖紗若が同じ様にお二方を見つめていた。稜弥様と私の方に視線を送って来られたかと思うと。


 ニヤっ。と右口角を軽くお上げになられて……


(……ホー……やりますね? 湖紗若)


 思わず(内心は動揺しているのに)余裕ぶって。右口角上げて微笑み返してしまったのだけど……隣におられる稜弥様の ご様子を横目に伺うと。やはり同じ様に左口角を上げられ、微笑まれている。


 そして湖紗若は、私達に見せつける様に楓禾姫に抱き付かれたりと、 思いっきり甘えられていて。


 お小さいのに……


「ふふ……中々……侮れませんね。詠史殿」


「本当に……侮れませんね。稜弥様」



 などと同意しつつ。


 私にとっては、貴方様も侮れないと思っているのですがね……


 そんな事を考えつつ。視界の隅では、鈴様となずな殿がお二人の世界を醸し出しておられて。


 何かが起きる予感に、私は、心がザワつくのを 感じていたんだ……

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