第34話
「僕にプレゼント?」
ベルンハルトに贈る万年筆が届けられた日、そのまま彼のところに向かった。
早く渡したかったのだ。
黒い箱を手渡すと「中身を見ても良い?」と聞かれるので頷く。個人的には良い物を選ぶ事が出来たと思うけど彼が気に入ってくれるかどうかは分からない。
ドキドキしながら感想を待っていると俯いて震え始めるベルンハルトが居た。
この反応はもしかして失敗した?
「ベルン?もしかして気に入らなかった?」
声をかけると勢いよく抱き着かれて背もたれにぶつかる。
一瞬だけど嬉しそうな表情が見えた気がしたけど勘違いだった嫌なので彼からの言葉を待つ。
「とても嬉しいよ」
向けられたのは満面の笑み。
顔が良いのでそれだけでも凄まじい破壊力なのに好きな人と思うと心臓が壊れるのでは?と思うくらいドキドキする。
頰がだらしなく緩む。酷い顔をしている自覚があるので見ないで欲しいと彼の肩に顔を埋める。
「リーゼ、どうした?具合悪い?」
「い、いえ…。大丈夫だから」
さっきの笑顔は無自覚で出したものなのだろう。そうじゃなかったら彼があんな風に素を出す事はない。
笑顔一つで人をこんな駄目にさせるのだから本当に狡い人だ。
「よ、喜んで貰えたみたいで良かったわ」
「どこを見て言ってるんだ…」
彼にしがみ付くのをやめたは良いけど顔を見る事が出来ず部屋の隅っこを見つめながら話す。
覗き込もうとされるので首を曲げてはいけない方向に向けようとしてグキッと音が鳴る。
痛めたわ。おかげで冷静になれたけど。
「凄い音したけど大丈夫?」
「痛めたみたい」
「曲げてはいけない方向を見ようとするからだよ」
贈り物を渡すだけの予定だったのにどうして首を痛めて治して貰っているのだろう。
魔法で治療してくれるベルンハルトに情けない気持ちになる。
「大丈夫?」
「うん。ありがとう」
「良いよ。それよりも急に贈り物ってどうしたの?」
「今まで避けていたお詫びと…その、恋人になった記念?」
いざ本人に言うとなると恥ずかしくて堪らない。
お詫びというところで留めておけば良かったと後悔する。
ベルンハルトは驚いて、そして優しく笑った。
「あまり可愛い事しないで欲しいのだけど」
頰を撫でてくる手がやけに熱い気がする。ゆっくりと触れるだけのキスを贈られて茹で蛸状態だ。
「ありがとう、一生大切にする」
「流石に一生は無理じゃない?」
「これでも物持ちは良い方だよ。それに壊れても絶対に捨てない」
私の恋人は私に甘過ぎる。
そんなところも含めて全てが愛おしくて堪らない。
「あの、ベルン…」
「ん?」
「いえ、何でもありません」
不思議そうに首を傾げる彼に今度は私からキスをする。
今の言葉の続きはいつか伝えますからもう少しだけ待っていてください。
ベルンハルトは初恋の人です。
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第3章はこれで終了です。
第4章はいよいよ学園に入学します。
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