幕間8※ランベルト視点
トルデリーゼとベルンハルト殿下が出て行った後、部屋の中に防音結界を作る。
「さて、トルデリーゼ嬢の話をしようか」
さっきまでの戯けた雰囲気とは全く異なる国王としての風格を出す男に視線を向けた。
「ランベルト、確認だ。彼女はまだ無魔法の存在に気が付いてないのだな」
「周りに魔法を使う人間がいませんからね。家の者には魔法の使用は制限させていますし」
「そうか。なら良い」
「リーゼの魔力制御は日々上達しているようですので近いうちに問題はなくなるでしょう」
「そうだな。私も昔は制御するのに苦労したよ」
国王陛下は火、光、風の魔法を使う事が出来る人物だ。幼少期は魔力制御が上手く出来ず何度か死にかけた事もあったという。
そう、あり過ぎた力のせいで普通に死ぬ事もあるのだ。私の兄のように。
故に四種の魔法を使用出来るだけの魔力を保持しているリーゼが私は心配なのだ。
前例がないので余計に。
ガブリエラは魔力を制御するために無意識のうちに感情を抑える傾向にあると言っていたが、おそらくそれは事実なのだろう。
トルデリーゼは昔から口数が少なく無表情である事が多かった。
それが最後に高熱を出した後からは人が変わったようになってしまった。感情を表に出しているのに魔力を制御出来ている。
何があの子をそうさせたのかは私には分からないが良い事なのだろう。
「あの子を利用する真似はしないという約束は果たしてくださいね」
「分かっておる。トルデリーゼ嬢は我が国の宝だ」
魔法の存在を大切にしているこの国にとってトルデリーゼは国宝と言っても良い。
しかし特別な存在であろうとなかろうとあの子は私にとって宝だ。
「大切にする事を父親である貴方に誓いますわ」
「ありがとうございます。それから…」
「分かっておる。まだベルンには伝えない」
「殿下を信用していないわけではないのです」
ベルンハルト殿下はまだ幼い。
優秀な子だと知っているし、トルデリーゼを思っている姿は見ていて微笑ましいと思う。
しかし若過ぎるのだ。
いつか彼が道を踏み外し、トルデリーゼを利用するような真似をしたら許せない。
王族だろうとお構いなしに私は彼を殺すだろう。
「あやつが成人するまでは絶対に話さぬ」
「ベルンハルトに全てを話せないのは心苦しいですがリーゼちゃんを守る為です」
「感謝いたします」
深く頭を下げる。
「しかしベルンは良いとして、リーゼちゃんには無魔法の存在を伝えるべきなのでは?」
「せめて後二年は伝えない方がいいでしょう。急に特別な魔法が使えると知らされたら心が乱れて魔力暴走の原因になってしまうかもしれない」
「多くの子は十歳になれば魔力量の増加も終わるからな。良いタイミングかもしれぬ」
「はい…。ですので、くれぐれもこちらで行う教育には気をつけてください。魔法で体罰を行うような人間など言語道断ですからね」
「心得ておる」
リーゼ、お前が大人になるまでは私が守るからな。
父として新たに決意を固めた。
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