第3話
待ち合わせは町の中心にある噴水広場。
途中までは馬車で向かい、後は徒歩です。
「リーゼ疲れてない?」
「疲れてませんよ?」
ちょっと歩いたくらいで疲れると思われているのだろうか。
疑問に思っているとフィーネが解決してくれる。
「普段のお嬢様でしたらすぐに気怠げな雰囲気を出されますから」
「あぁ。今日はお出かけが楽しみだから疲れません」
アードリアンに「そっか」と頭を撫でられた。髪色が違うせいで別の人に撫でられているような気分になるが撫で方は完全にアードリアンだ。
「お兄様。あの方々、ディルク様達ですよね?」
「みたいだね」
待ち合わせの場所には既にディルクとユリアーナが待っていた。
二人の髪色も赤髪から茶髪に変わっているし、服も平民風になっているが溢れ出る貴族オーラが隠しきれていない。
「お待たせしました」
「お、来たか。後はベルンだけだな」
「みたいですね」
「もう来てるぞ」
後ろから声が聞こえて全員で振り向くと黒髪に眼鏡をかけた少年が座っていた。
ベルンハルトがへらりと笑う。
「おはようございます、ベルン様」
「おはようございます、リーゼ。今日は様付けじゃなくて良いですよ?」
「遠慮しておきます」
アードリアンやディルクと違って王族を呼び捨てにするのは無理です。
あと近いし、手を取ろうとしないでください。
「さぁ、ユリア、フィーネ。行きましょう」
「はいっ!」
ベルンハルトから逃げるようにユリアーナの手を取って歩き出します。
「仲良いな…」
「元気出せよ」
「ユリアーナ嬢の方が大事にされてますね」
後ろから仲良しトリオもついて来ます。
勝手に仲良しトリオっていうのも変な話だけど攻略対象者三人は仲良しでいつも楽しそうにしている。
「ベルンハルトの事、放置で良いの?」
「良いのよ」
ユリアーナが耳打ちしてくるので即答すると苦笑いを向けられる。
「あ、あのお店、気になります!」
「ユリア、走るなよ。転ぶぞ」
「お兄様、恥ずかしいのでやめてください」
ユリアーナの演技力は見習うべきなのだろう。
普通の少女に見えますよ。
いや、あれは推しに手を繋いでもらってにやけるのを我慢している顔ですね。
「あ、チョコレート専門店…」
「行きたいの?」
いつの間にか隣に来ていたベルンハルトに尋ねられるので頷く。
もちろん行きたいですよ。
「気になりますね」
「ユリアーナ嬢の行きたいお店が終わったら行こうか」
馬鹿にしたように笑いながらも提案してくれるベルンハルトに頷きます。
ユリアーナ希望のテディベアのお店に入る。
「欲しいの?」
「前世の頃から集めるのが趣味だったのよ」
頰を赤く染めながら言うユリアーナ。いい大人がテディベアを集めていた事が恥ずかしいのだろうけど可愛い趣味だと思うくらいだ。
「私もぬいぐるみは好きだったけど」
「慰めてくれてありがとう」
「普通に可愛い趣味じゃない」
ユリアーナと話していると居心地悪そうにするのは男子三人組だ。
「さっさと買うもの決めて出てあげましょうか」
「そうね」
私達は中身が大人ですからね。
気を遣いますよ。
「お揃いの物、買いましょう」
「リーゼ様から言い出されるとは思わなかったわ」
「友達とお揃いの物は欲しいと思うでしょ?」
割と普通の事を言っているつもりなのに何故か悶え始めるユリアーナに首を傾げる。
「あー、ベルンハルトが惚れるのがよく分かるわ。そういうところ狡い」
「どういうところよ」
「さらっと人が喜ぶ事を言うところよ」
言いたい事を言っているだけだからよく分からない。
「もう良いから早く選びましょう」
ユリアーナは苦笑いを浮かべながら頷いてくれた。
テディベアのお店を出た後はチョコレート専門店に向かい。その後アードリアンがリクエストした本屋さんに入った。
ユリアーナとお揃いのぬいぐるみも、チョコレートの詰め合わせも、大量の本も家に送って貰うようにした。
帰ってからが楽しみです。
「ディルクはどこに行きたい?」
「武器屋かな」
「全く君は…。僕たち三人で来てるわけじゃないんですよ」
「あっ、わりぃ」
ディルク様は私とユリアーナ、フィーネを見て謝りました。
私は気にしないけど普通のご令嬢とのデートではやらない方が良いと思う。
特に主人公とのデートではやめておいた方が良いだろう。
「私達は向かい側のお店で待ってますよ」
「あのカフェ?僕もついて行くよ」
「リアンお兄様も新しい剣が欲しいと言ってたじゃないですか。あそこならテラス席もあって人の目も多いです。護衛も控えてくれていますから三人で楽しんできてください」
「女の子だけで話したいならそう言ってください。リーゼの場合は休みたい気持ちも入っていそうですが」
ベルンハルトは本当に私の事をよく分かっていますね。
休みたいですし、ユリアーナと話がしたい。
他の目的もありますけど。
「何かあれば私がお守りしますので」
フィーネのダメ押しで納得してくれたようでアードリアン達はお店の中に入って行きます。
「私達も行きましょうか」
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