幕間11※ベルンハルト視点
お茶会の最中。
母上とイザベラ、トルデリーゼとユリアーナ嬢が座った席を見つめる。
一体何の話をしているのだ。
目が合った母上に来いと呼ばれたような気がして一緒に居たアードリアン達を連れて向かった。防音結界が張られている中で繰り広げられていた会話が聞こえてくる。
「はい、大好きです。ユリアは一番の親友ですから」
トルデリーゼは恥ずかしそうに、嬉しそうに笑う。
彼女の一番は僕じゃないのか。いや、でも、今トルデリーゼは親友と言った。友達の中で一番の話をしているのかもしれない。
「リーゼ、ユリアちゃんを大事にしないと駄目よ」
「勿論です」
「私もリーゼ様を大切にします。リーゼ様の騎士になるのが私の夢ですから!」
「あら素敵!」
「ふふ、うちの子をよろしくね?」
「が、頑張ります」
穏やかに楽しそうに会話をする女性陣を僕達は見つめる事しか出来なかった。邪魔をするわけにはいかなかったからだ。
「ねぇ、リーゼちゃん」
「はい」
母上が一瞬こちらを見た。
嫌な予感がするが何を言うつもりなのだろう。
「ベルンとユリアちゃん、どっちが好き?」
どうしてそんな事を聞くんだ。
トルデリーゼはどう答えるのだろうか。
「………ユリアです」
終わったと思った。
愛情表現は他の人よりしてきたつもりだったのにユリアーナ嬢に負けた。
「あの……決してベルン様が嫌いだと言うわけではなく……えっと、その今はユリアの方が大切なので」
言い訳も思いつかないのか!
「リーゼ様、今言うべき事じゃないわ」
僕の存在に気がついたユリアーナ嬢がトルデリーゼに声をかけた。
気を遣ってくれたのだろう。
そして母上は僕を見て大笑いしている。
「フラれちゃったわね、ベルン」
「え?」
「本当に母上は意地が悪い…」
こんな会話を息子に聞かせるあたり性格がひん曲がっている。
そして答えを聞いた後に話しかけてくるな。
「べ、ベルン様…」
リーゼはいつからそこに居たのかと言いたそうにしてきた。
「君がユリアーナ嬢を一番の親友だと言っていたところから居ましたよ」
笑顔で答えれば、彼女の表情が強張った。
「ベルン様、可哀想ですね…」
「ベルン様、元気出して…ください」
アードリアンとディルクが笑いながら言ってくる。フィーネも顔を逸らして笑っているし、エリーアスに至ってはどうしたら良いのか分からず困った表情を見せていた。
「いや、あの…」
「リーゼ」
「はい!」
僕の想いは全然彼女に伝わっていないのか。
それなら伝わるようにみんなの前ではっきり言ってあげるよ。
「僕はリーゼが一番ですよ?」
「いや、あの……」
「僕はリーゼの一番になれませんか?」
トルデリーゼは必死に言い訳を考えているように見えた。
僕の言葉から逃げようとしているのが分かる。また駄目なのだろうか。
「あ、あんな身勝手な事をした人がそういう事を言わないでください!」
「身勝手な事…?」
あんな身勝手な事って何だ?
首を傾げると信じられないと目を開くトルデリーゼが居るが全く心当たりがない。
僕が何をしたと言うのだ。
「忘れたのですか?」
「身勝手な事ですよね?思い当たる事がないのですが…」
ちゃんと自分の意見を言えば、何故かリーゼは泣きそうな表情をする。
どうして、何故…。
「何故、泣きそうになっているのですか…」
焦って尋ねるが彼女よりも早く睨みを効かせてくる人達が居た。
「ベルン。貴方、リーゼちゃんに何をしたの?」
「ベルン様、事と次第によっては父に相談しますよ」
母上とアードリアンからは冷たく言われ、エリーアスとフィーネは強く睨んできた。
「ベルン様、何をしたか知らないが謝った方が良いじゃないですか?」
「悪い事をしたら謝るべきだと思いますよ」
ディルクやユリアーナ嬢にまで言われるが何をしたのか全く分からない。
「ベルンハルト殿下、リーゼを傷付けるような真似をしたのですか?」
トルデリーゼの母であるイザベラから笑顔で尋ねられた。
不味い、非常に不味いぞ。
笑顔なのに恐怖を与えてくるイザベラに冷や汗が流れた。
「えっと、その…」
全員が僕を責める中、この状況を作ったリーゼだけが申し訳なさそうにしていた。
助けを求めるなら彼女しか居ない…。
「リーゼ…」
僕が名前を呼べば仕方ないって雰囲気を出してくるトルデリーゼ。
「本当に覚えてないのですか?」
「いや…」
僕は彼女に何をした。
身勝手な事と言われるくらいだ。とても嫌な事をしたに違いない。
僕は何をした。記憶力だけは良いだろ、思い出せ。
全く思い出さない僕に呆れたのかリーゼは吐き捨てるように言った。
「私のファーストキスを勝手に奪ったくせに…」
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