第9話 それぞれの想い1(なずな)

 なずなside


楓禾姫様を慈愛に満ちた瞳にて見つめておられる、稜弥様に、詠史様……楓禾姫様は気が付いておられるかしら? 


「なずな!」


「は、ハイッ! 鈴様っ」


 ぼんやりと考え方をしていた為に、急に鈴様にお声を掛けて頂き、驚き過ぎて思わず大きな声で返事をしてしまった私。


(鈴様に、なんて失態を見せてしまったのかしら…… 恥ずかしい……)


 頬が熱い…… 少しでも頬の赤みよ治って…… と両手で冷やしていたら


「ハハハ。急に話しかけてすまなんだ。なずな。私はいつもそなたに感謝をしているのだ。楓禾姫の一番の理解者で居てくれて。湖紗若を慈しんでくれて。楓禾姫も、そなたにだけは胸の内をさらけ出し、頼りにしているしな。この先もずっと楓禾姫を頼むんだぞ」


「ハイ。鈴様。お約束致します」


 私は、鈴様が楓禾姫様との事を見ていて下さった事が嬉しくて…… と同時に、そこまで鈴様に心配してもらい、目を掛けてもらえる楓禾姫様が羨ましい……と思ってしまったの。


(このような事…… 楓禾姫様に感じるなど…… なんて私は愚かなのかしら……?)


 この時私は、己の心の中芽生えたこの感情の意味を……


 理解出来ずにいたの……

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