第23話 今日は大丈夫

 ラブホテルなんてものに入ったことはない。

 彼女いない歴=年齢だった俺にとっては当たり前にことだし、何より俺は高校生だ。


 そんな場所は大人になるまで、いや大人になっても無縁だと思っていたので入りたいと思ったことすらない。


 ドラマやアニメで中の様子を見たことはあるが、実際普通のホテルと何が違うんだろうなんて考えるくらいで、興味を持つことなかった。


 そして今から俺はラブホテルに入る。

 もちろん彼女と一緒に。


「ワクミン、楽しみだねラブホ」

「う、うん。緊張する」

「私も初めてだからドキドキー、でもワクミンとならワクワクミンだね」


 エリはテンションが上がっていた。

 俺は少し緊張で胃が痛かった。


 何かとても悪いことをしているような気分になりながらも、二人で受付に入った。


 古い外観のホテルで、受付の人もやる気がなさそうな感じだったのが幸いしあっさり中に入れた。


 そしてこれまた古いエレベーターで三階に上がり、もらった鍵の部屋まで行き大きな扉を開けて中に入った。


「わー、こんな感じなんだー。見て見てベッド広いよー」


 早速ベッドにダイブしたエリは、バンバンとベッドを叩いて「こっちこっち」と俺を呼ぶ。


 俺はそれにつられるようにエリの横に寝転がった。


「ねーねー、このベッド結構フカフカしてて気持ちいいね」

「うん、家のもこれくらい広かったらいいのに」

「エッチしやすいから?」

「そ、それだけじゃないけど……」


 エリはクスクス笑いながら俺を見つめてくる。

 そして俺が自然と彼女に引き込まれそうになった時、エリが「シャワー、浴びよ」と言って立ち上がった。


「ねぇねぇ、今日は一緒にお風呂入らない?」

「い、いいけど……恥ずかしいよ」

「それは女の子のセリフだよー?私だって恥ずかしいもん」


 エリはそう言いながらも、さっさと服を脱ぎはじめた。

 俺はそれをじっと見てしまっていたが、エリに半ば強制的に服を脱がされて二人で裸になった。

 もちろんタオルは巻いているものの、俺の下半身はテントを張っていた。


「あはは、ワクミンもう元気になってるよー」

「あ、明るいからさ……暗くしない?」

「ワクミンの方が女の子みたーい。でも、その方がムード出るかなぁ」


 部屋の明かりを落として、二人でシャワー室に入ると、エリが俺の背中を流してくれると言う。


「ワクミン、意外と背中大きいね。やっぱり男の子だー」

「なんか人に背中流してもらうのって新鮮だなぁ」


 エリはとても気持ちのいい力加減で俺の背中を擦る。

 そして次はエリの背中を俺が流すことになった。


「タオル、外すよ?」

「うん……背中、失礼します」

「もーやだー、言い方が変態さんになってるー」

「い、いやこんなの初めてだから……」

「うんうん、私の初めては全部ワクミンだね」

「うん……」


 エリと背中を流しあったあと、結局その場で俺たちはイチャイチャした。

 そしてしばらくキスを重ねているともう俺の我慢は限界を超えていた。


「エ、エリ……そろそろ」

「うん……ここでしちゃう?」

「い、いやでもゴムがないから」

「……今日は大丈夫だと思うんだ」

「え?」


 エリはそう言うと、俺にピッタリとくっついてムスコを触ってくる。



「ダメ、かな?」

「い、いやダメどころか……だけど」

「じゃあいいよ、このまま……きて」


 まぁこの後俺がどうなったのかは想像にお任せするが、最早サルだったとだけ表現しておく。


 あまりに異次元な気持ちよさに俺の思考回路は停止寸前というより壊れていた。


 何度も何度もエリと繋がる。

 そしてだんだんと体力がすり減っていくのに、俺の気力だけは増す一方だった。


 さっきのフカフカのベッドになど辿り着けず、シャワー室の中で俺は限界まで自分を出し切った。


「はぁ……はぁ……」

「ワクミン、疲れたんじゃない?」

「うん、もう、ダメ……」

「よしよし、頑張ったねワクミン」


 もうエリの裸を見てもしばらくは反応できないほどに盛った俺はもう一度シャワーを浴びてから着替えた。


 二人で服を着て、一度ベッドに腰掛けるとそのまま寝てしまいそうになる。


「ワクミン寝たらダメだよ、時間過ぎちゃう」 

「うん、出たら家に帰ろうよ。もうクタクタ……」


 このまま寝たい気持ちを抑えてホテルを出ると、エリが「気持ちよかったー」と大きな声をあげたので通りがかりの人に見られた。


「ワクミンと最近エッチしてばっかりだね」

「うん……」

「毎日したいとか考えたでしょー?」

「え、なんでわかるの?」

「顔に出てたよー、でも毎日だと飽きられたらダメだから明日はしませーん」

「えー」

「週一くらいではさせてあげるからそんな顔しないでよー」

「週一……」


 俺はちょっとショックだった。

 エリはもしかして気持ちよくなかったのか、なんて考えているとさせてくれないことよりも辛くなる。


 結局俺のひとりよがりだったんじゃないかなんて考えていくうちに段々と申し訳ない気持ちになってきた。


「あれー、そんなにできないの辛いー?」

「い、いやそれもあるけど……エリは、その、したくならないの?」

「私?すっごくしたいよー」

「え?」

「だってーワクミンとイチャイチャするのすっごく楽しいもん」

「そ、そうなの?」


 じゃあなんで毎日したらダメなの?って顔でエリを見ていると、彼女がクスクス笑いだす。


「だって、ワクミンとしたいって思いすぎて他の事できなくなるんだもん」


 そう言われて不安は吹き飛ぶ。まぁ単純な男だ俺は。

 

 結局エリは俺の手を帰る間もずっと握っていた。

 そして今日はどちらの部屋にもよらずお互い家に帰ることにした。


 俺は帰ってすぐに寝た。

 猛烈に眠くて仕方なかった。

 最近はエリとの時間が幸せすぎてなんか堕落している気がすると悲観しながらも、この疲れには勝てなかった。


 そして深夜に目が覚めて、焦って小説を書いていると小説サイトと連携しているSNSの方に珍しくDMが届いた。


「今度よかったら小説のことでお伺いしたいことがあるのですが、会えませんか?」


 メッセージの主はなんと甘井さんからだった。

 慌てて甘井さんのページを見たが、目立った書き込みもなく性別も年齢もわからない。

 

 だからどんな人なのか全くわからなくて正直不安ではあった。

 しかし連絡を返すくらいならと、返事を入れてみると偶然にも結構近い場所に住んでいることがわかった。


 そしてファンとして会ってみたい、と言われて俺はひどく興奮した。

 しかし見ず知らずの人と会う怖さもあり、一度返事を保留した。


 真っ先にエリに相談しようとメールを入れたが、もちろん深夜なので返事はない。

 俺は変な緊張をもったまま、もう一度眠りについた。


 

 


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