第21話
私とベルンハルトの入場後、主催者である王妃様が入って来る。
凄いですね。私達二人に向いていた視線を一瞬で掻っ攫っていきました。
主催者なので当たり前な話だけど、仮に主催者でなくとも他の貴族とは比較出来ないオーラの持ち主なので注目されていただろう。
あっ、こちらを見ました。
愛らしいウインクを貰いましたよ。
ちらりとベルンハルトを見ると苦笑いをしているように見えた。顔に出ていないので私の憶測に過ぎないけど。
彼も表情を隠すのが上手いのです。
「全く母上は…」
「集中してください」
愚痴をこぼそうとするベルンハルトに言います。
別にさっきの仕返しではないですよ?
王妃様が挨拶しているからです。
「はい……はい」
さっきの仕返しですか。
と、私も集中しないといけませんね。
「それではみなさん、楽しんでください」
あ、挨拶終わっちゃいましたよ。
私も集中出来てなかったですね。反省です。
「母上のところに行こうか」
「はい」
主催者である王妃様への挨拶は身分が高い人から。ですので私達が最初です。
「ベルン、リーゼちゃん、いらっしゃい。挨拶はちゃんと聞かないとダメよ?」
はい、バレてました。
小声で注意されたので周囲には聞こえてないと思いますけどニコニコとされている。
笑顔が若干怖いです。
ベルンハルトを睨んでしまったのは思わずです。
「集中出来ないようにしてきたのは母上です」
言い返さなくて良いですから。
小さな声で「挨拶しましょう」と言えば王妃様はまたにこりと微笑んだ。
「そうね。ベルン、ヴァッサァ公爵令嬢、本日はよく来てくれました。楽しんでくださいね」
「ありがとうございます、母上」
「ありがとうございます」
王族に見せても恥ずかしくない礼をする。
初対面じゃないので名乗りは不要です。
「あ、後でエントランスであった面白い催し物について聞かせてね」
「母上…」
「き、機会がございましたら」
あれを催し物扱いとは王妃様おそるべし。
しかし絶対に詳細を聞かされているのに私達からも聞こうとしているあたり揶揄う気満々でしょうね。
別に良いですけど控室の会話は絶対に教えません。
王妃様の側を離れると今度は別の公爵令嬢が挨拶をしに行ってます。
ド派手な赤のドレスに、ド派手な化粧。
お茶会の度に思うのですが若いのにがっつり化粧するって肌に悪くないですか?
私も一応してますが近くで見て分かる程度です。
「リーゼ、あっちにディルク達がいる」
「どこですか?」
「ほら、あっち。入り口近くだよ」
そう言われて入り口近くを見ると確かにディルクとエリーアスが話していた。二人の隣にはユリアーナも立っている。
あっ、こっちに気がつきました。軽く頭を下げてくれるので笑って返します。
早く話したいところですが、ユリアーナ達の王妃様への挨拶が終わるまでは話しかけられません。
公爵家、侯爵家が終わって伯爵家ですからね。
「あ、リーゼが好きなチョコレート置いてあるよ」
「どこです」
「凄い食い付き方…。そこだよ」
目の前を指差されます。
早く食べたいです。きっと王妃様が用意してくれたのでしょうね。感謝しかないです。
「良家の子供よりチョコレートって…」
だって好きですから。
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