第26話
「で、ガゼボで出迎えた時に意外な反応をしていたから前世持ちって確信したのよ」
ユリアーナの話は意外なものだった。
幼少期に大怪我って展開はゲームではなかったはず。
もしかしたらあったのかもしれないがゲーム本編では触れられていない内容だ。
それにしてもディルクとの関係が気になりますね。
「早くディルクと元通りになれると良いわね」
「そうね。いつか前世の事を話せたらって思うわ」
今の彼に前世の事を話したところで理解出来るとは思えない。ユリアーナもそれが分かっているからこそ話せないでいるのだろう。
「私の話はここまでそっちの話を聞かせてよ」
「私?最近熱に魘されて記憶を取り戻したって事くらいしか話す事がないのだけど」
「トルデリーゼが悪役令嬢になるのはベルンハルトとアードリアンの二人のルートでしょ?」
「そうね」
何故二人のルートの悪役令嬢なのかさっぱり分からない。他の悪役令嬢はみんな一人なのに。
断罪確率が上がるのでやめて欲しいところだ。
「ベルンハルトとの関係はディルクから聞いて知ってるけど、アードリアンとは?仲良くしてる?」
「お兄様はうざいくらい絡んでくるわね」
「嫌われてはいないんだね」
「昔は嫌われていたけど今は好かれていると思うわ」
昔?と首を傾げられるので事情を説明する。
「私が持っている魔力は三種類、アードリアンは二種類。知って通り三種類の魔力を持つ者は少ないから特別な存在として扱われる。そのせいで嫌われてたの」
「劣等感を抱かれていたってわけね」
「その通り」
どうして今好かれているのかよく知らない。
きっかけがあったのかもしれないが幼い記憶だ。不明瞭なのは仕方ない。
「とりあえず今好かれているなら良いじゃない」
「そうね」
いつ嫌われるか分からないですけどね。
少なくとも学園に入学して主人公に会うまでは大丈夫だと思う。
「とりあえず破滅しないように頑張りましょう」
「そ、そうね」
疲れるので破滅回避をする予定はないのだけどユリアーナは気迫に押されて頷いた。
「じゃあ、そろそろ戻りましょうか。さっきからベルンハルトの嫉妬視線が凄いから」
「嫉妬?」
「え?気づいていないの?」
「ずっとこっちを見ている事には気がついていたわよ」
カップに齧り付きながらこちらを凝視していたのには気がついていたがあれは自分の婚約者が粗相をしないように見張る為だろう。
ユリアーナが呆れるような視線を送ってきた。
「リーゼ様ってしっかりしているように見えて意外と天然でしょ」
「え?」
「後かなり鈍感。ベルンハルトは色々と苦労するでしょうね」
「どういう意味ですか?」
「面白いから教えてあげない」
訳が分からない。
天然と言われるのも鈍感と言われるのも初めての事だ。首を傾げみるがユリアーナは楽しそうに笑うだけだった。
「おかえり、リーゼ」
「長々と話してしまってすみません」
優しく微笑むベルンハルトに頭を下げると隣から吹き出すような音が聞こえた気がする。
ユリアーナが頭を下げたまま笑っているのだ。
「いや、大丈夫だよ。ユリアーナ嬢とはどんな話を?」
「世間話です。ベルン様が気にするような内容ではありませんよ」
「そ、そっか…」
ユリアーナだけじゃなくフィーネまで軽く笑っていますね。優秀な侍女なのですぐに笑い止めましたけど。
「リーゼ様ってベルンの事が嫌いなのか?」
「普通です」
「普通って…」
苦笑いを浮かべるベルンハルトには申し訳ないのですが本音を言えば怖いですね。
流石にこの場で言う事じゃないですけど。
「はは。リーゼ様、面白いな」
「面白いのはユリアも同じですよ」
「リーゼ様程じゃないですよ」
悪役だからですかね、ユリアーナとは悪友になる未来しか浮かびませんでした。
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