第6話 2000/7


[fame]




「じゃあ、貴方にだけ、見せちゃいます。」


そういい 君は歌い始めた。

碧青の 深遠のよに澄みきった

すいこまれるよな 君のうたこえ


こんな、少女が

いたいけな

まだあどけない15の少女

演ずることを 命ずけられて


パフォーマンスに 生きがいを....。


恋人にすら、「演者」である。

そのことに

かなしさを感じるほどに 美しく...。



「もっと、普通で いいんだよ?」


「...え....」

「おもしろく、なかったですか...。」



「いや、素晴らしいんだけど、だけどね..」


「?」


僕は、観客じゃ....。

君の、素顔で、いいんだよ。

その、ままで..。





[作:shoo 2000/1]


---------------------[長文のコーナー]------------------------------------



[convenience・ story]



軽やかな2ストロークの排気音。

あのコがまってる、と思うと、スロットルも軽やかに回る。


コンビニのバイトも、だいぶ慣れてきた。

まあ、バイトったって、あのコがお目当て、なんだケド^^;


図書館通りの少しはずれ、葉桜並木が美しく。

ちょいと前まで、pinkの花が、咲いていて、

店番しながら、落ちる花びら、数えてた。



暗い夜道にぼおっと浮かぶ、ウインドウのあかり。

赤い看板、緑のマーク。

黄色い数字がアクセント。


僕らの店に、ご到着。

メット抱えて、硝子戸を押す。



「いらっしゃいま..あ!」

「おはよう!」




君は、ひまわりいろの制服で微笑む。

いつもの元気。

日向の匂いのするような、活動的で、無造作な髪。



「さ、今日もがんばろう!」


どことなく、お母さんっぽい、口調。



....たぶん、いいお母さんになるんだろうな....。





「いらっしゃいませぇ!」




でも、君との距離は、2メートル。

それ以上でも、以下でもない....。






...もう、いつも遅れてくるのね...。でも、ちょっと、頑張ってるわね。


もうちょっと、根性だせばいい感じなんだけど....。








「あ、いらっしゃいませぇ!」


コンビニエント。図書館帰りの学生で、この時間はちょっと混む。と...。

ひとり、スポーツバックを肩から掛けた少年が、レジの様子を伺って。


.....。


隅の方で、静かにバックのファスナーを....。

防犯カメラに映っている。

彼女、ゆっくり近づき、「あのぉ....。」

「..え!....あ、あの....。」


「お客様..なにか、おさがしでしょうか?」

「.....あ、あの....。」


「バッグの開け閉めは、...その..店内では.....。」

「......。」


「!これ!読んでください!ラヴ・レターです!。」


「★☆!!;;;;;.....。」



「あ、ごめん、おそくなって?...あ.れ..。」


僕は、バック・ヤードから制服に着替えて、店に出てきた。



僕の目の前の出来事。


どこかのオトコが、彼女に....。



....手紙、渡してた....。


「あ、ご、ごめんっ!。」






どうしよう。あんなことって....。


それから、なんだか。気まずくて。彼女の顔、見れなかった。




バイトの時間は、終わり。僕は、スクーターに乗って、家に帰る。

彼女の視線、感じたような....気のせいかな?

セルをまわして、勢いよくスタートした。




ヘルメットの中を、夜の雰囲気が流れる。


....あんな..

....あんな、やつ...

....僕だって...ラヴ・レターくらい....


僕は、煮え切らない自分の不甲斐なさを悔いていた。






「あ...。」

「いっちゃったぁ....。」



彼女の視線の彼方。



テール・パイプから白煙を吐き、2ストロークのスクーターに乗る、“彼”。



「さっきのこと、気になってたのにな...。」




“彼”、どう思ってるのかナ....。


少女は、店先にまだ漂っている2ストロークの煙が

薄れているのをじっと見ていた...。






「よし!」....こうなったら..。



僕は、決めた!




U・ターン。


「こらぁ〜!」


急にUターンしたので、後ろを走っていたタクシーの運転手

怒鳴っている。



「ごめんよーおじさん。一大事なんだよー。^^;。」



少年は、スクーターのスロットル・グリップを、めいっぱい引き絞った。




さっきのように、赤い看板が、夜霧にぼぉっと。


なんだか、とっても眩しく感じる..


スクーターを端っこに止め、僕は、メットを取った。

いつもと同じこと、なのに。

なんか、ちがうことしてるみたいだ。






「あら、どうしたの?忘れ物?」


彼女は、僕を見てそういう。


コンビニのレジの向こう。


「....ちょっと、来て。」


「....え!?」


「...いいから。」


「....!?あッ!。」



僕は、彼女の手を引き、裏口から店裏へと駆けた。


「ちょっと、どうしたの?...痛いよ。」


店の裏手。


ダンボールやら、ビールケースやらでごちゃごちゃと。



....ムード、無いな...でも、もう時間ないんだ!



僕は、ポケットの手を拳に握り締めた。






「俺、好きだ!!」


「!?」



「君のこと、好きだ!...他のやつに渡したくない!!!」




「!!....。」






君の瞳が。

きらきら、まぶしく、ひかってた。


星の、またたくかのように。

おおきくゆれて、僕を見つめた


星のかけらが ひとつぶこぼれ

君の ほっぺた ながれて おちて


元気いっぱい、いつもの君の

いまの笑顔が いちばん素敵....。



 




「あり...が...とう....。」




















[作:shoo 2000/7 ]


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