第18話
公務があるというベルンハルトとは学園前で別れた後でユリアーナと一緒に馬車に乗り込む。
フィーネも中に入れば良いのに御者台に行ってしまった。おそらく私とユリアーナに気を使ってくれたのだろう。
「まさか風紀委員会の設置を提案するとは思わなかったわ」
「生徒会の仕事量が多いと大変じゃない」
「確かにそうね」
苦笑しながら答えると納得の表情を向けられる。
無理をすると碌な事にならないと前世で教えられた。疲れた身体でふらふらして馬車に轢かれるという可能性だってあるのだから。
「帰ったら風紀委員会の資料を作らないと」
「手伝うわよ」
「ありがとう。こういう時はパソコンとプリンターが欲しいわね」
「分かる」
カメラ、ビデオのような魔法道具はあってもパソコンのような物はない。あれば良いとは思うけど作り方が分からないので提案しようもないのだ。
パソコンは無理でもタイプライターなら作れるかしら?
そう思ったが構造を知らないので無理だろう。
「それにしてもヘンドリックが生徒会顧問だとは思わなかったわ。ゲームと全然違うのね」
ぼんやり便利グッズについて考えているとユリアーナから言われる。
彼女もヘンドリックが生徒会の顧問である事は意外だったみたいだ。ここまで色々と変わり過ぎているとゲームの知識は使えないかもしれない。
今更使う必要もない気がするけど。それにしても今はヘンドリックの事だ。
「ヘンドリックね…」
「妙に気にしているわね」
「バレてた?」
バレないようにしていたつもりだけどユリアーナに気付かれていたみたいだ。彼女にバレていたという事はベルンハルトも気が付いていたのだろう。
今度二人になったら何か聞かれるかもしれない。
別にやましい事はないので聞かれても良いのだけど。
「昔ヘンドリックと会った事があるような気がするのよね」
「そうなの?」
「妙に懐かしい感じがするの」
「貴族だし、どこかで会っていてもおかしくはないでしょ」
「でも、向こうからは何も言われなかったわ」
もし会っていたとしたら何か言って来そうなのに何も言われなかった。隠しているだけかもしれないけど。
歳の近いアードリアンはともかく父か母に聞いたら何か分かるだろうか。
こちらをじっと見つめてきたユリアーナに「浮気?」と揶揄うような口調で尋ねられる。
「違うわよ。ただ少し気になるだけ」
「その発言はベルンハルトには黙っていてあげる」
「どうもありがとう」
ベルンハルトにバレたらまたヤキモチを妬かれてしまいますからね。仕方ないです。
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