第11話
ユリアーナの話を聞き終わり苦笑いになる。
「ベルンハルトとアードリアンの面倒臭さは異常だったわ」
「それはごめんなさい」
「リーゼ様が悪いわけじゃないから気にしないで」
残された側の事を考えず誘拐された私が悪いのだ。謝るのは当然の事なのにユリアーナはへらりと笑ってみせた。
「それに関しては良いのだけど…ディルクと空気が悪くなったのが最悪ね」
「喧嘩みたいになっちゃったのよね?」
「私の発言の仕方が悪かったのよ。ディルクは私を弱い人間だと思っているし、魔物に襲われた一件で守らなきゃいけないって意識が強いの」
前にも聞いたような気がするが二人の関係を修復させる為にはどうしたら良いのだろうか。
「私が前世の記憶を取り戻さなければ良かったのかしら」
「それはそれで破滅していたのでは?」
「どちらにせよディルクとの関係は悪くなるって事じゃない」
苦笑するユリアーナ。
こういうのを強制力と呼ぶのだろうか。
「記憶を取り戻す前みたいに接してあげれば良いのでは?」
「常にベタベタしろって言うの?」
「ベタベタしろとは言わないけど、子供っぽく甘えてあげるとか?」
「子供相手に?」
中身が大人である限り子供に甘えるのは難しい話か。
私もアードリアンには甘えられないので気持ちはよく分かる。
「弱くないところを見せてあげるとか?自分は守られなくとも平気だと教えてあげるのが一番だと思うけど」
それで二人の関係が完全に良くなるとは思わないが今よりはまともなものになると思う。
ディルクも罪悪感に苛まれる事もなくなるでしょう。
「確かに目の前で魔物討伐をしてみせるのはありね」
「魔物は過去のトラウマを呼び起こすのでやめた方が良いと思うけど…」
きっとユリアーナが魔物の前に飛び出して行ったらディルクは取り乱すだろう。
私の言葉に彼女は「それもそうね」と苦笑いを向けた。
「弱くないってところを見せるには…」
こちらを向いたユリアーナは「あ…」と小さく声を漏らす。
「私も騎士を目指せば良いのよ!」
「は?」
それ今関係ありますか?
彼女をじっと見つめるとにやりと笑われた。
「騎士を目指すようになればお転婆娘だと思われるでしょ!」
「ええ…」
「それに騎士を目指すような女が弱い人間だと思われる事もない!守られるより守りたい側だと伝えられるわ!」
それはどうなのだろうか。
ユリアーナの思考が全く理解出来ない。
「言ってなかったけど幼い頃のユリアーナはお父様に憧れて騎士を目指していたのよ。また目指したいと言ったらディルクだって喜んでくれるわ!」
「う、うーん…どうかしらね。止められない?」
「止められても目指すのよ!本気だと分かってもらうわ!」
何一つ理解出来ないけど彼女がそれで良いと言うなら良いのだろう。
決して考える事が面倒になったわけじゃありません。
「私、女騎士になってリーゼ様を守るわ!」
「ディルクとの関係修復はどこに行ったのよ!」
「それもあるけどリーゼ様は将来的に王妃様でしょ?一緒に居たいし、守ってあげたいから騎士になるの。不純な動機かしら?」
「い、いや、良いんじゃないの?」
色々と話がぶっ飛び過ぎているような気がするけど彼女がそれで良いと言うなら…。
本当に騎士になるか置いておいてディルクとユリアーナの関係は経過観察という事になりそうですね。
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