第30話
ひと通り王太子妃教育の話を聞きましたがあまりヴァッサァ公爵家で受けていた淑女教育と変わらなさそうで安心した。
練度は違うでしょうけど。
ただ毎日は来なくても良いらしい。
前世のように朝から晩までの頑張る生活に戻るのかとヒヤヒヤしましたからね、ホッとしましたよ。
とりあえず頑張るしかないのでしょう。
「さて、リーゼちゃんには話したいことも話せたし…。ベルン!」
「はい」
「私達はまだ話があるからリーゼちゃんにお城の案内をしてあげなさい」
「分かりました」
うん?私の意思は考慮しないのですか?
相手は王族なので別に良いけど。
「行こうか、リーゼ」
「えぇ…」
ベルンハルトのエスコートを受けながら部屋を出ると扉の前にいた護衛がついてくる。
ただ離れた位置にいるので私達の会話は聞こえないだろう。
「ごめんね、リーゼ」
「え?」
「僕の両親が困らせたでしょ?」
「確かに心臓が口から飛び出そうになるくらい驚きましたが…。その、親しみやすそうにしてくださっていたので」
「両親のあれが演技だって分かってたの?」
流石に最初からは分からなかった。
ただ挨拶の時に抱き締められて違和感を覚えた。気を遣われているのはこちらだと。
どうして私みたいな小娘に気を遣うのか分からなかったけど何か事情があるのだろう。
「リーゼは特別な存在だから大切にしたいんだよ」
「特別?」
「魔法の事だよ」
三種類の魔法が使えるですか。
確かに珍しいし、王家が魔法を大切にしているのは知っているので納得だ。
「とりあえず今は父上と母上の事は忘れよう。来て、案内してあげる」
この国のツートップを忘れるってどうなのだろうか。
ただ彼らの息子が言っているので少しくらいは大丈夫でしょう。
私もお城の中を楽しみたいですからね。
「どこに行きたい?」
「初めて来たのでよく分からないのですが…」
「図書館とか気にならない?」
王城の図書館と聞くと立派なのでしょうね。
なかなか楽しそうだ。
「はは、その顔は行きたいんだね」
「はい…」
「じゃあ、行こうか。この国で一番大きな図書館だよ」
「はい!楽しみです!」
手を引いて歩いてくれるベルンハルトを後ろから見つめる。
ふと思ってしまった。
いつまでこんな風に私の手を引いて歩いてくれるのだろうか、と。
全く私らしくないですね。
「どうしたの?」
「いえ、図書館に行ったらどんな本を読もうかと思って」
「案内より本を読む方がいいの?」
「いえ案内優先でお願いします。ここに来るようになった時に読む本を決めておきたいのです」
「そっか。ゆっくり読む時間をあまりあげられないのは申し訳ないな」
「それは仕方ありません。気にしないでください」
ありがとう、と笑うベルンハルトに胸が痛む。
本当は未来の婚約破棄の事を考えていたんです。
適当な会話で誤魔化してしまってごめんなさい。
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