第14話
「無魔法ね…。それまた厄介なものをお持ちで」
屋敷にやって来たユリアーナと向かったのは私の自室。フィーネに下がって貰った後、無魔法について説明をした。
誰にも聞かれないように防音結界を施した後で、ですけどね。
「ユリアはチート能力ないの?」
「チートって呼んで良いか微妙だけど一応あるわよ」
ぴたりと固まった。
あるの?
前世持ちは全員そういうのを持っているものなのだろうか。
「私のはリーゼ様の無魔法に比べたら平凡だけどね」
「聞いても良い?」
「私、剣技を覚えるスピードが異常なのよ」
「剣技?」
「そう一度見れば身体が勝手に覚えちゃうの。私の記憶力関係なしに自然と身体が動いてしまうのよ」
それは確かにチートと呼んでも良い内容だ。
私は魔法師の家系。
ユリアーナは騎士の家系。
お互いに得意分野でチートを待たされたのだろう。
「私のは理解出来る範囲内だけど無魔法は滅茶苦茶過ぎよ。最強じゃない」
「使い道がないけどね」
「確かに」
決して公には出来ない魔法だ。
いつか使う場面が来るのだろうか。
「とりあえず今は様子見という事にしているわ。何か変化があったら相談させて」
「任せなさい」
胸を張って笑うユリアーナが頼もしく見えて仕方ない。
同じ前世持ちがそばに居てくれるのはやっぱり助かる。
「私の話を先にしちゃったけど騎士になる件はどうなったの?」
「うん?家族全員に認めて貰ったわよ」
本気で騎士を目指す気なのかと頰を引き攣った。
「結局ディルクとは仲直り出来たの?」
「剣をぶつけ合う事で分かり合える事もあるものね」
どこか得意気に笑うユリアーナ。
何となく何があったのか想像出来てしまう。
「お父様とお母様にリーゼ様を守る騎士になりたいって話をしたら喜んで応援してくれたわ」
「ディルクは?」
「最初は大反対。お前は俺に守られていれば良いって大騒ぎよ」
「カッコいい台詞ね」
「そうなの、あの時のディルクってば本当にカッコよくて…ってその話は良いのよ!」
ディルク推しの彼女の事だ。かなり悶えたのだろう。
「私は守られるような弱い人間じゃないって叫んだら大喧嘩。最後は剣でディルクに勝てたら認めてくれる事になってね」
「う、うん…」
どうして剣で勝負になるのだと思うが騎士の家系だからだろうと自分を納得させた。
「私、色んな騎士の動きを見て学んでいたからね。圧勝しちゃったのよ…」
「それで認めさせたのね」
「うん。ディルクってば笑いながら『確かに守られる存在じゃないな』って…あの時の笑顔は可愛かったわ」
単純ですね。
ツッコミを入れたいところだけどディルクは脳筋キャラだ。単純で正解なのだろう。
「ついでに魔物事件の話もしたわ。ディルクは何も悪くないってちゃんと伝えたの」
「彼は何て言ってたの?」
「俺が悪いってしつこかったから『いつまでも引き摺っているから私に負けるのよ、ばーか。弱い人間に守られたくないわ』って言ってやったわ」
淑女として完全にアウトよ、それ。
「ディルク、単純だから『もう引き摺らない。二度とユリアに負けないからな!』って叫ん
でいたわ」
本当に単純だ。
それで良いのかと思うが二人が良いなら良いのでしょう。
「どっちが早く騎士になれるか競争になる始末よ。そのおかげで毎日仲良く剣の稽古をしているのだけどね。ライバル扱いされているのは女として微妙な話よ…」
「良いじゃない。仲良し兄妹に戻れたのだから」
「煽り過ぎたせいで完全に弟扱いだけどね」
自業自得では?と言いたかったが口を噤む。
余計な事は言うべきではないからだ。
何はともあれ解決出来て良かったとしか言いようがない。
解決方法はあれだけど。
「頑張って立派な騎士になるからね!」
「え、えぇ、無理し過ぎないようにね…」
悪役令嬢ユリアーナがどんどん別人になっていく感覚に苦笑いが漏れた。
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