第10話 それぞれの想い2(鈴)

鈴side


 なずな……楓禾姫の乳姉妹ちきょうだい


楓禾姫の乳母の娘。



 睦月の二十五日に生まれた楓禾姫より、半年早く。*文月ふみつきの七日に生まれたなずな。



 まるで姉妹のように仲の良い楓禾姫となずな。


 この……**伏魔殿ふくまでんの中、楓禾姫を心から想い。若湖紗を慈しんでくれて。二人の一番の味方でいてくれるなずなに、私は深く感謝しているのだ。



楓禾姫を慈愛に満ちた瞳にて見つめている、稜弥殿に、詠史殿……を。どこかぼんやりと見つめているなずな。


「なずな!」


「は、ハイッ! 鈴様っ」


「ハハハ。急に話しかけてすまなんだ。なずな。私はいつもそなたに感謝をしているのだ。楓禾姫の一番の理解者で居てくれて。湖紗若を慈しんでくれて。楓禾姫も、そなたにだけは胸の内をさらけ出し、頼りにしているしな。この先もずっと楓禾姫を頼むんだぞ」


「ハイ。鈴様。お約束致します」



 そう伝えた瞬間。なぜか寂しそうな表情を見せたなずな……



 なぜ? なずな……そんなに泣きそうな顔をしているのだ? 


 この時に芽生えた想いは……


 なずなを守ってあげたい……


 なぜか泣きたくなるような……不思議な感情の意味を。私の気持ちの変化を気が付かずにいたのだ……


*文月 七月

**伏魔殿 陰謀などが絶えず企くまられる場所

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