第12話
「主人公について何か分かったらすぐに教えるよ」
結局ベルンハルトは主人公の情報を集めるらしい。止めたい気持ちもあったが彼女についての情報が得られた方が私としても助かる。
そういうわけでベルンハルトの好きにさせる事にしました。
「分かったわ。もう帰るのよね?」
「何?まだ居て欲しい?」
「いえ、あの…」
居て欲しいとは言えなかった。
ベルンハルトは王太子としての公務が既に始まっている。忙しい身でありながら私のところに会いに来る時間を作っているのだ。
一年前にお茶会の回数を減らしませんかと聞いた事があるけど笑顔で断られた事がある。
あの頃は納得出来なかったが今となっては私を諦めないで居てくれた事に感謝しかない。
「本当に可愛いな…」
まだ居て欲しいと思った事がバレてしまったようだ。
袖を引っ張ってるのですから当たり前です。
「我儘ですみません」
流石にこれ以上は迷惑をかけるわけにはいかない。袖を摘む指をそっと離した。
「嬉しいよ。まだ居たいところだけど今日は外せない仕事が残ってるんだ。今度来る時はもっとゆっくり出来るようにするよ」
離した手の甲にキスを贈られました。
ぎゅっと握り返します。
「待っているけど、その…」
「ん?」
「あの、私も会いに行っても良い?」
今まで王妃教育を受ける為、王城に出向く機会は多かった。ただお互いに忙しいからというのを言い訳にして会って居なかったのだ。
今は会える時は会いたいから。
「不味いな…」
「えっ」
「リーゼが可愛過ぎて帰りたくない」
思い切り抱き締められます。
「王城までついて行く?」
「駄目、今度は帰せなくなる」
「それは駄目ね」
「仕方ない。帰るよ…」
ぎゅっと抱き締める力を強くした後、ゆっくり離されてしまう。
「またすぐ来る」
「待っているわ。私も会いに行くから」
「昔、睡眠時間が削られるのを嫌がってた子と同じ子とは思えないな」
「今その昔話を出すのはやめて」
笑われてしまいます。
確かに昔は寝ることに貪欲になってましたけど、あれは前世の社畜生活から解放された反動があったからだ。
六年も経てば落ち着きますよ。寝るのは今でも好きですけどね。
「次その話したら怒るから」
「それは嫌だな」
「私だって怒るのは嫌。面倒だから」
「面倒臭がりなところは変わってないな」
面倒臭がりなのは前世の私とトルデリーゼの共通の性格なので変えようがない。
「そろそろ帰るよ。今日はここで良いから」
「お見送りは要らないの?」
「今日玄関まで見送られると使用人達までにキスを見られるよ」
「……ここで良い」
「残念。屋敷の人間にも見せつけたかったのに」
そう言ってキスを贈ってくるベルンハルト。
やっぱり見せつけたかった気持ちあったんじゃないですか。
「じゃあね、また今度」
「はい、また今度です」
またキスされました。
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